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TS転生した俺は魔法少女になれないらしい  作者: えとう えと
二章

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42/45

ごめんなさい!


 死神の子の強さは絶大なものだ。

 枷をはずされた彼女に並みの魔法少女が勝つなどと言う事はありえない。

 故に「蛇」と「虎」は全壊した。


 そして、死神の子を今抑えているのは他ならぬ死神の子であるティナだった。


「つく相手を間違えたんじゃない?」

「誰に付こうが、貴方たちを私が抑えれば十分でしょう」

「チッ」


 キイナは舌打ちをする。

 両者は均衡している。

 獣同士が衝突しあい。魔力が横行するもお互いに亜門を開いていることで無効化されている。

 決め手に欠ける状況。

 だが、ヒナリは他の秘密混成部隊を殲滅したことにより、戦況は二対一になりそうだった。


「さっさと片づけて、探し行こうよ」


 ヒナリはそう言い身体を伸ばす。相手をしていた魔法少女たちは変身こそ解けているものの意識は失ってない。

 それでも、脅威としてみていないのかすでに視線を逸らしていた。

 そしてそんなか、死神の子の二対一の交戦が始まろうとする雰囲気を割くようにして、一つの影がこの場に現れた。


「あ~。いたいた」


 魔法少女コフィン。

 比果比五子であることは死神の子たちにはすぐにわかった。


「なにこれ、黒焦げじゃん」


 焦土のように黒く壁が取り払われた一面を見て、そんな感想を漏らす彼女にキイナとヒナリはティナへの警戒もなしに駆け寄った。


「ごめんなさい!すぐに駆け付けられなくて!」

「無事でよかったです!」


 そんな言葉をかけつつ比五子に二人は声をかける。


「どう見てもトラブってたんだなって分かるし、いいよ」


 尋常ではない光景にそんな言葉を洩らしつつあたりを見渡す。

 そんな様子に手を出すこともなく、一瞬呆けていたように見えたティナが口を開いた。


「どうやって、出て来たんですか?」


 酷く信じられないと言った顔を浮かべるティナに比五子は何でもないかのようにして言葉を吐く。


「どうやってって。あのへんな布を切って、扉ぶっ壊して」

「……そうですか」


 納得は出来なかっただろう。

 だが、それでも結果を知れば頷くほかない。

 それに問題は。


「貴方の足止めに龍幻が向かったはずですが……」

「ん、ああ。来たよ。戦った」

「倒してきたと?」

「倒したと言うと少し違うけど」

「それでも、突破してきたと」

「まあね」


 有り得ない話だ。

 少なくともティナはそう考えていた。





 ◆

 

 龍幻との戦いを何とか切り抜けてどこから出ようかなんて考えていれば、建物全体が滅茶苦茶揺れた。

 何だろうとそちらに向かって見れば、通路が吹き抜けに見えるほどに黒く焦げて広がっていた。

 壁が取っ払われて、外壁の奥が見えたことでここが地下であると察する。

 とは言え、これだけの巨大な空間が出来たのは元から部屋があってその壁をすべてぶち抜いたようなものだったからだろう。


 で、そんな光景を目の当たりにしながらも、それより俺の興味を引いたのは死神の子の三人がいたことだった。

 ティナは一度会っているし俺のところまで来なかったと言うのもあるから、ここに居ても何ら疑問もないが他の二人も来ていたとは。

 そんなことを思いつつ、状況を察する。

 変身が解けた魔法少女?が幾人か、そして無傷の三人。

 そこまでくれば俺にも状況が分かった。

 多分、俺を出してくれると言う話で決着したはずだったのが、何かあってこじれたのだろう。

 それで、交戦せざるを得なくなった。

 うん。鋭い推理。


 まあ、もしかしたら手続きに手間取っている間に俺が蹴破って出て来たからもめた可能性もある。

 そうだったら謝ろ。

 でも、いくら何でもこの規模の攻撃をするなんてイカれている。

 カゲと戦ったときは、工作のために魔法少女としての変身を解けなかったから本気を出せなかったらしいし、キイナに至っても、俺と戦ったとき本気でなかった言えば本気ではなかった。

 彼女は、冷静でいられなくなっても出力を高めてのごり押しをしてこなかったしな。そしたら普通に負けてそうだし。


 だが、ここでは彼女らを縛るものはない。

 敵陣で、しかも、地下。

 力の隠蔽の必要がないのだろう。

 俺が予想した通り、委員会の施設でもなさそうだし。


 と、思ったが、何処であろうと施設ぶっ壊すのはおかしいよね。

 え?お前も、ドアぶっ壊しただろって?あれは不測の事態だったし……。


 まあ、とにかく。


「帰ろうか」


 正確には逃げようか、かもしれんが。

 そんな言葉に三人は首を傾げるようにして見せる。


「か、帰るって」

「いや、もうここに居る必要ないし」


 ヒナリの声にそう返答する。

 まあ、散らかしてしまったと言う負い目もあるだろう。

 だが、やってしまったことは仕方ない。見た感じ人は死んでいない。

 まあ、誠心誠意謝った方が良いかもしれんが。

 面倒だが……仕方ない。


「一つだけ、ここの責任者のところに行こう」

「責任者、ですか?」

「そうそう。この騒動について話を付けるべき、そうだろう?」


 謝るのは好きではないが、ごめんなさいくらい言ってもいいだろう。

 きっと死神の子の三人もちょっとはしゃぎ過ぎたのだろう。

 小さいころからインベーダーの呪縛に苦しめられていてやっと解放されてついおもらししちゃった。みたいな。

 ろくに発散することも出来なかっただろうしな。

 でも、これからは周りに迷惑をかけずにひっそり一人で処理してほしいものだ。それこそが大人のたしなみと言うやつだろう。多分。

 まあ、大人になるとはこういうことだ。

 そんなことを考えてみる。俺も大概ガキだが。


 と、責任者のところと言ってもどこの誰かも分からない。知ってそうな人に聞くか。


「えっと、そこの……」

「コフィン!貴様ァ!」


 変身が解けて足に怪我を負っている少女に話しかける。

 認識阻害が切れているせいで誰かわからんが俺を捕まえた一人だろうか。

 組織内で共有されている可能性は大いにあるので名前を知っているだけで、そうとも断言できんが。


 滅茶苦茶少女は睨んでくるが仕方ない。

 自分たちの建物を破壊した死神の子と親しそうに話していたら、とても許せないだろう。

 だが、責任者の居場所を聞かなければ仕方がない。


「お前が、死神の子を扇動して、何人もの人々を傷つけ──」

「後で聞くから、責任者の名前と場所を教えて」

「言うわけがないだろう!何が狙いだ。まさか、あの人を!」


 何?俺が手を出すって?

 謝ろうってのにそんなことしないよ。


「良いから、教えて。君はそこで見てればいい。終わればすべてが分かるから」

「貴様ぁ!」

「おっと」


 生身のくせにとびかかって来た少女を避ける。

 しかし、素直に口を割ってくれないとなるとどうするか。

 そんなことを考えているとき、不意にある者が目に映る。

 あれは……。

 インカムだろうか。恐らくそれは、上との通信に使用できるもだろう。

 しかし、魔法少女の持ち物だろうそれは解けて壊れている。

 同じものがないのかと見渡して。ティナが同様の物を付けているのを見た。

 そういや、ちゃんと話がついた段階なら連絡用に受け取っていてもおかしくないか。

 もめたのはその後だろうし。


「ティナ。それ貸して」

「……!?いや、まってください。私は──」

「聡いお前なら分かるだろう」


 ティナもバカじゃない。それを使えば責任者へと連絡が送れると。

 何か、魔法を練ろうとして戸惑っているところを俺はインカムを奪い取る。

 こういうのは時間が経つほど相手の印象は悪くなる。

 悪いが、先にことを片付けたい。


「聞こえているだろう。……魔法少女コフィンだ」


 カメラ越しだが、しないよりましだと思って設置されていた監視カメラに目を合わせる。

 淡くランプが光っているから機能していると思いたい。反対側は吹き飛んでるからちゃんと機能して言うのかは分からんが。


「謝罪をしたい。施設の破壊、魔法少女たちへの被害を出してしまったことだ。加えて、私自身もA級2位の魔法少女龍幻に傷をつけてしまった。……こちらとしても、これ以上そちらとことを荒立てたくない」


 こんな感じだろう。偉そうだが、正直必死に謝るのも下策だろう。

 魔法少女には魔法体があるとは言え下手したら死ぬようなやり取りをしているわけだ。ここで足元を見られたら碌なことにはならい。


「さて、帰るか。……三人とも行くぞ」

「ちょっと、待ってください!私は──」

「これ以上は無駄だ。分かるだろう」


 ティナは真面目なのだろう。インベーダー因子によって人類の敵ではあった過去はあるものの、彼女はしっかり謝罪をしたいらしい。

 

「私は敵対を──」

「敵対?最初からそんなこと分かっている」

「初めから……?」

「ああ、顔を合わせた時に」


 そりゃここの惨状を目に入れた瞬間に分かるに決まっているだろう。

 ティナたち死神の子と魔法少女が敵対していることなど。

 そんな状態で先の謝罪では意味がないと思ったのだろうが、今はこれ以外にない。面倒ごとになる前にこの場を離れるべきだ。







 ◆


 協力者に支給していた機器より音声モニタールーム届いていた。

 惨敗。魔法少女龍幻は継戦不可能だと判断。他の部隊は死神の子により殲滅。

 残るは協力者だけ。


 そんな中コフィンは言葉を紡ぐ。


『聞こえているだろう。……魔法少女コフィンだ』


 それは何かの宣告にも思えた。

 だが、飛び出したのは……。


『謝罪をしたい。施設の破壊、魔法少女たちへの被害を出してしまったことだ』

「謝罪……?」


 全く考えていなかった言葉だ。

 だが、次に続く言葉を聞いて、それは文面通りの意味ではないと気付く。


『加えて、私自身もA級2位の魔法少女龍幻に傷をつけてしまった』


 それはまるで自分の失態を語るような素振りだった。

 だが、それは違う。

 これは、自らの力の誇示だ。

 自分はA級2位を退けるほどの力があるのだと。

 内情は知っている。魔法を使えない龍幻との戦いであったことを。

 だが、それは、魔法を使えない状況に陥ってと言う話ではない。

 魔法は使えたがコフィンには聞かなかったのだ。

 だから、状況が違えばなどとそんなことすら考えることはできない。


 どのような局面においてもお互いに万全であっても、コフィンとの力関係は変わることはない。


 つまるところ、死神の子を引き込んだ彼女に対して今の戦力ではこちらが太刀打ちは出来ることは全くと言ってないということだ。

 そこで、コフィンは続けて言う。


『……こちらとしても、これ以上そちらとことを荒立てたくない』

「これ以上は手を出すな……そう言いたいんだろう」


 加覧は意図を読み取ってそう言った。

 そして、加覧にしてみてもそれに従うほかない。


 プロフェットより与えられた命令は失敗だとコフィンの声によって告げられたのだ。

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