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不登校男子、半サキュバス♀転生-お人好し中学生キズナがネガティヴ女子高校生を救って溺愛されてく話-  作者: 東山ルイ
シーズン2 Stone Cold Crazy-息の続く限り動き回れ-

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043 ふたつにひとつでない

「へ?」


 ルーシはリラックスした態度で、葉巻をくわえる。対照的に、キズナはゴクリと唾液を飲み込む。傍から見ればただの美少女たちだが、このふたりには共通点があったのである。


「図星だろう?」

「そりゃ、そう」

「感情の波が弱いヤツだなぁ。かわいいヤツめ」


 ルーシはキズナの頭を、いや、ツノを撫でてくる。美容院で髪を洗ってもらっているときのような心地よさだと、惚けたことを思い浮かべる。

 されど、キズナの頭は破裂寸前だった。“セブン・スターズ”とかいう確実に強いであろう存在を倒す義務が生まれたら、銀髪の少女に本当の性別を暴かれた上に、その相手も元々は男性だったとのたまう。普段表情筋をまったく使わない、エコロジーなキズナも、これには怪訝な顔にならざるを得ない。


「……、ルーシ。いや、“さん”付けすべきなのかな?」

「どちらでも構わんが、呼び捨てのほうが見た目的には合っているな」

「じゃあルーシ、なんでぼくが男だって分かったの?」

「そりゃあ、こちらも元々は男だったしなぁ」


 可愛らしい笑みとともに、かわされた気もする。ルーシは続けた。


「どうだ? 少女になった感想は」

「別に、なにも思わないよ。男子だった頃から、おしっこは座ってしてたし」

「そういう話じゃないんだけどなぁ」ニタニタ笑ってくる。

「じゃあ、どういう話?」

「簡単だよ。肉体は魂の器にしか過ぎないのか、それとも魂は肉体に順応していくのか。オマエはどちらだと思う?」

「難しいこと訊くなぁ」

「そうかい? パーラの話訊く限り、オマエ転生してから結構経っているようだ。だったら、この質問への答えが出せるはずだが」

「じゃあ、逆に訊くよ?」

「なにを?」

「ルーシはパーラさんを騙してる自覚あるの?」

 キズナの切り返しに、「ああ、葉巻吸って良いかい?」と答え、返事をする前に火をつけた。


 りんごみたいな頬の少女が、漫画の悪党みたいな茶色いタバコをくわえる光景は、なんとも奇妙だ。もっとも、初めて会ったときから奇怪なものを感じていたが。しかも、「うん」と言う前に火をつけやがった。傲慢なのは間違いない。


「やはりこれに限るな。パーラは獣娘だからか、タバコ嫌いなんだよ」

「質問、答えてよ」語気を強めた。

「そんなに気になるかい?」

「パーラさんは大切な友だちだからね」

「じゃあ答えてやるよ。自覚はある。ただ、アイツは私の正体に薄々感づいている。なら、問題はないだろう?」


 こうも即答されてしまうと、キズナもそれ以上の追及ができない。それを分かっているかのように、ルーシは葉巻を灰皿に置く。


「で? オマエはどちらだ? 肉体と魂、選び取りたいのは?」

「……、ルーシ。世の中はふたつにひとつってわけじゃないよ」

「なんだ? いきなり」

「別に、女サキュバスと人間とのハーフに成り代わりたくてここへ来たわけじゃない、ってことさ。でも、現実的に男へ戻る方法もない。あるとしても、いまある問題を解決してからでないといけない。そうでしょ?」


 ルーシはキズナの肩を軽く叩き、満悦といった笑顔を見せてきた。

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