あ、はい
言われた通り突き当たりを右に曲がると裏口があった。
ドアノブに手を掛けようとした瞬間、扉が開いた。
「あ」
中から出てきたのは、黒いエプロンをつけた女性だった。
年齢は三十代前半といったところか。
長い金髪を後ろで結い上げている。
女性は俺の顔を見て目を丸くした。
「あら? もしかしてお客さん?」
もしかしてこの屋敷の厨房の人だろうか。
天然っぽいし多分俺を招待客か何かと勘違いしてるみたい。
「えっと……はい。そのつもりで来たんですけど」
「ごめんなさいね。ちょっと今手が離せなくて」
女性が申し訳なさそうに頭を下げると、俺は慌てて首を横に振った。
「いえ! 全然大丈夫です!」
「もう少しで終わると思うから、よかったら中で待っててくれるかしら」
何これ?どうしよう。
「え……えっと〜その〜」
迷っている俺の手を掴み部屋の中に入れさせられる。
背中をグイグイ押されて部屋の中に入ると扉を閉められる。
ドタドタと足音が近づいて来るのが聞こえる。
きっとさっきのSP達だろう。
俺は事が過ぎ去ることを願うように部屋の奥へと進んだ。
少し経つと先程の天然っぽい人が入って来る。
「私は一度厨房の方へ行きます、お客様は自由にしてくださって構いませんよ」
「あ、はい」
そう言って部屋の奥の黒いカーテンの裂け目の中へと入っていった。
「ユンの事頼みました」
何かポツリと呟く声が聞こえた気がする。
いや、今はそれどころじゃないか。
理由は分からないがユンが遺書を書いていたんだ。
きっと何か大きい悩みがある。
会って話をしなくては!
入って来た扉を再び開け裏口から外に出る。
そこには倉庫のような建物があった。
この建物の中にユンがいる。




