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カメラ越しの冷ましたくない憧れ

352日目!14日目!

 憧れの宝石箱のようなキラキラした世界に私はカメラを向ける。


 この光景を見るだけで私の胸は高鳴り始める。かつて、どれだけ思いを馳せようと、何かで遊ぶ事も、入る事すら出来なかったこの場所に、今では鼻歌交じりにいつでも来る事が出来る。


 沢山の電子音が鳴り、多く並ぶ筐体が画面を光らせ、窓の内に見える豊富な種類の景品、ジャラジャラと聞えてくるメダルの音は私の心を華やかせた。


 本当に綺麗で夢の世界、子供の頃は入る事も許されなかったゲームセンターに、今、私はいる。


 家庭の教育方針でゲームなどの俗物的なものに触れる事を許されなかった私は、母親とデパートまで買い物に来るたび、この煌びやかな世界を遠目から羨ましく見る事しか出来なかった。


 もう大人になった私にそんな制約はなくなった。制約がなくなった途端、ゲームセンターへの憧れが強すぎて、ゲームセンター専属のカメラマンになってしまったのは、締め付けの反動なのかもしれない。


 教育は厳しく制限すれば思うように子供は思うように育つわけではないと身を持って知ったが、私の場合はかなり極端な例だとは思う。


 カメラの覗き窓からみる景色はいつも子供の頃に憧れたあの世界のままで、あれからいくつ歳を取っても夢の世界であり続けた。


 何枚も写真を撮っていると


「どうですか? 少し遊んで見ますか?」


 ゲームセンターのスタッフの方が気を遣って聞いてくる。偶にこうしてメダルゲームや、UFOキャッチャーを遊ばないかと誘ってくれるのだが


「いえ、仕事中ですので」


 と、私はいつも断る様にしている。店側としては、ゲームで遊んでいる姿や、ゲーム機が動いている様子も撮るだろうと思っての気遣いなのだろうが、私はその誘いを受けた事がなかった。


 というより、大人になり親から解放された今でも私は一度としてゲームで遊んだ事などなかった。子供の頃から、変わる事なく、私は見ているだけ。


 一度、触れてしまえばこの夢が壊れてしまいそうで怖かった。憧れが消えてしまうのが恐ろしかった。


 楽しそうにメダルゲームで遊んでいる子供を見つけて私はカメラを向ける。


 カメラを通す事で私は憧れに近付くことが出来る。


 覗き窓の向こうには子供の頃に成れなかった私がそこにいた。


今回は「窓」「ゲームセンター」「カメラ」の三つの単語からお話を書きました!

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