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VRMMOが日常となった世界で青春物語  作者: 金 銀太
VRMMOが日常となった世界で大切な仲間が出来るまで
20/50

19話:込める暗雲

 放課後が始まりさほど時間は経っていなかったが職員室は人でごった返していた。


 質問があるのか教科書を開き先生に何かを聞いている男子生徒。何かの書類を届ける必要があるのか山積みになった書類を抱えている男女2人組。会議の打ち合わせでもしているのかせわしなく話し合う先生達。


 職員室に入った総司と絵里先輩は人の中をかき分け教員のいる机を目指す。


「岡田先生の机ってどこでしたっけ?」

「あそこ!」


 ようやく体温も下がってきた総司が絵里先輩に聞くと彼女は精一杯背伸びしながら職員室の一角を指す。それを追うとノートで自分を仰ぐTシャツ姿の中年男性の姿が見えた――岡田先生だ。

 手前にいる先生に岡田のいる机まで行く許可を得て、その席に向かった。


「岡田先生!」


 絵里先輩が声を掛けると岡田は急いでノートを置き、こちらに振り返る。


「おう恵美……と清宮か? どうした?」


 何のようか察しがついていない岡田に絵里先輩は言葉を続けた。


「部員集まったので入部届を出しに来ました! これです!」


 彼女はゲーム部各員の入部届を手渡す。岡田は一瞬眉をひそめそれを受け取った。


「本当に集まったのか……」

「はい! 清宮君もその1人です!」


 バッと手をかざされる総司。「どうも」と小さく呟き会釈する。岡田は「そうか」と小さく答えペラペラとめくりながら入部届を見る、最初は軽く、次第に何かを指摘す為なのか凝視しだした。

 ただの確認事項にしてはその間は長く、絵里先輩は不安になってきたのか伺うような顔で彼に尋ねる。


「もしかして何かダメな所とかありましたか……?」


 その不安気な声色に我に返ったかのように岡田は否定する。


「いや……問題ない。……問題ないのだが少し待て」


 岡田はそう言うと入部届を見るのを辞め、口に手をあて考えだした。続く沈黙、その時間に比例するように絵里先輩の表情は落ち着きのないものになっていった。


 考えが纏まったのか、岡田は手を離し、姿勢を正しくし、絵里先輩を見据えた。


「あの……大丈夫ですよね?」


 絵里先輩が耐え切れず先に聞くと岡田は答えた。


「ああ、元々そういう約束だからな、ただ悪いんだがもう一つ頼みを聞いてくれないか?」

「……頼み?」

「そうだ、だがそれを説明する前にこれを見て欲しい」


 岡田は机の引き出しの中から書類の束を取り出し、絵里先輩に手渡した。彼女はそれをペ

 ラペラとめくる。総司も後ろからそれを覗き込んだ。


 (……部活動申請書?)


 その紙の束は自身の部活を学校に認めてもらう為の物だった。十数枚はあるであろうそれはメンバーも部の名前もバラバラだったがある一つの共通点があった。


 (全部アレサの部活動だな……)


 それは全てアレサに関連する部活動だった。絵里先輩もそれは理解しているようで岡田に問いかける。


「その、これがどうかしたんですか?」


 岡田は彼女の問いかけに「うむ」と頷いて説明しだした。


「知っての通りだがわが校はでは基本的に一定以上の人数がいれば部活動も認めるし、活動内容も制限はしない。アレサのサーバーが置かれたのも生徒からの要望が強かったからだしな。そして教員も必要以上には生徒の部活動に関与しないし、部員の出入りも部長を通じれば基本的に自由だ」


 岡田の口調はまるで公的な物を説明するように事務的な物だった。絵里先輩はそれに「はい」と頷き先を促す。


「だが、それは生徒の自主性や責任感の育成、多様な価値観を受け入れる下地を作るという名目で導入された制度なんだよ。だが現状は想定された物と異なる。申請される部活動はアレサに関連する物ばかり活動内容もほぼ同じときている……いくら自主性を重んじると言っても、これは流石に看過出来ないと、この学校でも問題になっているんだ。よって本校ではこれ以上アレサに関する部活動を承認しない方向で話が決まっている」


「そうなんですか……」


 絵里先輩はイマイチこの話にピンときてないようだった。岡田もそれは想定の範囲内らしく言葉を続ける。


「問題はここからだ。つまりだ、今見せた書類は全て承認されていないということだ。そして今お前たちに説明した理由も加えて説明してある。だが、承認されなかった生徒は決まってある理由を付けて再び申請書類を出してくる……それが何か分かるか?」


「……?」


 絵里先輩は答えが見つからないようで押し黙っていたが、総司は岡田の言わんとしている事は直ぐに理解が出来た。


「ゲーム部の事ですね」

「その通りだ」


 2人の受け答えを見て絵里先輩は困惑した表情を浮かべ総司をみる。総司は彼女を一瞥し説明を兼ねて言葉を続けた。


「部員も少なく、校内でも弱小なゲーム部が部活動として認定されて、自分たちが認定されないのはおかしい……。理由はこんなところですか?」

「察しがいいな」


 頷く岡田。総司はまあ……だろうなと思った。このタイミングで出す話題にゲーム部が関係しない訳が無い。ともすれば申請理由には必ずゲーム部の事が書かれている筈だ。


 それを前提に考えれば校内のギルドランクで13位中最下位の13位、挙句人数はギリギリの4人のゲーム部が部活動として認められ、それよりも規模も実力もあるのに認められない同好会がそれを不満に思い、申請理由に挙げてくるのは容易に推理出来た。


 理由を理解した絵里先輩は唇を震わし、みるみる内にその表情は青ざめたものに変わっていく。きっとゲームがそう思われているとは考えていなかったのだろう。


 そんな彼女を見てどう思ったのか岡田は急いで話に戻る。


「そこでさっき言った頼みの話が出てくる」


 ”頼み”その言葉を聞いた総司はそれを聞き逃さないよう無言で岡田を見つめた。岡田はチラリと総司を見た後、うなだれる絵里先輩に問いかける。


「ゲーム部には校内で6番目の位置にいる同好会と合併して欲しいんだ」

「合併?」


 思わぬ言葉に絵里先輩よりも先に総司が反応する。岡田は淡々と答える。


「そうだ、今後はこの学校でアレサ関連の部活動は上から6番目までしか認めない事にしたい。その為の処置だ」


 岡田の言いたいことは理解できた。要はギルドランク6位までを部活動として認めるという方針にしたいのだろう、総司は新たに浮かんだ疑問を口にする。


「……その6番目の同好会と話はついてるんでか?」

「それを含めての頼みだ」

「……」


 (適当な事を……)


 総司は内心で舌打ちしながら岡田を見た。


 きっとこの人はゲーム部が部員を集められるとは考えてはいなかったのだろう。あまりにも取ってつけたような話に辟易する。


「異なるグループとは言え同じ内容で活動しているんだ。話もつけ易いだろう、頼めるか恵美?」


 岡田は”今まで話していた総司”では無く絵里先輩を見た。彼女は困惑するように目を伏せる。


「恵美?」


 重ねる様に尋ねる岡田。その言葉は落ち着いたようなものだったが、総司にとっては酷く威圧的な物に見えた。絵里先輩はそれに耐えきれなくなったのか顔を伏せた状態で、


「……分かりました」


 と呟いた。岡田は「納得してくれたか」と頷き言う。


「すまないな後出しするような話になってしまって」

「いえ……」


 絵里先輩はそれに反して釈然としない様子だったが、余程ショックだったのだろう反論できる気力が無いのか力なく会釈する。


「……では失礼します」


 総司もそれに続き適当に会釈した後、席を離れる2人。岡田はその背に”まるで今思い出した”かのように一言付け加える。


「今回の話は4月末の職員会議で報告するつもりだからそれまでに頼むな」


 岡田の言葉に振り向いた絵里先輩は消沈した表情で頷いた。総司はそんな彼女を見た後、岡田を見る。


 (卑怯な人だ……)


 総司はそう思った。

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