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11/11

繋がり11 罠

静寂――


         さっきまで


         人の声で満ちていた


         ライヴハウスが


         嘘みたいに


         静かになっていた


         誰も喋らない


         誰も動かない


         ただ


         ステージだけを


         見つめている


         待っている


         最初の音を


         最初の一音が


         鳴る瞬間を


ツナグ「(・・・・・・)」


         目の前には


         50人のオーディエンス


         後ろには


         6人の演奏者


         そして


         僕がいる


ツナグ「(・・・・・・はじまる)」


         怖い


         そう思った


         でも


         昨日までの僕なら


         きっと


         ここで


         逃げていた


         けれど


         頭の中に


         あの言葉が浮かんだ


ネア


「失敗したって――


 世界が終わるわけでもないし」


         失敗したら


         やり直せばいい


         そうしないと


         前には進めない


ツナグ「(・・・・・・そうだ)」


         みんな


         僕を待っている


         カナデも


         ヴェルも


         ネアも


         ラマも


         バラドも


         サトルも


ツナグ「(だったら・・・・・・)」


         僕がやることは


         ひとつだ


ツナグ「(歌えばいい)」


         僕の言葉を


ツナグ「(僕の歌詞を!!)」


         ――その瞬間


         音が


         爆発した


         ギターが


         空気を切り裂く


         ベースが


         身体の奥へ入り込む


         ドラムが


         心臓を直接叩く


         キーボードが


         そのすべてを包み込む


         そして


         ヴァイオリンが


         音の隙間を


         縫うように走り出した


         6人の音が


         好き勝手に


         暴れているように見える


         なのに


         バラバラじゃない


         全部が


         ひとつの場所へ


         向かっている


ツナグ「・・・・・・」


         僕も


         その中へ


         飛び込む


ツナグ「――――」


         世界は


         いつだって そう


         悲しい物ばかり


         どんな時だって


         裏切りは付き物


         泣いて


         泣いて


         いつも泣いて


         涙なんて


         安い物


         こんなにも流してる


         価値なんて


         あるわけない!!


         永遠を奏でるプロローグ


         いつまでも


         前に進めない


         この


         価値ある素顔を


         仮面で隠して


             偽りの!!


         自分しか演じられない!!


         それでいいの?


         そんな物のために


         生きてないでしょ?


         この仮面を壊して


         本当の素顔を見せて?


         誰が止めたって


         走るのをやめない


            だって――


            僕は美しいの!!


         ・・・・・・もう


         ・・・・・・止まらない


         ――音が止まらない


         いや


         止める気なんて


         最初から


         なかった


         オーディエンスの身体が


         少しずつ動き始める


         最初は


         ほんのわずかだった


         けれど


         音が進むたび


         その揺れが


         大きくなっていく


ネア「(・・・・・・いいじゃない)」


         ネアは


         ステージの上から


         ツナグを見る


ネア「(ちゃんと


    自分の言葉で


    歌ってる)」


         初めてのライヴ


         初めて立つステージ


         50人の前


         それでも


         歌っている


ネア「(良い感じの


    ロックな歌詞を


    創ったじゃないの?)」


         ヴェルも


         ギターを鳴らしながら


         口元を少しだけ上げる


バラド「(怯えてたギタリストが


     よお・・・・・・


     叫びやがるじゃねえか)」


         ラマは


         ツナグの歌声を


         音の中から拾い上げる


ラマ「(ダイナミック・・・・・・)


         (感情を


         そのまま


         叫んでるみたい)」


         サトルは


         演奏しながら笑う


サトル「(やっぱ良いわ)」


         (初々しいって)


         上手くまとめようと


         していない


         綺麗に見せようとも


         していない


         ただ


         今の自分を


         音にしている


         それが


         このステージには


         妙に似合っていた


         そして――


         ツナグの声が


         もう一段


         高くなる


           可能性しか


           感じねえじゃねえかよ!!


         ネアは


         その言葉を聞きながら


         笑った


ネア「(・・・・・・さあ)」


ネア「(少年?)」


         最初の一曲


         まだ始まったばかり


ネア「(物語は・・・・・・)」


         ここから


         どこへ行く?


ツナグ「・・・・・・」


         歌う


         音に乗る


         そして


         また言葉が


         自然と出てくる


         次のステージは


         もっと自由に生きられる


         ・・・・・・もう


         ・・・・・・縛る物なんてない!!


         涙の分だけ


         素直になるの!


         次のエピローグに


         進みたいのだから!


         そう!


         僕は!


         美しいの!!


         仮面なんて


         要らなかったんだ!!


            ・・・・・・壊しちゃえ


         否定された分


         世界を壊して!!


         欲しかった分


         欲望を出して!!


         誰が止めたって


         走るのをやめない


            だって


            僕は美しいの!!


         ・・・・・・もう


         ・・・・・・止まれない


         ・・・・・・そう


         ・・・・・・このまま


         ・・・・・・壊しちゃえ


         ・・・・・・・・


         ・・・・・・・・


         そして――


         最後の音が


         消える


         ツナグの口から


         最後の声が


         放たれる


         アァアアァアァァァァア!!


         アアァァァァァァアァァァァア!!


         ――――静寂


         誰も


         何も言わない


         ツナグ「・・・・・・」


         息を切らしながら


         ツナグは


         オーディエンスを見る


         ・・・・・・終わった?


         そう思った


         けれど


ネア「(・・・・・・あら?)」


         ネアだけは


         笑っていた


ネア「(悲鳴で


    終わると


    思った?)」


         次の瞬間――


オーディエンス「・・・・・・お」


         誰かが


         小さく声を漏らした


オーディエンス「お・・・・・・」


         そして


           おおおおおおおおおおおお!!


           おおおおおおおおおおおお!!


           おおおおおおおおおおおおお!!


         歓声が


         ライヴハウスを


         揺らした


         ツナグ「・・・・・・!!」


         さっきまでの静寂が


         一瞬で消える


         知らない人たちが


         声を上げている


         自分たちの音に


         反応している


         ツナグは


         ただ


         その光景を


         見つめるしかなかった


ネア「(初ライヴの


    1曲目から・・・・・・)」


         ここまで


         沸かせるなんてね


         ネアは


         楽しそうに笑う


         けれど


         その視線は


         ツナグから


         離れなかった


         ツナグ「(・・・・・・)」


         何だ


         この感覚は


         胸の奥が


         熱い


         身体が


         まだ音を


         求めている


         頭の中では


         さっきまでの


         音が鳴り続けている


         歓声が


         身体の中に


         残っている


ツナグ「(・・・・・・なに


     この・・・・・・)」


         一体感


         興奮


         ザワつき


ツナグ「(・・・・・・こんなの


     知らない!!)」


         知らない


         こんな世界


         僕は


         今まで


         知らなかった


ツナグ「(・・・・・・なんだ・・・・・・これ)」


         まるで


         知らない世界に


         初めて


         出逢った時のような


         胸の奥が


         勝手に騒ぎ出す


         この感覚は


         トキメキ?


         それとも――


         もっと別の何か?


         ツナグは


         まだ知らない


         今


         自分が


         何に


         捕まったのかを


ネア「(・・・・・・ふふ)」


         ネアは


         そんな少年を見て


         確信した


ネア「(味わっちゃったね~)」


         少年~~?


         初めてのステージ


         初めての歓声


         初めての


         音との一体感


         こんなものを


         一度でも


         知ってしまったら


         もう


         戻れない


ネア「(バンドという・・・・・・)」


         あまい罠に


         見事に


         ハマったね~?


         ネアは


         楽しそうに笑う


ネア「(あとはね~)」


         少年


         もう


         逃げられないよ?


           沼るしか


           ないんだよ~?♪



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