あやめの場合 japanese frappe No.1
時代劇風ファンタジー?
この作品には、別バージョンがあります。拙作の武器屋の「薙刀」がそれにあたります。
どちらからでも大丈夫ですが、武器屋から読むことをおすすめします(^_^)/
戦乱も治まり天下太平の世が続く。
下弦の月が咲き始めた桜を、淡い光で照らしだす。静寂が屋敷を満たす夜。
突如、門を破壊する音が響いた。
家人は、今宵は若い娘一人。寝床につこうとしていたあやめは、音に気づき欄間に飾ってあった薙刀を手にとる。
鞘を払い薙刀を小脇に抱え縁側より庭に降りた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
縁側に降りたところで、男性の姿が目に入った。剣呑な空気をまとい片手に抜き身を下げた姿は、冥府魔道に落ちた悪鬼羅刹というところでしょうか。
小脇に抱える薙刀、号を巴という、朱塗りの長柄に竜独鈷の文様が刻まれた刀身、鍔は牡丹の拵え。薙刀としても、大振りな刀身を持つ可憐な武器。
手の中の相棒と呼ぶべき得物に頼もしさを感じながら、音もなく歩みよろうとする男性に声をかける。
「何者です。当家にどのような用件でしょうか?」
できうる限り凛とした声で問いかける。震えそうになる声をうまく抑えられただろうか。
「返答がないならば、巴の露となってもらいます」
薙刀を構えなおし最後通告とした。今、家を護るのは留守居役を任された私の仕事です。
武家の息女として狼藉を見逃すことなど、できようはずがありません。一瞬脳裏をよぎった誰かの姿に、小さく己を鼓舞するように呟く。
「……様。あやめ、参ります!」
間合いに入ってきた男の動きに応じ、胴体を狙った一撃。薙刀を巻き込むかのように横に回転する。必殺の威力を持った一撃を、男は下がることによって回避する。
そしてできた隙をつくために、男は再度前にでる。
かわされた薙刀の流れをとめず、男に背を向ける。薙刀の軌跡を横から縦の動きへと円の動きで繋ぎ、男へと一歩踏み込んだ。
軌跡は後ろから前への豪快な半円を描く。上段からの唐竹割り。
男は持ち上げた刀で薙刀を止めた。
金属の断ち切られる甲高い音。
薙刀は、刀ごと男を断ち切っていた。薙刀を伝わり感じるのは、肉と骨を断つ感触。
人を斬るのは初めてだが、明らかに致命傷の斬撃。
何度も稽古を繰り返した身体は薙刀に操られるかのように、初めて人を殺め混乱しそうになる意思とは関係なく、刃を抜き後方へと下がり残身。まだ警戒をとくことはない。
いや、とくことができないと言ったほうが、正しいのだろう。
「……倒れない?」
男の身体が立ったまま。伝説にある武蔵坊弁慶は立ったまま逝ったといいますが…。そこまで思考したとき、もう一点異常を発見した。
「傷から血が流れていない…」
ありえません。あれほどの傷を受けて、血の一滴すら流さないなどありえない。
気づいたとき、唐突に傷口から何かが這い出てくる。漆黒の水飴のような何か。こちらに意思を向け、何かを求めるように這いずり近づいてこようとする。
あれは私の手におえるものではない。正に冥府魔道から這いだしてきた何かだ。
気付くと私は尻餅をつき座りこんでいた。逃げなければと思うのだが、体が言うことをきいてはくれない。
恐怖で混乱した頭に幼なじみの顔が浮かんだ。思わず彼の名を、幼かったころの思い出の呼び名で呼んでいた。
目を閉じた。一瞬の走馬灯が流れる。何かを殴るような鈍い音。
何かが私の肩に触れた。覚えのある感触と、匂いにゆっくりと目を開く。
走馬灯の中で見た背中と、目の前の背中が重なる。大きさも何もかも、あの背中とは別人にも関わらず……同じ人のものだと確信する。
「あやめ、ただいま。
間にあって良かった。あとは任せて」
こんなときだと言うのに、懐かしさと安堵に涙がでた。
「遅いです。はい……お願いします」
口を開こうとして、迷った。武家の娘としては、『ご武運を』というのが正しい。だがこれは、生死よりも存分な戦働きを願うための言葉だ。戦場では生きて帰るよりも、死してもなすべきことをなすことを優先する。武勲をたてることを重要とし集団を大事にするためだ。
「必ず帰ってきてください。
伝えたいことも沢山あります。
約束も、まだまもってもらってません。
だから…」
安心したからだろうか、意識が途切れる。
「どこにも行かないでください‥…」
最後に彼の少し驚いたような笑顔が見え、頷いたように思えた。
意識が闇に飲まれた。
この作品、実は未完成です!(笑)
長くなりそうだったのと展開上二つに分けました。武器屋もあわせると三話構成なので、素直に短編として一本描けば良かったですねσ(^◇^;)
次の話しは、しばしお待ちください。
ストーリーはできてるのでアウトプットするだけです。さほどお待たせせずにお届けできるかと思われます( ̄。 ̄;)




