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世界の終わりは夜から始まる  作者: leemero


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消えた幼馴染

初めまして。

『夜の向こう側』を読んでいただきありがとうございます。

この物語は、ある日突然「存在ごと消えてしまった幼馴染」を追う少年の物語です。

少しずつ広がる謎を楽しんでいただければ嬉しいです。

六月二十七日。

梅雨の湿った風が教室の窓から吹き込んでくる。

六時間目。

数学。

神崎悠真は頬杖をつきながら窓の外を眺めていた。

先生の声は子守唄のように遠い。

グラウンドではサッカー部が走っている。

平和な放課後だった。

「神崎ー」

後ろからシャーペンで背中を突かれる。

振り返る。

朝霧美咲がニヤニヤしていた。

「なに」

「今週の日曜日暇?」

「急だな」

「いいから」

「たぶん暇」

「よし」

美咲は満足そうに頷いた。

「じゃあ付き合って」

「どこに」

「秘密」

「怪しいな」

「怪しくないですー」

そう言って笑う。

昔から変わらない笑顔だった。

家が隣同士。

保育園から高校まで一緒。

もはや家族みたいな存在だ。

恋愛感情とかそういうのはよく分からない。

ただ。

明日も隣にいるのが当たり前だった。

放課後。

校門を出る。

夕焼けが町を赤く染めている。

「じゃあね」

美咲が手を振る。

「また明日」

悠真も軽く手を上げる。

「反応薄くない?」

「毎日会ってるし」

「ひどっ」

美咲は笑う。

そして住宅街の角を曲がって消えた。

悠真はその後ろ姿を何となく見送った。

それが最後になるとも知らずに。

その夜。

スマートフォンの着信音で目を覚ました。

時刻は十一時四十分。

画面には朝霧美咲の名前。

こんな時間に電話してくることは珍しい。

「もしもし」

『悠真?』

声がおかしい。

震えている。

眠気が一気に吹き飛んだ。

「どうした」

『ねぇ……今どこ?』

「家だけど」

沈黙。

風の音。

ざぁ、と木々が揺れる音。

『変なのがいる』

「変なの?」

『うん』

「誰だよ」

『分からない』

美咲の声が小さくなる。

『ずっとこっち見てる』

悠真は立ち上がった。

冗談じゃない。

本気で怯えている。

「どこだ」

『八坂神社』

嫌な予感がした。

「そこで待ってろ」

『悠真』

「なんだ」

『もし私が――』

そこで通話が切れた。

嫌な汗が背中を流れる。

悠真は財布とスマホだけ掴んで家を飛び出した。

夜道を全力で走る。

神社までは五分。

石段を駆け上がる。

息を切らしながら境内へ飛び込んだ。

「美咲!」

返事はない。

誰もいない。

夜風だけが吹いている。

「おい!」

もう一度叫ぶ。

やはり返事はない。

電話を掛ける。

圏外。

繋がらない。

意味が分からない。

ここは町の中心だ。

圏外になる場所じゃない。

その時だった。

境内の奥。

森へ続く参道。

誰かが立っていた。

黒い人影。

顔は見えない。

ただ。

そいつは確かにこちらを見ていた。

「誰だ!」

叫ぶ。

その瞬間。

街灯が消えた。

世界が闇に沈む。

一秒。

二秒。

再び灯りが戻る。

だが。

人影は消えていた。

翌朝。

教室へ入った悠真は違和感を覚えた。

朝霧美咲の席。

そこだけ空いている。

「美咲休みか?」

近くの男子に聞く。

男子は首を傾げた。

「誰?」

「朝霧美咲」

「そんな奴いたっけ」

冗談だと思った。

だが。

周囲も同じ反応だった。

誰も知らない。

誰も覚えていない。

ホームルーム。

悠真は担任へ聞いた。

「先生。朝霧美咲は?」

担任は怪訝そうな顔をした。

「神崎」

「はい」

「うちのクラスにそんな生徒はいないぞ」

教室が静まり返る。

悠真は立ち尽くした。

意味が分からない。

昨日までいた。

確かにいた。

話した。

一緒に帰った。

電話もした。

昼休み。

スマホを取り出す。

連絡先。

トーク履歴。

写真。

動画。

全部探した。

何もない。

朝霧美咲の痕跡だけが綺麗に消えていた。

おかしい。

絶対におかしい。

その時。

窓の外に一人の女子生徒が立っていた。

長い黒髪。

見覚えのない制服姿。

だが。

なぜか彼女だけが悠真を見ていた。

まるで待っていたかのように。

昼休みが終わる頃。

悠真は校舎裏へ呼び出された。

そこにいたのは、その少女だった。

「誰だよ」

少女はしばらく黙っていた。

そして静かに口を開く。

「あなたは覚えているのね」

「……何を」

少女の瞳が揺れる。

「朝霧美咲を」

悠真の心臓が止まりそうになった。

「なんで、お前がその名前を知ってる」

少女は苦しそうに目を伏せる。

「時間がない」

「今夜、絶対に外へ出ないで」

「夜の向こう側を見てはいけない」

第一話を読んでいただきありがとうございました。

悠真の幼馴染・朝霧美咲はどこへ消えたのか。

そして最後に現れた少女は何者なのか。

次回から物語が少しずつ動き始めます。

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