43.砦に入っていった人たちだ!
砦の前に陣取っていたモンスター二匹。
そこへ走ってきた戦士らしき人物が一匹を切りつける。
モンスター一匹がその場に倒れ、もう一匹は戦士の後方から放たれた魔法でバラバラに切り裂かれた。
「あれ、シベリスとアンネさんじゃない?」
「確かにそうだ。本当に二人ずつ入っていくつもりみたいだな」
カナタはギルドで見た二人の容姿を思い返した。
素早くモンスターを処理した二人はそのまま開いていた正門の中へ入っていく。
鍵がかかっているどころか、門自体が開け放たれているようだった。
「あっさり入ったな。なぜ正門が開いてるんだろうか?」
訝しむカナタ。門は半壊しているわけでもなく、まるで誰かが意図して開けたままにしているようだった。
砦の壁の隙間から、黒い何かが地面へと垂れ下がっているのが一瞬見えた。
それは風に揺れているようで、だがどこか生き物のようにも見えた。
「開いてるのは確かに妙だね。光合成で栄養が取れれば出入りする必要ないもんね」
「水も、砦の後ろに川が流れてるからな」
モンスターたちが補給やその他の目的で外に出る必要はなさそうだった。
カナタたちは少し砦に近づく。カナタは剣を、リナは弓を携えていつでも戦闘に入れる状態だ。
「彼らは戦士と魔法使いのパーティーだから、オーソドックスで安定はしていそうだが」
「それでも二人で砦を制圧するのは難しいんじゃない?」
「どう考えているのかわからん」
何かが倒れたり、削れたりする音がかすかに聞こえる。
そして風の音に混じって何かが聞こえた。
「今の、女性の悲鳴じゃなかったか?」
「う、うん……多分」
「……いや、あれは本当に人の声か?」
その直後、砦の中は嘘のように静まり返った。
岩陰でカナタたちは確認し合う。
確証は持てない。中で何が起こっているのかがわからないのがもどかしい。
「あっ、シベリスが出てきた!」
小声で言うカナタ。鎧に何本もの木のツルを巻き付け、顔に幾筋もの傷を作ったシベリスが走って扉から出てきた。
足元には土のついた細い根のようなものが絡みついていて、やや歩きにくそうだ。
それでもかなり慌てているようで、隠れていたカナタたちに気づくこともなく丘の向こうへと姿を消す。
「シベリスだけ……アンネさんはどうなったの……」
「やられてしまったのかもしれない。助けを呼びにシベリスだけ出てきたんじゃないだろうか」
「どうしよう、あたしたちも入っていった方がいいんじゃ」
リナの顔に悲壮感が浮かぶ。すでに最悪の事態を想定しているのだろう。
「もっと策を練ってから行きたかったが仕方がない……あれ?」
決心したカナタだが、先ほど消えていったシベリスが再び丘の向こうから現われた。
しかもカナタが名前を忘れた戦士と、ウィザードのアンナを引き連れている。
「本当に戦力の逐次投入をするんだな……」
「だんだん私にも問題なのがわかってきたよ。敵の数が段違いに多かったら、一気にこちらも同じくらいの戦力を出さないと相手の数が減らせないんだね」
「だから俺が最初からそう言ってたじゃないか! 少数で行くと囲まれたり複数から狙われたりして、すぐにやられるんだよ!」
「全然言えてなかったよ。あのお、戦力をぉ、つぎつぎにぃ、あの、送るのはぁ、よくないとぉ」
「それ俺のマネかよ」
カナタは顔をしかめる。リナは仕切り直すように息をついた。
「今度はシベリスたちは三人だけど、やっぱり不利だと思うよ……どうしよう」
カナタは一度だけ砦の方を見た。開け放たれた門の奥は、暗く沈んでいる。
「いや、五人だな。俺たちも行こう。助けを待っている誰かも、今向かった三人を見過ごすこともできない」
ついにカナタが立ち上がった。




