何気ない日々を終わりまで
絶対に婚約期間を置くと譲らない公爵の要望を渋々受け入れ、二年は婚約期間とした。
気が変われば撤回できるように、という気遣いは有難いが、少々心配性が過ぎると思う。
その間に長兄に爵位を譲り、婚姻後の住居と事業の拠点を確保できたから、無駄ではなかったけれど。
結婚後は、領地の別荘の一つを改装して、工房と執務棟を併設した事業拠点兼住居にした。
抜け目のない婚約者は、夫の死後も結子が相続できるよう整えてくれた。
婚約期間中は、社交界でもあれこれひそひそとつつかれたが、別に血縁がないので問題はない。
一度、母方の伯爵家に書類上のみ養子となってから、届出を出した。
両親の離縁で切れかけた縁を結び直せたので、互いの家にとってはいい着地点だった。
そして、そろそろ結婚するかという時になって、式の話題が出たのだが。
生前に盛大な結婚式を挙げた際、準備だけで疲労困憊した記憶のせいで届出だけでいいと言ったら、夫がムキになってしまった。
過去の夫とは盛大に祝った、というのが気に入らなかったようだ。
相変わらず、よくわからない人である。
結局、領民を巻き込んだ領地中の祝いにはなったが、面倒事はすべて夫がやってくれた。
ちなみに、母は領地内の修道院で相当激昂し大荒れしたようだが、彼女にとって一番ダメージのある方法だったのではと少し溜飲が下がったのは、結子だけの秘密だ。
結婚して十年。
日々は忙しくも、穏やかに流れている。
バルコニーでルネの入れた紅茶を飲みながら、結子は庭で遊ぶ我が子の姿を眺めていた。
コルネリアが憧れ続けた金髪碧眼と、夫そっくりの面差し。
五つを数える娘は、歩き出したばかりのルネの息子の手を引いて、太陽のように笑顔を咲かせる。
「おとうさま!」
両手を広げる背中は、歳を重ねて少し痩せたものの、未だ逞しく頼りがいがある。
「ゆっくりおいで、カーネリア」
こちらからは見えないが、きっと夫はあたたかく柔らかい碧い瞳を和ませて、娘たちを待っている。
お粗末様でございましたm(*_ _)m




