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落ち始め 中編
私はいちいち秋林の言動にクリティカルなヒットを受け、
立ち直るのに時間がかかり、立ち上がる前に次のヒットを食らう、そんな日常にあっという間に堕ちていった。
秋林だけではなく、誰とも目を見て会話をすることができない。
前にも増して、私は自信を失い怯えていた。
休みの日には、苦手な人との接し方、へこたれない力のつけ方、
それに関する実用書に飛びついた。
これではダメだ。分かっているのに焦って何も出来ないでいた。
「派遣て頭使わないもんなー。」
「派遣で働くより、結婚でもして家庭に入ったら?働くよりも向いてるでしょ。」
秋林の言葉を家に帰っても思い出し、胸がつまる苦しさを感じていた。
「いつも泣くんでしょ?」レンが私に言った。
「ターミネーターの2作目。シュワちゃんが溶鉱炉に沈むところ。今日は泣かなかったね。」
金曜ロードショーの話をしていた。
彼は録画をわざわざ音声切り替えをして英語で楽しんでいた。
「…顔色悪いよ?」レンは心配そうに私の顔を覗き込んだ。
ダメダメ。見ないで。私の顔はクマがひどいから。
思わず顔をそらした。
彼に話してはいなかった。
話してしまうと、おいおい泣いてしまう自信があった。
「ううん。大丈夫だよ。疲れているだけ」
私はそう答えた。
最高気温が39度にもなった、真夏の日のことだった。




