生きるってどういう意味
毎日寝るだけ
起きてもまた寝るだけ
トイレも我慢できなくなった時だけ
食事ってなにそれ
寝ることが生きること
ただそれだけだった
「にゃー」
休職して最初のうちは「みや」の声で起こされていた。
下半身不随の三毛猫で食べ物に目がない私の同居猫。
起こされて、食事をあげて、オムツを替えてまた寝る。
朝と晩起こされて、その時に全気力を振り絞ってお世話をしては、自分の薬を飲む。
私が起きれない時は、顔を舐め、鼻を甘噛みし、そっと寄り添って大きな声で懸命に訴える。
そうやって起こしてもらって、這いずるようにベッドから降りて、食事を用意して、オムツを替えて、寝る。
何度も、何度も、朝と晩だけ起こしてもらっては寝る。
休職してから数日経った時のことだ。
その日はどうしても起きられなくて、目が覚めても、体が全く動かなくて、全神経を集中させてもまるで神経回路が切れたように動かなかった。
辛くて、悲しくて、やるせない気持ちがあふれて、涙が出てきた。
私は、みやにご飯をあげることも出来ない。
私は、みやのオムツを替えることも出来ない。
私は、起き上がることも出来ない。
何も、出来ない。
自分の気持ちと体が全く追いつかなくて、ただただみやに「ごめん」と謝り続けた。
「・・・」
いつの間にか寝ていたらしく、気が付いたら夜だった。
みやは?と部屋を見回すと布団の中で私のおなかの辺りで丸くなって寝ていた。
「みや・・・」
と呼ぶとゆっくりと顔をあげて「にゃあ」と答えた。
「ごめんね。ごはん、用意するね」
そう言って起き上がろうとするがまだ起き上がれない。
とはいえごはんに目がないみやが半日ご飯を抜いたのだ。本人も相当お腹が空いているはずだ。
起き上がらないと・・・。
そう思ってもまだ体は動かなくて、また悲しみが襲い掛かりそうになる。すると、
「にゃー」
いつものみやからは出てこない控えめな鳴き声で私に近づくと頭を私の顔に近づけて、すりすりしながらまた丸まって寝た。
ごはんが食べたくて仕方がないだろうに、オムツが臭くて早く替えて欲しいと思っているだろうに、それなのに、ただ私を思ってそばにいて見守ってくれるみやがそこにいた。
猫にまで気をつかわせてしまうなんて、と罪悪感でいっぱいになりながら、みやなりに私を気づかってくれたことを嬉しく思った。
ーー私がいなければこの子は困ってしまうんだーー
この時、私にとってみやの存在が最優先事項になった。
寝たっていい、ご飯も食べなくていい、何もしなくていいーー
ただ、この子の世話だけはやれるだけのことはやろうーー
体調を崩してから、一度も何かをやりたい、何かをやらなければいけない、と思えなかったが、この時にみやから元気をもらえたのだと思う。
この日から先も、辛くて、苦しくて、一体自分は何をしているんだろうと思い悩まされる日々は少なからずあったが、その度にこの日の事を思い出して励まされるような大切な出来事になった。




