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四神 ―神格化の刻―  作者: 伏黒照(フシグロテル)


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第七話 10万㎡の迷宮 ~地底の檻~

その数時間後、再び舞台は地下壕の施設に戻る。

「先生、さっき別のブロックとか言ってましたけど、そんなにここって広いんですか?」

オサムが不安そうに尋ねる。

「そうだね。改めてこの施設の説明をしておこうか。」

香澄がこう答えたときに、2人の男性が入ってきた。

「来たか。高山くんは彼らとはまだ会っていなかったね。がっしりした背の高い彼が山本で、もう1人が藤原だ。君たち4人の救出をしてくれた人たちだ。」

「初めまして、高山くん。山本です。」

山本がにこやかに手を差し出す。そういう挨拶か、西洋式か?と思いつつ、自然にオサムも握手に応じる。とても大きい手だ、と思った。そういや、ミゾのやつ元気かな? ふと彼は級友のことを思い出した。

「本当に、本当に良かった。目が覚めたんだね。もう痛くはないかい?」

涙目で寄ってくる、プルプル震えてるこちらの男性 ── 藤原は、まあ良い人そうだな、という印象を受けつつ、良かった、良かった、と繰り返しオサムの肩を何度も撫でていた。

改めて彼らが加わり、話を香澄が続ける。

「身体測定前にも、ざっくりと施設の構造が5階層になってることや、ここが3階層だということは話したね。」

4人の反応は各々微妙に異なった。そうだっけ?と一瞬首を傾げる者、うんうんと頷く者……。

「軍事施設としてもともと造られていた地下壕を拡張して造り変えて、今この施設の床面積 ── 広さのことだが、広さは大体、甲子園球場3個分、いや2個分より少し大きいくらいかな。」

「出た!甲子園球場何個分!一番意味がわかんね〜。」

クニヨシが声を上げる。ほかの3人も、うんうん頷く。

「サンシャイン60ならわかるかな?」

藤原が割って入る。

「サンシャインなら、もし君たちが実際に行ったことがなくとも、60階の高層ビルで、ある程度広い、大きいって有名だし想像できるだろ? 

 あのビルの中の広さは、全部合わせると、大体19万㎡(正確には190,595㎡)、ここはその半分10万㎡(105,318㎡)だから、あのビルの半分の30階分が、この地中に埋まってるようなイメージと言えば、なんとなく広いってのがわかるだろ?」

「え?!すごくねえ?それ!」

4人とも藤原の説明には納得できたようだ。香澄も、なるほど、こうやって説明すると少年たちには響くのか、などと感心して自分も自然に聴く側に回る。山本も笑顔の少年たちと、先程までの涙と鼻水でクシャクシャだったはずの藤原が、打って変わって生き生きして説明する姿を、微笑ましく見ていた。

それから暫く続いた藤原の説明は、最初に香澄博士が彼らに聴かせた話以上に詳細にわたっていた。

この施設は3つの山を結ぶ坑道網であり、既存の地下壕を大幅に改修、拡張をすることで造られている。広さは先の説明にある通り、約10万㎡で、レベル5の深層部から地上の擬似施設(表向きには普通の研究施設)のレベル1までの5層構造である。戦時中の当時からの岸壁剥き出しの部分もあれば、新たに造られたコンクリートも混在している。

またここは地下水が豊富であり、水源には困ることがない。井戸で汲み上げ濾過したものを、施設内に供給している。

下水は専用縦坑タテコウなどに走らせている管を通してレベル5、つまり最深層に集水。沈殿層のあるピット内に集めた下水をポンプで地上に送っている。地上にはこの施設単独の下水処理施設があり、ここで処理された水を公共下水道へ接続して流している。幸いこの周辺には河川がある。集水ピットはその臭気対策が徹底されていて、活性炭吸着及び微生物脱臭装置があり、臭いが漏れない、と鼻息を荒くして藤原は自慢げに語る。

電源は、地上の下水処理施設と併設して発電施設が造られていて、専用ケーブルで地下施設に送電している。万一の停電に備えて下水処理施設にディーゼル発電機や無停電電源装置や蓄電池がいくつも設置されており、電気の供給が完全に途絶えることはない。発電のための燃料も地下貯槽、耐震タンクに4週間はもつ備蓄があるという。

下水プラントは、実験による廃液も一緒に処理できる特殊濾過システムで、さらに深層に設置されている巨大コンピュータシステムのコアの冷却水の排熱を、下水処理の消化層などに利用する熱交換をすることで、省エネ化を図っている……。と、この辺になるとクニヨシは完全に飽きてしまって半分寝ている。オサムとエダは身を乗り出して興味深く聞いているが、2人も時折顔をしかめている。カズキも大分ギブアップ気味だ。首を傾げながら「分かんねえ」と何度も小さく呟いている。

レベル2の管理エリアにも若干の発電機があり、常に最悪の事態に備えていること、表向きの地上のレベル1の擬似施設は機械音なども紛れるので、非常に適した造りであるということ……。

まるで自分の功績であるかのように悦に入っている藤原を、さすがにここまでと山本と香澄が止めることで一旦休憩となった。

「エダくん、全部わかった?」

「いや、下水管の『ファイ600』の『なんとかピーの口径なんちゃらかんちゃら』とか、全然意味が分かんなかった。」

「ああ〜、普通は200〜300ミリでどうとか、こうとかのとこ?」

「オサムちゃんは全部理解できた?」

「いや。たまに面白いと思ったけど、トイレの水圧が弱くなるとか、下水は水道みたいに普通ポンプ使わないから管が破裂しないとか。でも細かいとこは分からない言葉が多かった。サンシャインの例えだけは分かりやすかった、と思うけど。」

「2人でも分かんねえなら、俺らには無理だ。な、クニヨシ?」

「ごめん、途中から寝てた。」

「ごめんね!! そうだよね。分からなかったよね? もう一度わかりやすく説明し直すね。」

「いや、結構です!!!!!!」

4人の少年と2人の大人が一斉にハモっていた。

(第七話 終わり)

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