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VRMMOが日常となった世界で青春物語  作者: 金 銀太
第二章:天まで届く世界の樹
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1話:男同士のケジメ

「というわけで俊よ、ゲーム部と盟友団の同盟の為、力を貸してくれんか?」


 次の日の放課後。帰りのホームルームでザワつく教室で総司は前の席に座る男子生徒に話しかけていた。

 細顔で健康的に焼けた肌を持つその男――中田俊は総司の話を聞くと目を瞑り静かに頷く。


「……言いたいことは分かった」


 俊は呟くようにそう言う。総司は話の進展を期待し思わず口元が緩むが、俊の次の言葉はその期待に反するものだった。


「だが、答えはNOだ!!! 力を貸す気なんてないね!!!」


 目を見開きそう言う俊に総司は顔を歪める。


「おいおい、俺達親友だろ? 協力してくれたっていいんじゃねーか?」


 俊は手で顔を押さえる。


「かぁ~これだから総司さんは! こういう時には親友扱い! 本当都合が良い男ね!」


(何故かオカマ語で)そう言うと俊はプイッと顔を逸らした。


「……? なんか俺、お前にしたっけ」


 俊の塩対応に総司は何が何だかと分からず。頭に?マークを浮かべていると業を煮やしたのか俊が再び顔を合わせる。


「最近のお前は付き合いが悪いんだよ!!! 昼飯も『部室で食うぅ~』って言っていなくなることが多くなったし、放課後もすぐ部室行っちゃうし!!! 最後にお前と何かしたのいつだ!? ほら言ってみろ!?」

「……」


 責め立てるように言う俊を見て、総司は察する。


 この男、拗ねていた。確かに最近、俊と何かやった記憶が無かった。


 合点がいった総司を見て俊は言う。


「私はそんな軽い男じゃ無いわ! ほら! 分かったらとっととゲーム部なりなんなり、何処へでも行っちゃいなさい!」


 俊はまたしてもオカマ語で言い切るなり、顔を逸らし、ツーンとした態度で腕を組んだ。

総司は「ふう~」と息を吐き、パチンと指を鳴らす。


 すると何処からともなく楓がスッと現れ、俊に言った。


「ゲーム部と盟友団が一緒にやれたらいいと思わない? 中田君?」

「ちょ、ちょっと……井口さん……」


 途端に表情に余裕が無くなる俊。悪いな、こうなる事も想定して事前に楓さんと打ち合わせはしてあるんだ。


「どうする? 俊?」


 追い打ちをかけるように尋ねる総司に俊は顔を歪める。


「て、てめぇ……汚ねぇぞ……総司!」

「フッ……汚いは褒め言葉だ……」


 不敵に笑い、返す総司に、俊は顔をますます歪める。そしてそんな彼に対して更なる追撃が襲いかかる。


「私は”俊”君と一緒にやれたらいいな?」


 俊の耳元で、楓はゆっくりと囁く。その甘い言葉に俊は体を震わせ、その理性は崩壊寸前となっていたが――


「ぐ、ぐぐぐ……そ、そうだ!!! 総司俺とバトルしろ!!! もしお前が勝ったら俺のギルマスのところまで案内してやる!!!」


 煩悩を振り切るように首を振り。俊は総司にESGを突きつける。総司は得意げに笑う。


「いいのかそんなこと言っちゃって? 俺勝っちゃうぞ?」

「うるせぇ!!! クラス戦最下位のお前に、クラスで上から2番目のレベルを持つ俺が負けるわけねぇだろ!!!」


 高々と宣言する俊に総司はやや呆れ笑いを浮かべ、返す。 


「あのなぁ俊。皆優しいからお前に付き合ってやってるんであって、勝とうと思ったら俺でも楽勝で勝てちまうんだぜ?」


 総司は俊のアバターを思い出しながらそう言った。その言葉を聞くとぷるぷると震え、拳を握り言う。


「その言葉後悔させてやるぜ!!!」


 俊はESGをマッハの速度で取り付けスマホのアレサ用アプリを起動する。総司も「しょーがねーなー」と言いながらESGを身につけた。


 総司がESGを取り付けた事を確認すると俊は楓の方を向く。


「井口さん……一つだけ言わせて欲しい……俺は君と一緒にやれるなら例え、世界を敵に回しても構わない……だけどこれはケジメなんだ……俺と総司の男同士の――」

「はいはい、サッサッと始めるぞ」

「おい! 総司テメェ――」


 俊のスマホの画面を強引にタッチし、対戦を始める2人。総司の意識が途切れる最後の瞬間に見たのは頭に大量の?マークを浮かべた楓の表情だった。



 ※



 落ちていった意識は引き上げられる感覚と共に再び覚醒する。総司はつい先ほどまでいた教室とは全く異なる状況を感じ取っていた。

 まずは音である、響き渡るクラクションの音と、それに付随する形で多くの自動車が走り抜ける音が地面から湧き上がっているかのようにように耳に入る。

 次は匂いだ、大量の排気ガスとむせたコンクリートのにおい、それが鼻をついた。


 総司は目を開けるまでも無く、今自分のいるステージを把握する。


「摩天楼ステージか……」


 総司は目を開け、呟くと周りを見回した。総司が今いるのは建設途中の高いビルの屋上のようで、回りにはいくつかのむき出しとなった鉄筋とワイヤーが垂れ下がったクレーンの姿が目に入る。周囲にはそのビルを囲むように多くの黒々とした高層ビルが建ち並び、窓からは青白い光が漏れ、それ自体が電灯のように周りを強烈に照らし、ビルの隙間からわずかに見える地上では、多くの人型NPCが歩く姿が見え、自動車がせわしなく行き来きし、町そのものが一つの生き物のように脈打っている。

 目を焼くような光から逃げるように空を見上げる、そこには果てしない漆黒の闇が広がっていた。


 間違いない、この太陽を地上に落ろしたかのようなこのステージは正しく総司があまり好きでは無いステージの一つ”摩天楼ステージ”だった。


「摩天楼ステージじゃん! 俺ここ好きなんだよな~!」


 そんな総司とは正反対の感想を発する声が聞こえた。総司は準備運動をしながらそれに答える。


「そうかぁ? ここあんまり好きじゃねーんだよな……なんか窮屈だし」

「ヒーローにとって、摩天楼っていうのはホームグラウンドなんだよ!」

「あっそ」


 適当に準備運動を終えた総司のアバター<ルーラー>はようやく声のした方を向き、そして言った。


「このご時世に、自分のアバターに自分の名前……、ネットリテラシー無さすぎじゃね?」


 やや呆れつつ言う総司の視線の先には、中田俊のアバター<中田俊>が立っていた。


 そのアバター<中田俊>の見た目は本当に全く、現実世界の俊と変わらない姿だった。細身な体に細顔、服装すら学校の制服そのままだった。ただ唯一違うのは手に青白い宝石が埋め込まれたグローブを付けていた事だけだった。

 現実世界まんまなアバターを俊は気にするどころか誇るように言う。


「フッ……この姿は所詮仮初め、ヒーローは真の姿を隠すものだ」

「そう……」


 相手にするのもかったるいので適当に答え、総司は自身の画面右上に表示される、アバターの体力を示す緑色のゲージ”ライフゲージ”と各種スキル使用時に消費される赤色のゲージ”スキルゲージ”に目をやり、表記揺れが無いか確認するとその後、自身の装備を点検するため視線を自分の体に移す。


 青い布地で作られた服に、鉄の胸当て、茶色のパンツとブーツ。左腰には何の装飾も無い鉄剣が付き、右腰にはこれまたシンプルなリボルバーのホルスターと、それにくっつく形で小さな弾薬ポーチが着いている。

 清宮総司のアバター〈ルーラー〉は正に初期装備の初心者といった形のアバターだった。


「んじゃ、サッサとやらせてもらうぞ」


 <ルーラー>は右手で剣を抜き、左手でリボルバーを抜いて、構え、攻撃態勢に移る。しかし俊はそれを見ると静かに総司を手で制し、そして言った。


「やめてくれ総司、その攻撃は俺に効く」


「……」


「やめてくれ」


 冷静に命乞いをする俊に総司は脱力した。


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