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四神 ―神格化の刻―  作者: 伏黒照(フシグロテル)


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第十話 交錯 〜それぞれの思惑〜

10人の生徒は、オサムたちのFクラスと呼ばれる香澄のチーム以外に振り分けられ、今までの5日間と異なった生活が始まった。

このことで、これまでの同じブロックに集められていたときと違い、それぞれが所属するブロックからメイン通路に出て、食堂エリアに行くことで食事を摂ることになった。食堂に行くことは、少年たちにとってはささやかな喜びであった。10人部屋に運ばれてきていた食事よりも上等に感じられた。また食堂での楽しみは、何よりほかのグループと交流できる機会でもある。

レベル4での身体能力の検査、あるいは能力開花に向けての訓練はつらい時間ではあるが、殆どが運動部所属の彼らには、部活のような感覚もあり、意外に馴染んでいた。レベル4では同一タイミングでテストを行っているときも、あまり他のグループとの接触をさせないような監視がされていた。

一度は暴れた佐久間も今はおとなしくして、与えられたプログラムに臨むようにしている。元々身体能力の高い彼には、体を動かせることがストレス発散に適していた。

今ちょうど10人は、同じ時間に食堂エリアに集まって、食事をしているところである。

佐久間は、別グループに分かれた同じ9組の吉村と鹿島と楽しげに話している。

「おう、シム、カジ、調子はどうよ?」

「まあまあ、ってとこだな。」吉村は控えめな答えだ。

「スゲー、蹴りとかムチャクチャ早えよ、今の俺。」鹿島はサッカー部らしくキックの威力を自慢している。

一方8組の生徒である7人も、タイミングがあったときは、同じテーブルで食事をするのが定例になっていた。柴崎が皆に向けて喋り出す。

「エンちゃんがさあ、ただでさえスゲエのに、なんかどんどん強くなってるよ。」

「シバケンもスゲーじゃん。走りじゃ追いつけねえよ。それよりオータ! オメー俺の背中を殴ってチカラ試すのやめろ。こいつ、俺をサンドバッグと勘違いしてんだよ。」

笑いながら、圓崎が皆に訴える。大田は淡々と返す。

「エンちゃんなら、平気っしょ? エンちゃんと同じグループになれば、みんな同じことするに決まってる。」

「しねえよ、そんなの! お前だけだ、オータ!」

笑いどよめく。

「コイツも同じだよ。」

そう半笑いで言うのは溝端であった。

「コウノがやたらと、俺使ってチカラ試すんだよ。」

「え? だってお前なら手でけえし、平気だろ?」

「手が大きいのはカンケーねえだろ?」

香野と溝端は何故か競い合って、しかもこういうときは、冗談かと思っていると、そのうち本気の喧嘩に発展することがある。これを察して圓崎が止めに入る。

「ああー、やめやめ! 2人ともいいから飯食え!」

こんな楽しげに見える7人で、ひときわ元気がないのが小前であった。

「マエコー元気ねえな、相変わらず。」

竹田が声をかける。沈んだ調子のまま小前が答える。

「ええ〜、だってよ……。」

言葉に詰まる小前の肩を、竹田が優しく2度叩く。竹田と小前は野球部である。そして吉村は野球部を仕切っており、小学校からのシガラミがある。吉村は本能的に自分より弱い者を嗅ぎ分け、自分の強さを主張するキライがある。

竹田も小前も正直、吉村のことは嫌いで関わり合いたくないが、野球部としての繋がりは断ち切れないため悩ましいところである。しかも今の小前は、四六時中彼と一緒にいなくてはならないことが、苦痛でならないのだ。

「多分薬のおかげとかで、今、体力測定とかの数字すげ〜上がって嬉しいよ、俺だってさ。でもぶっちゃけ、俺たち3人って、みんなの中では落ちこぼれなんだよ。」

俯きながら、小声でこんなセリフを言う小前を見ながら、竹田は心配になった。

「そんなことねえよ。大丈夫だよ。」

根拠がなくとも、竹田はそう言うしかなかった。

だが小前は自分が聞いたという噂を、その場にいる6人にだけ聞こえるように、話し始めた。

彼の言う噂とは、ここが人体実験施設であること。正直これは、全員がなんとなく察していたことだ。

更に自分たち10人とは別に、4人の中学生がいるらしいこと。これは人数からして、オサムたちではないか、と皆が考えた。不思議なことに、ほかの大人の被検体に会うことはあっても、その4人に会うことはなかった。

「まあオサムちゃんたちだろうな。で、マエコー、なんでお前、自分が落ちこぼれだと思ったんだよ。」

「カジとシムの奴らは自分が強くなってるって思ってるみたいだけど……、俺だって前より強くなって嬉しいけどさ……、白衣の連中が言ってるんだよ、『数字が低すぎる。』って。あと『なんとかってのが定着してない』とかなんとか。」

「その『なんとか』って?」

「わかんねえ。でも雰囲気的にバケモノみたいになるための何かっぽかった。」

「!!!」全員が一瞬驚愕する。

「バケモノって何だよ?!」更に声をひそめて竹田が詰め寄る。

「多分エンちゃんよりも強えんだよ。『レベル5』ってとこには『悪魔』って呼ばれる囚人がいるって言ってた。」

顔を寄せ合って、ヒソヒソ話していた7人が、ここで一旦椅子に座り直して黙り込んでしまった。佐久間が飛び跳ねながら、圓崎のところに来た。

「何話してんだよ? ヒソヒソよ?」

「ん? ああ、いや、俺たちと同じバスにいた4人のことだよ。」

圓崎はとりあえずそう答えた。

「ああ〜、松野たちのことだろ? 元気そうだったな、アイツら。」

佐久間のこのセリフに一斉に驚く。

「いつ会ったんだ?」圓崎が尋ねる

「ん〜、2日前? だったかな。」

「え? 俺たち松野なんて見てねえよ。何でサクマだけ会ってんの?」佐久間と同じグループの溝端が不思議がる。香野と竹田もうんうん頷く。

「もう少し詳しく教えてくれ!」

圓崎たちは身を乗り出して、佐久間の話を聞こうとしていた。


同じ頃、少年たちが食事をしているとき、黒崎は自身の執務室にいた。机からおもむろにとり出した茶色の小瓶を、グッと飲み干す。栄養ドリンクだろうか?

そして机の上に置かれた資料に目を通す。10人の中学生の名前が書かれている。圓崎、佐久間に赤い丸がつけられている。もうひとつ、Fと大きく書かれた資料を手に取り、ページをめくっていく。彼の手が止まった。

「こいつ……、Tマターが定着しているのか?」

そう小さく呟いたと思うと、突然大声で笑い出した。

「香澄〜、お前には本当に感謝しなくてはな!」

部屋の扉の外には、ノックをしようとして手を止めたままの白鳥所長の姿があった。

「……急がねばならない、そういうことなのだろうか?」

所長は黒崎に声をかけることもなく、その場から立ち去って行った。

(第十話 終わり)

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