第9話
ゴブリン村にいるソリューとザーノ以外の全ゴブリンたちを眷属にしてゴルドーたちとともに家へと戻ってきたときのこと。俺は真実を知りうなだれた。
「そんな……」
ガクッ
両手と両膝をついて後悔した。まさか眷属契約にそんなデメリットがあったなんてと。
「……まさか知らなかったとはな……」
「……それならば56体ものゴブリンたちとの眷属契約を結んだこと……頷けるわ……」
「……バカ……」
ゴルドーたちもうなだれる俺を見て呆れや馬鹿を見る目で俺を見る。しかしそれに対してなにも言えないのは自身でわかっている。
今回の件を説明するなら魔物の進化について改めて説明する必要がある。魔物の進化とは他者の魔石を破壊することでその中の魔素が己の中へと入ってくる。その行為を繰り返し己の魔石を魔素で満たすことができれば進化を果たす。そして魔物にはさらなる上の進化が存在しそれが魔王種と呼ばれる位になる。最強を目指す俺としては魔王種になることは必要不可欠なこと。そしてそれに進化するにも前回同様に己の魔石を他者の魔素で満たす必要がある。進化したことで大きくなった魔石の中を魔素で満たすことは容易にできることではなくさらに進化した魔物は魔王種を目指す魔物から狙われやすくなるため困難な道のりらしい。
これまでが魔物の進化について。そしてここからが眷属契約についての話。眷属契約の魂の契約はそれを結んだ相手に対して自身が破壊した魔素の一部が流れることになるらしい。その代わりとして眷属となったものは魔王種への進化は不可能となるらしいがそんなことはどうでもいい。問題は魔素の一部が流れるという言葉。
「(つまり……より多くの魔物と眷属契約を結べば仮に100ある魔素が90→80→70→60という風にどんどんと少なくなっていく……それは魔石を魔素で満たす必要がある魔王種への進化に致命的な欠陥となる……)」
ただでさえゴブリンの時の魔石よりも必要な魔素が多くなっているにもかかわらず得られる魔素自体も微々たるものになってしまったとなっては、もはや魔王種への進化は茨の道どころか先のない橋のようなもの。
そうしてうなだれ後悔していた俺に対してエリーが土下座をしだした。
ドサッ
「申し訳ありません!私が中途半端にしか説明をしなかったせいでこのような事態に!まことに申し訳ありません!」
エリーは今回の眷属契約の件を己の失態と思っているようで強い後悔の念が伝わってくる。その勢いは世が世なら切腹でもしそうなほどに。
「エリー。あなたのせいではないわ。そもそもが魔物であればそのようなことは自然と理解することだし魂の契約という言葉を軽く考えたユウジが悪いのよ」
「……」コクコク
ソリューとザーノから辛辣な言葉が届く。それでもエリーは謝罪の姿勢を変えない。よほどに強い後悔を抱いているらしい。このままではエリーがかわいそうなので俺は普通に座りなおして説得する。
「エリー。顔を上げてくれ。ソリューが正しい……これは俺の責任でエリーは何も悪くないよ」
「ですがっ!?」
顔を上げたエリーの目からは涙が流れており悲痛な表情をしていた。
「起こったことはしょうがないしなにもそこまで思いつめなくてもいいだろう?ほらこっちにおいで」
そう言って俺はエリーを抱き上げて胡坐をかく俺の足の間に座らせる。ホブゴブリンとなりゴブリン時代よりも身長が高くなったせいかエリーが子供に見えてくる。
「ゆっ!?ユウジ様!?こ!?これは!?」
「俺はもう大丈夫だから。エリーはそこまで考えこまなくてもいいんだよ」
つい頭をなでてしまう。するとそれまでのエリーとは違って落ち着きを見せ始めた。なぜか顔を下げその表情は後ろからは見えないが。ソリューがニヤけているのが気になるが。
「まあ悪いことばかりじゃねえ。これでユウジの進化は遠のいたがいまだにゴブリンのままの奴らが進化をすればこの村もより強くなるからな。村人の安全を考えりゃあ最適だ」
「だな。それに魔王種への進化が不可能になったわけじゃない。より多くの魔物を倒していけばいずれは進化をするはずだし。俺はあきらめたわけじゃない」
「……ユウジ様……」
エリーが俺を見上げてくる。思わず頭をなでる。すると顔を赤らめて再び顔を伏せる。頭をなでられたことが恥ずかしかったのか。
「ってことはこれからユウジは狩りをメインにしていくってことか」
「ああそのつもりだ。俺が魔物を多く倒し村のゴブリンたちが進化をすればそれが村の発展につながることになるしな」
どうせならここまでくれば魔物の国を建てたっていい。あいにくと知識チートや技術チートができるほどの頭脳は持ち合わせていないが進化した個体が頭脳を持っていないとは限らない。それに建国するのならほかにも多くの魔物の仲間が必要になるしその中に良い出会いがあるかもしれない。
なにはともあれまず俺がやるべきことは魔物を狩り続けることだ。
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