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TS転生した俺は魔法少女になれないらしい  作者: えとう えと
二章

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32/45

うっかり!


「さっきのアレなに?」

「知らない。大方秘密裏に問題を処理する部隊でしょ」


 先ほどの襲撃を思い出してキイナは言った。

 魔法能力の組み合わせを考えれば連携を取ることが目的とした人選だろう。それを思えば人為的に選ばれたそれだと推測で来た。

 だが、彼女らが考えるべき問題はそこではない。


「何故、居場所がバレていたか」


 比果比五子との戦闘で派手に動いたのは確かだが、ヒナリとの戦闘はヒナリの管轄地区での出来事であり何より比五子が隠蔽したと聞いている。

 キイナとの戦闘は天坂地区内での戦闘である分尚更隠蔽のしやすさがあり、更に言えば人目につかない路地裏で行われたものだった。

 わかりやすく暴れているように見えて、隠蔽工作はしていた。

 何かが起こっていたと言う事が分かっても、死神の子には決して結びつかないような対処をしていたはずだ。


「今は、そんなことどうでもいいでしょ。問題は比五子ちゃんがどうなってるかってこと」

「それはそう。……でも、私たちの正体がバレることは比五子ちゃんに迷惑をかけることにつながる」


 ノータイムで同意しつつ、遅れて考えが及んだヒナリはそう返す。

 恐らく現在、委員会は内々で死神の子である三人を排除しようと動いている。

 何が原因でバレたかは知らないが、彼方が正体を掴んだ以上は排除以外の考えはないだろう。

 本来なら泳がせて、虚偽の情報を掴ませるなどのかく乱の手を取る可能性もあったが、如何せん死神の子の力は強大だ。

 泳がせて不意を取ることよりも、即刻の排除を決断したのだろう。


「しかし、死神の子を相手にしようとしてたったの三人しか頭数を揃えてないのは些か気になりますね」

「そう。そこなのよ」


 ティナの言葉にキイナは指を指す。

 これが一番の疑問だ。動きから考えればこちらの力をそれなりの脅威として認識しているはずなのに、いくら精鋭とは言えあの人数と言うのは疑問が残る。

 周囲の被害度外視でこちらが戦えば、手に負えないことくらい分かるだろう。


「多分だけど、あれが本隊じゃない……と言うより、斥候だった可能性はあるよね」


 ヒナリはそう予想する。

 そもそも、襲撃どころか戦闘を考えてあの場に居たわけではなかったのではないか。

 あくまで偵察の目的で隠れていたところをこちらに見つかりやむなく戦闘になった。


「なら、まだ来る可能性があるってことじゃん」

「と言うより、こっちが先に攻撃してるから、さっきのは完全な悪手かも」


 キイナの言葉にヒナリはそう言う。

 失敗を自覚し、冷や汗を流す。


「完全に敵対意思があると見なされましたね」


 ティナはとどめを刺すように言葉を吐いた。





 ◆


 「蛇」のメンバーは消耗はあるものの一人としてかけることなくあの場を脱していた。

 変身を解いた三人は息をつく。


「ギリギリだったね……」

「隊長が指示を出してくれていなければ危なかったです」


 口々にそう言って隊長である少女に目を向ける。

 当の本人は目立った感情を浮かべることなく、何かを考えている様子だった。

 変身を解いても白く透き通る髪をたらす彼女はわずかに反応する。

 「蛇」の二人の声ではなく、こちらに近づいて来る足音にだ。


「やあ、魔法少女零。派手に戦ったようだね」

「……何の用だ。魔法少女逆鳴(さかなり)

「随分とご挨拶だね。今回は我々「虎」も合同で任務にあたるんだ。それなのに偵察がバレて交戦に発展、しかも逃げ帰って来たとあっては任務に支障があるのではないかと心配になるのは当然だろう?」


 逆鳴と呼ばれた彼女は、そう零に言う。

 

「我々は協力者によってもたらされた死神の子の情報を有効に活用し、敵を排除しなければならない。失敗は許されない」


 一つトーンが落ちたように感じた逆鳴の声は零を睨んだ。

 ただ、対する零は特に怯む様子もなく続けた。


「だが、その協力者とやらも信用できるのか?確か、最初に得た情報では、死神の子を先導していると言う魔法少女コフィンの姿は無かったぞ。あの時間、あの場所に死神の子と共にいると言う話だっただろうが」

「それについては、コフィンが消息を絶ったと連絡が入ったはずだよ。コフィンは用心深く、素性を隠している。魔法少女間でのつながりはほぼない」


 魔法少女コフィンの素性は未だつかめていない。

 本来魔法少女の認識阻害と言う側面から実際の身分との証明は行われることはないが、特にコフィンは他の魔法少女との交流が少なく行動範囲もあいまいだ。

 

「作戦に当たって魔法少女朝桜の配信をいい大人が血眼になってみてるくらいだよ」


 魔法少女コフィンが唯一交流を持っている。そう表現しても良いほどの存在が魔法少女朝桜だった。

 彼女は、魔法少女コフィンを敬愛している様子を見せており、そして、恐らく一番彼女について多くの情報を持っている。

 そんな彼女の行う配信活動ではコフィンについて多くのことが語られる。配信を訪れたものが朝桜よりもコフィンについて詳しくなったと口をそろえて言うほどにだ。

 そんな現状であるせいで、コフィンについての一番の情報源は「魔法少女朝桜の配信」であると言うのが紛れもない事実だった。

 そしてそれでもなお、「コフィンが言い含めているのか、朝桜が徹底しているのか、彼女の好物と性格くらいしか情報はつかめてないけれどね」と続ける。


「まあ、どちらにしてお喋りはここまでにした方が良い」


 そう呟いて、顔をそむけた逆鳴が見た方角と同じ方へと零も目を向ける。

 両者が、いや、この場にいる者たちが目を向けた先からは一人の人影が現れた。


「いやいや。悪いね。集まってもらって」


 よろよろと頭を掻きながら現れたのは一人の男だった。

 しかし、抱く印象としてはうだつの上がらない線の細い男と言った程度、今この状況を第三者が見ても彼は少女たちの引率にするには頼りなく見えるだろう。

 だが、そんな印象とは裏腹に座り込んでいた少女たちも姿勢を正す。

 その様子が男をただものではないと言っていた。


「加覧部長。全員そろっています」

「ああ、ありがとう」


 逆鳴が先んじて言うと加覧と呼ばれた男はその場を見渡して礼を言った。

 この場にいる少女たちは六名秘密混成部隊「蛇」と「虎」のメンバーそれぞれ三人ずつが召集されていた。


「一応報告は聞いている。死神の子を偵察しに行って見つかってしまったらしいね」

「申し訳ありません」


 事実を確認するような加覧に対して零は頭を下げる。

 対して加覧は、気にした様子を見せることなく頭を上げさせた。


「まあ、この点については特に問題視していない。最悪の事態は「蛇」の構成員を減らされることだからね」


 死神の子は、強力なインベーダーだ。

 最悪壊滅させられていた可能性がゼロとは考えていなかった。


「それと、魔法少女コフィンについてだ。こちらでも情報を探っているが未だ進展なし。魔法少女の所属学校が割り出せれば話は早いが、僕らは正規の部署ではない。加えて、プロフェットと言う会長でも副会長でもないラインで独自に動いている。こちらの線からは少し無理があるだろうね」


 加覧はそう言葉を吐いた。

 

「だが、協力者から、コフィンについての有力な情報と作戦の提案があった。これより、「蛇」と「虎」には、こちらに沿って行動してもらいたい」


 「頼んだよ」と一言言うと少女たちは返事をした。





 ◆


 林間学校二日目。

 すっかり、連絡を忘れていたことを思い出したが、やはりスマホは手元にない。

 別に回収されたなんてことではなく、鞄に入れて宿泊施設内に置いてあると言うだけのことだが、すぐに取りに行くことは難しい。

 琴浦と死神の子の三人は流石に気付くだろうと思ってはいるものの、一個懸念もあるのだ。


 と言うのも、琴浦はともかく死神の子の三人は俺の学校を知らない。

 ヒナリと一緒に登校したことも記憶に新しいが、正直警戒していたのもあって教えていなかった。

 でも、一緒に行ったじゃんと思われるかもしれんが、ほら、だって、俺の制服あれだろ……。

 それに、学校の近くまで行っても校門にまでは達していないのだ。俺が学校に入るところすら見てないだろう。


 あと、死神の子を警戒していたと言うものあって、琴浦には絶対言うなと言ってあった。

 絶対喋りそうだからと思って、それはもう念入りに言い聞かせたのだ。聞かれてもとぼけろとか、自分からはその話題に触れるなとか。

 そんなわけで、彼女ら三人が俺の不在の理由に気付くことは不可能と言ってもいい。


 仮に俺の学校を特定したとしても、林間学校の情報を仕入れることは無理だろうと言うのも考えれば、もっと絶望的とも言えるか。

 と言うのも、もみじ曰くうちの学校、魔法少女が滅茶苦茶多いらしい。と言う事で、魔法少女が大移動してしまう林間学校などの情報は徹底して外部には伏せられるらしい。

 インベーダーに隙をつかれても敵わないからな。

 ちなみにどれくらいマジかと言うと、委員会側が要請したとしても委員長か副委員長の承認がないと開示されないのだとか。


 と言う事で、マジで忘れないようにしないといけない。


 うん。フラグだね。もちろん忘れた。

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