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私は恐怖で縮こまる術しかなく、ずっと八代さんの腕の中で震えていた。しばらく経つと、扉の音は止み、隣の扉が閉まる音が聞こえた。ようやく、緊張の糸が切れ、崩れるように体の力が抜けた。
「危なかった」
八代さんが、そう言うと、私はやけに声が近いことに気づいて、身を離した。
「ご、ごめんなさい」
「いいんだ。大丈夫か?やはり、警察に通報した方がいいかもしれない」
「そうですね……」
とんだ事故物件に引っ越してきてしまった。どうしようもないことではあるが、後悔が抑えきれない。八代さんは、神妙な面持ちで言った。
「ここで起きた事件。もしかしたら、佐々木さんの仕業かもしれない」
「え?」
「あの奇怪な行動。おかしいと思わないか?実は、昔探偵をしていた事があってね。人の生活を観察する癖があるんだ。職業病でね。あの人は、あの事件が起こる前は、君の前に住んでいた無職の男のゴミを漁っていた。そして、男は君と同じように佐々木さんに講義したんだと思う。佐々木さんは、口封じの為に、通報されないように、男をあんな風にしたんじゃないか?」
八代さんの推測に私はぞっとした。だが、佐々木さんは見るからにただの気のいいおばさんにしか見えない。
「素人が、あんな悲惨な事件起こせるんでしょうか」
「そこまでは分からないが、とにかく怪しいのは確かだ。現に今も、君が私と一緒でなければ殺されていたかもしれない」
「私、怖い……!もう、嫌」
「大丈夫だ。何かあったら、絶対に私のところに来なさい。分かったね」
「はい……」
私は恐怖で心神喪失気味になりながら、返事をした。




