第11話 ダメなものはダメ
「あ、はい! こちらに表示されている各種電子マネー決済と現金でお支払い頂けますよ」
「現金はわかるが、電子マネー……とな?」
レジに貼り付けられた様々な電子決済のロゴを見て首を傾げる。
「ふふっ、困っていますね! 私に任せて下さい」
「カルファ、お主何かわかるのか?」
「もちろんです! パソコンとやらでしっかり見てきましたから」
「えっ、なになに? 何かするの?!」
「なんやろ、嫌な予感しかせえへんな……」
「ふふーん! まぁ見てて下さい! 記憶生成」
カルファの詠唱と同時に緑色のマナが手に渦巻き、薄型で四角い電子機器らしき物が形成されていく。
記憶生成」は勇者トールが考えたオリジナル魔法の一つ。
魔法の属性に関わらず、明確に想像したものをマナを消費することによって、再現するもので。
使用できるのは、トールとその教え受けていたカルファのみである。
(ま、まさか――)
そう、カルファはやってしまったのだ。
一番やってはいけない、そのオリジナル魔法でスマホを生成するということを。
「おお! なんだこれは?」
ドンテツはカルファの手にある魔法で形成されたスマホに興味津々なようで、目を輝かせている。
だが、トールが持っていた物と一緒とまでは気付かない。
しかし、チィコにはわかるらしく、目にした瞬間。
指を指した。
「あっ! トールがいつも持ってるやつだ」
「チィコ、流石ですね。その通りスマホというやつです! いやー、ネットで調べたらこれがあると便利みたいなことが書かれていたので、トール様の持っていた物を模倣してみました! ちゃーんと動力源は漂うマナですよ! それに比べてドンテツ。貴方は流石の鈍感力ですね。あれだけ一緒にいたのに気付かないなんて――」
ドンテツはカルファに呆れられてたのが、あまりにも悔しいようで、瞼を閉じてトールとの旅の日々を思い浮かべるが、やはり出てこない。
「うむ……やはり、わからんの」
「スマホですよ! パソコンより、コンパクトでとても便利な物です。トール様曰くあちらでは機能の一部分しか使えなかったようですが――と、どれどれ私が生成したものは使えるのでしょうかね?」
生成したスマホが正常に動作するのか、電源ボタンを押したり、画面にタッチしたりなど確認作業をしている。
(なるほどな……これがカルファの狙いやったんか。ほんま、この魔法中毒者め……やったら、こっちにも考えがある)
トールは、笑みを浮かべながら、カルファがスマホに夢中となっているのを確認。
そして、カルファと全く同じ詠唱をした。
「記憶生成」
詠唱したことによって、その手の中に光り輝くマナが集まり、新聞紙を形成。更に形を変えて、それは細長い円柱状になった。
そして――。
――スッコーン!
全く痛くなそうな軽い音がコンビニ内に響いた。
トールは、カルファの頭を軽く叩いたのだ。
本当は嫌だけども。
「ったーい! なんで叩くんですか! 頭を叩いてはいけないんですよ? 知能は低くなってしまってですね――」
「あーもう、御託はええって! そもそも僕やって、叩きとうない! けど、これはあかん! ほんで見てみい! 女の子固まってるやん! というかどうすんねん! いきなり契約書破るようなことをして」
「うーん……それなんですけどね。私、気づいてしまったんです。トール様と交わした契約書はちゃんと機能していますよね? あれは私達という契約書に対して明確な対象があった。ですが、ひーちゃんとか言っていた変人と交わした契約書には、不要意に魔法を使わないことと書かれていました……」
「いや、それがどうしてん?」
「気付きませんか? 主語がないことに」
カルファの指摘を聞いた瞬間。
意味を理解したトールと、ドンテツが顔を見合せた。




