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第13話 お嬢様お勉強を頑張る

「はい、お嬢様もすっかり反省なさったようですので、サクサク問題を解決していきましょう。お嬢様、その魔力の玉の魔力、体内に戻せますか?」


 クララのこの聞き方は……罠がある。そうクララは何時もそう、先ず何をするのか指示する、でもその方法は言わない。私がクララをドSだと思う理由がこれ……このまま方法や疑問点を問い返さないと途方に暮れることになるのよ。彼女は私がその指示に対して疑問を抱くかどうかを見てる。ワザと最初は足らない指示をして、それに私が気が付くか、疑問を抱くかを見ている。


 ここがシオンと違う所、シオンは疑問を抱かせない様に丁寧に説明して、分かり易く教えてくれる。先程の魔力操作の様にその指示に従えば出来てしまう。そう指示さえあれば、指示に従ってさえいれば出来てしまう。


 しかし……それでは自分で考える力は身に付かない。指示を信じ切ってしまい、そこに疑問を挟まない、分かった気になってしまう。そう私は魔力の玉を分かった気になって、シオンの指示したものだから安全だろうと思い込んで……そこに疑問も挟まずに調子に乗ってしまった……


 シオンの方法は、初心者を指導する上では非常に良い指導方法だと思う。先ずある程度説明して、実際にそれ体験させてそれに慣れさせる、その熟達具合を見ながらアドバイスをして、その段階の質問に対して細かい説明を追加していく。初心者を成功体験によって自信を付けさせ、指導していくこのやり方は普通の初心者にとっては理想的な指導方法だろう。


 しかし、私のようなお調子者には不適切な指導方法だとシオンは判断したんだと思う。


 そう指示以上の事をやってしまう、出来てしまう。シオンは指示したことを、私が最初から出来るとは思っていなかった、私が失敗したらその都度、アドバイスをして説明を追加して、そして成功に導く心算だったのだろう。けど私はその段階を飛ばしてしまった……そうもっと失敗して徐々に慣れていく必要があるのに、それを飛ばし、飛ばせることで自信を深め、調子に乗って、失敗した。


 だからシオンは交代の指導役にクララを指名したのね。チェーンはシオンと同じタイプだから今回の反省を生かす為にはクララが良いと判断したんだと思う。クララの指導方法は親切ではないかもしれない。けど自分で疑問を抱き、考え、指示を仰ぐようにさせる、分かった気にさせない。だから調子に乗ることがない。


「戻せるの?」


 だから質問する。そう『戻せますか?』とクララは聞いてきた。これは私にその魔力操作が『出来るのか?』問うと同時に、その魔力操作そのものが『可能な魔力操作だと思うのか?』を問うている。そう判断して先ず、可能なのか問い返す。


「戻せるの? 疑問形ですね、何故そう思われたのでしょうか?」


 クララは疑問を感じて問うた私に、何故疑問を感じたのかを問い返す。そう彼女は甘くない、徹底的に私に考えさせる。


「何故? 何故かしら? 先程クララが魔力の玉は私にも当たる、風船が弾けた程度の衝撃を与えると言ったわ。だからではないかしら?」


 そうよ、クララはそう言ったわ。この魔力の玉は私に対してもダメージを与えるって。それは接触しても体内に入って行かない、魔力として吸収されないと言う事でしょ。


「ふふ、お嬢様はやはり優秀ですね。ではそれを元に何故『体内に戻せない』のか理由を推察して、それを述べて頂けますか?」


 褒めてくれる、けど更に深い考察を求めて来るわ。そうクララは簡単に答えを、正解を教えてくれない、私が自力で何処まで正解に近づけるかそれを見ているのよ。


(くぅぅ、相変わらずねクララってば……何て楽しそうに私を追い詰めるの……)


「ううぅ、えっと……膜? そうよね、この魔力の玉には膜が張ってあるわ、それが邪魔をするんじゃないかしら?」


 なんとかそれらしい理由に思い至る。そう膜を張っているのよ、これは魔力が大気中に拡散しない様に閉じ込めるものでしょ。ならその膜が有る限り体内に戻せないわよね? 体内で魔力を捕えた膜と体外で魔力を拡散しない様にした膜は似ているけど違うわ。


 私は風船をイメージして何となく、その違いを微修正出来たわ。でもシオンはそれが出来たことに驚いていたでしょ。そう……だからこの二つは似ているが違うモノ。体内で魔力を捕えているモノよりも強固……違うわね、柔らかさや薄さは同じだもの……安定したモノ、そうもっと安定したイメージだわ。


 その膜は安定しているからこそ、他を弾く……安定を乱すモノを拒絶する。


「ではその膜をどうしますか? その膜を取り除くのですか?」


「膜を取り除く……膜が無い……そうすると……魔力が拡散して結局体内には戻せないでしょ?」


 そう、魔力の拡散を防いでいる膜を取り除いたら、魔力が拡散する。当然の事だ。それでは魔力を体内に戻せない……よね?


「では一度、私が試してみましょう、ご覧になってください。先ず魔力の玉を作ります」


 クララは一瞬で魔力の玉を作り出す。えっ……っと、うん、そうよね、私は出来るようになっただけ。彼女達の足元にも及ばない。これがそういう事なのよね。スピードが段違いだわ……


(うっ、こんなの見たら、ちょっと出来たからからって、私が調子に乗ってたのを実感するわね。そう私は才能は有るのかもしれない、けどそれをまだ磨いてさえいない……私の実力は彼女達の足元にさえ及ばないわ……そんな彼女達の前で調子に乗って恥ずかしい……)


「はい、出来ましたね? では魔力の玉を包んでいる膜を取り除きます……」


パンッ!!


「と、このように弾けます。これは拡散と言うより破裂です。膜を取り除こうとすると、この様に破裂します。まあ結果的に魔力は拡散していますが、お嬢様の考えた拡散とは違いますよね?」


 クララの手から少し離れた魔力の玉は軽い音と共に弾けて消えたわ。手から離しているから痛くないのかしら? どうなんだろ……


「取り除くと危ないって事?」


 私の場合、指先に魔力の玉がある。この距離で弾けたら絶対痛いわ。怪我はしないかもしれない、けど痛いと思う、その位の音はしていたわ。


「水風船で例えましょう、手に持った水風船から風船を、そう風船だけを取り除く……お嬢様はできますか?」


「水風船の風船だけ?」


 どうすれば……いやそんな手品……そもそも水風船毎じゃなくて中の水を残して? そんな事出来るの? 左右から引っ張って破る? けどそれだと破裂……そうかこれが今の!!


「恐らく無理に取り除こうとすれば風船が破れて破裂します。分かりますか? 魔法は万能では有りません。お嬢様、無理なモノは無理なのです、御理解いただけましたね?」


 そうなのね、魔法は不思議な力、だけど、無理なモノは無理、万能じゃない……なら!


「ではやはり無理でしょ? 一度体外に放出して、魔力の玉に装填した魔力は体内に戻せないのではなくて?」


 そう無理なモノは無理なのだとするなら、『可能な魔力操作だと思うのか?』とのクララの最初の問いに対する答えは不可能でしょ?


「お嬢様、実際の水風船から風船を割らずに水を取り除くにはどうしますか?」


 クララは私が正解だと思った答えを、否定も肯定もせず、別の質問をして来る。


「水風船から? 縛った口を解いて水を取り出せば良いのではないの?」


 そう実際の水風船なら注ぎ口がある、少し難しいけど縛ってあるだけの筈だからそれさえ解ければ、そこから水を取り出せる……えっ、もしかして!


「はい、そうですね、正解です。ではお嬢様、やってみてください」


 私の表情を見て、クララが正解だと答える、そう、今私が感じたこと、魔力の玉も水風船と一緒なのだとしたら、注ぎ口を作ってそこから水の様に魔力も取り出せるわ。無理なモノは無理、だけど違う、その方法では無理と言うだけ、なら別の方法を試せば良い、これはそういう事ね。


(発想の転換なのね。魔法は道具に過ぎない、それは万能ではないけど、道具は使い手次第、工夫次第で幾らでも可能性は広がる……そういう事なのねクララ!)


「その方法で魔力の玉から魔力が取り出せる……水風船……注いだのと逆行程って事かしら? 指先で魔力の玉に触って、そこを口にして魔力を吸い出す……出来た! 出来たわクララ!」


「ふふ、はい、大変良くできました。お嬢様、出来ましたね? では最初の私の質問、答えは?」


「魔力の玉の魔力は戻せるわ、そしてそれを私は出来たわ」


「はい、そうですね。如何ですか? 今回お嬢様は幾つも教訓を得ましたね? それを忘れてはいけません、よろしいですね?」


「はい、忘れないわ、肝に銘じます」


「お嬢様、お嬢様にはまだ、魔力を体外に出す訓練は問題が多いと私は判断します。理由はお分かりになりますね?」


「はい、私にはまだ知識が足りてない……痛感しましたわ」


 そう色々思い知った、私には知識がまだまだ足りない。そして圧倒的に経験が足りていない。


「はい、しかし、本日は準備体操、本格的な訓練は明日からの予定でした。ですからお嬢様に知識がないのは仕方ありません。ですので本日は準備体操を、体内の魔力の循環を中心にこれから訓練いたしましょう」


「体内の?」


「お嬢様、本日作った魔力の玉と、最初にチェーンが実演して見せたエーテル化、違いはなんだと思いますか?」


 あれ? そう言えば……同じではない、けど元は同じ魔力よね?


「チェーンのは周りの魔力を集めたのでしょ? そう言ってたわ。魔力の玉は体内の魔力を使用したわ、その違い? いえ、違うわ。そう体内の魔力も周囲の魔力も違いはないとも言ってたわ。そうよならその違いじゃない……気体のような魔力、流体のエーテル……魔力を圧縮していけばエーテルになるのかしら?」


「魔力の玉に魔力を圧縮していけばエーテルになる、そうお考えですか?」


 ううぅ、そうお考えでした……けどクララがこう問かけて来るって事は違うのね……


「違うの? いえ……違う? 魔力を圧縮した『魔力弾』は爆発的な威力がある、けどチェーンのエーテルは爆発なんてしなかった、寧ろ液体のような……圧縮してない? 液化? けどどうやって?」


 物質の三態は温度が重用な役割を果たしているけど……魔力は違うのよね……どちらも暖かい、魔力が気体に近いのなら、エーテルより魔力の方が温度が高い筈……だから温度じゃない。なら圧力……そう密度を上げて状態を変化させるのかと思ったんだけど違うの? ガスは圧力をかけて液化してるのよね? そう物質の三態も圧力で融点も変化した筈よ、だから魔力も一緒だと思ったんだけどこれも違うのね……


 そもそもチェーンの見せてくれたエーテルは無重力に浮いている水見たいだった。どう考えても圧力が掛かってる様に見えない……ならどうやって?


「お嬢様、魔力のエーテル化は別名で『流化』と呼ばれています」


「『流化』……流れる? 動かす? 循環? ……もしかして速く魔力を回すとエーテル化する? 『流化』するの?」


 なにそれ! そうなの? 速く回すと『流化』する……魔力は力、物質じゃないからそうなの?


「正解です、よく出来ました。魔力は高速で循環させると流れをもち、流化してエーテルになります。他にも結晶化させると魔結晶になると言われています」


 不思議な力ね、それで状態が変化するなんて……けどチェーンのエーテルはまだ残ってる、僅かだけどまだ光ってる。一度エーテル化すると安定する? そうよね? そんな感じだわ。エーテル化さえすればそこからは回転させる必要は無いって事?


 それに魔結晶……結晶化? 固化、凝固するわけじゃなくて結晶化? ……あれ? でも言われてるってなに?


「魔結晶になると言われている? 言われているだけ?」


「魔結晶は存在しています。魔力を結晶化した結果、魔結晶になることも知られています。しかし、現在、それに成功した人はこの国に居りません、ですから確かめようがないのです」


 知られていて、存在もしているのに確かめられない? 魔結晶……何だっけ? 燃料みたいなモノだって知識があるわ。この屋敷の魔道具に魔力を供給しているのが魔結晶、正確には魔結晶を利用した魔結晶炉なのよね?


 うん、まあもう私が設定した覚えのない事が出てきても驚かないわよ。魔法を存在させる為に必要な設定だったんでしょ? この世界って電力の代わりに魔力を利用してるのよね……ベニカはその辺も教わってるって記憶がある……そう……だから私も知ってる。


「何故? いや待ってこの国? この国には居ない? この国は魔法技術で他国にそんなに劣っているの」


 存在してるのに、利用しているのに、この国では造れない。ならそれは輸入してるって事でしょ? 生活に必要な燃料を輸入に頼ってるの? 製造できないから仕方ない? けどそうなるとこの国の魔法技術力はその輸入元の他国よりも劣っていることになるでしょ? 私が思ってたより後進国なのルイバトン聖公国は?


「そうですね……この世界には知られているだけで100ヶ国程、国、若くはそれに類するモノがございます。中でもトップ10の規模の国は主要国と言われております。ルイバトン聖公国の魔法技術は、国としては主要国で中堅と言ったところでしょうか? しかし、アシュリー侯爵家は独自に魔法に関する技能、技術を積極的に収集、研究いたしておりますので、主要国でも上位に位置していると自負しております」


 あれ? 結構良い所に居るわね、後進国って訳でもない、しかもアシュリー侯爵家に限って言えば上位なの? まあお母様もいるし、ライト兄様も居るから魔法が得意なんだと思ってたけど、やるわね我が家は!


「でも結晶化は出来ない? そういう事?」


 そう主要国の上位なのに……それでも無理なの? 一体どこから輸入してるの? 製造できる国は独占してボロ儲け?


「現在結晶化に成功している種族は、魔族、竜種、エルフやダークエルフ、吸血種、そして極一部の人種だけです。アシュリー侯爵家ではお嬢様のアクセサリーの様に、宝玉を魔力タンクにして魔力を貯め込む事は可能です。ですが魔力を直接結晶化して魔結晶にする事には成功しておりません」


 なんだろう……また設定してない言葉が出てきたんだけど……魔族? 悪魔って事? 第三弾で追加されたの? 乙女ゲーとはもう完全に別方向に進んでるわね、でも美形の悪魔イケメン……ありかも!! って関わったらザマァだから関わり合いになっちゃダメなのよね。まあその前に悪魔と関わり合いになった段階でピンチよね? 見てみたい気もするけど可能な限り回避の方向でいくしかないのかな?


 でもって竜種ね、ふむ、それってドラゴンでしょ? まあファンタジーの定番よね。ドラゴン自体は第二弾までは登場させてないけど、名前だけは出てたわ、竜殺しのイケメンがいるのよね。中々人気のキャラよ。第二弾で追加されたキャラだけどお兄様達と並んで人気ランキング上位だったわ。その設定があるから存在してるでしょうね。第三弾はRPGだから、そこでボスキャラとして追加された可能性もあるけどね。


 でもってエルフね、まあエルフがいればダークエルフも居ると、この辺はファンタジーの定番かな? 吸血種? 吸血鬼の事? これも第三弾かしらね? まあ定番だけど……追加のイケメンに吸血鬼の貴公子とかいそうよね……どっちにしても血を吸われて吸血鬼になるのはイヤだわ。私は血……苦手なのよね……


 けど人族? いえ人種? ああ……獣人が居るんだっけ? それも含めてるから人種って事? けど……出来る人がいるのね。


「出来ている人達がそれだけ居るのに何故?」


 そうよ、他でも誰も出来ないのなら、この国でも出来ないのは分かるわ。でも出来てる人が結構いるんでしょ? 何で私達は出来ないの?


「結晶化、そう結晶なんです。そこに核となるものが存在するのではないかと考えられているのですが、我がアシュリー侯爵家でも発見に至っておりません」


「教えては貰えないの?」


 既にある技術なら、教えを請えば、これだけ出来る人がいるなら教えて貰えるんじゃないの? でも……魔族は魂と引き換えにされそうだからパス、吸血鬼もダメね、ドラゴンなんて頭から美味しく食べられそうね。けどエルフは? 私がエルフの血を引いてるって事は少し位付き合いがあるんでしょ? 人種もいるのだろうけど……こっちは独占することの利益を考えたら、絶対に教えてくれそうにないわね。


「魔結晶の利便性は広く知られております。それを自分の魔力で人口的に造り出せれば、人は大きな力を得ることができると言われています。しかし、大きな力には、それに伴って大きな危険があるとも言われております。古代帝国と呼ばれる人族の嘗ての文明はその力を暴走させて滅んでいます。ですから現在、それを知っている者達はそれを秘匿しております。決して他者に教えることはありません」


 おっと……またも知らない設定ね、古代帝国? 古代帝国ってなに? まあ定番だけど第三弾で追加された設定なの? 本格的にRPGに舵をきったのかしら?


「でも待って、魔結晶自体は気軽に利用されてるでしょ? この家でも魔結晶炉だっけ? それで魔結晶から魔力を取り出して照明やらなにやら魔道具に魔力を供給してるわよね? この魔結晶は? 魔結晶は作れないんでしょ?」


 輸入されている割には気軽に利用されているのよね、輸送費含めてかなり高額なんじゃないの? アシュリー侯爵家が超お金持ちだからって線も有るけど、魔力供給された魔道具は使用人達も気軽に利用してるわよ?


「お嬢様、魔結晶は人口的に作れないだけですので、そう、魔物を倒せばその魔物の持つ魔結晶を得ることができます」


 えっ? そうなの? 輸入してるんじゃなくて魔物を倒して獲得してるって事?


「魔物? 魔物が魔結晶を持っているの? じゃあこのお屋敷で利用している魔結晶は……」


 アシュリー侯爵家は結構な勢いで魔物を討伐してる筈よね? だからこんなに気軽に利用出来るの?


「全て魔物を倒して得た物で御座います」


 そうなんだ……けど生活に必要な燃料が魔物から入手できるのなら、もっと積極的に魔物は狩られてるんじゃないの? 私が想像しているよりも魔物って強い? 危険って事?


「ねえクララ、魔物って強いのかしら?」


「お嬢様、魔結晶を造りだせれば人は大きな力を得ることが出来ます。なら魔結晶を既に持っている魔物は? お嬢様はどう思われますか?」


「大きな力を得た存在、それが魔物って事なのね……けど魔物から魔結晶を得ているなら、それで人も大きな力を得られるんじゃないの?」


 何も自分で造らなくても、有るものを利用すれば良いと思うのだけど、違うのかな?


「お嬢様、魔力には固有の魔力波形がございます。これは魔結晶となっても変わりません。人同士でも反発し合います。まして魔物のモノととなると、人の魔力波形とは全く違います」


 そうだったわね……個人の支配下に置いた魔力は反発し合うんだったわね、なら魔力を結晶化した魔結晶も反発し合うって事なのか……案外面倒ね……


 けどなら、魔結晶炉ってどうやって魔力を? 炉ってくらいだから燃やしてるの? 魔力として動力代わりに使うだけなら、反発し合っても関係ないのかな? 消費するのは魔道具だから魔力波形の違いは関係ない? うーーん情報が不足してるわね。


「人には馴染まないって事なのね? だから魔結晶炉で魔力として取り出しているって事?」


「そもそも魔物は成り立ちが特殊ですので、魔物の魔結晶は魔力燃料としてしか使用出来ないとされていますね」


 魔物は成り立ちが特殊?


「まあ魔結晶のお話はこの辺で、今回の主題はエーテルです。良いですかお嬢様、魔結晶は人を強化します。ではエーテルは?」


 あれ? 話題を逸らされた? 魔物関係はまだ私には早いって事かしら? 下手に興味を持たれたら困るって事? ライト兄様も私が冒険者に興味を持たれたら困るみたいな事を言ってたわね……私って相当お転婆にみえてる? ……ベニカの記憶に心当たりが多すぎて困るわね。


「もしかして、エーテルも人を強化する?」


 話の流れ的にそれで正解よね?


「正解ですお嬢様。ただ魔力そのものも、人を強化しているんですよ。お嬢様は華奢でらっしゃいます、そうですね?」


「ええ、とても華奢ね……明日からは鍛えないとね」


 本当にガラス細工のように繊細よね……よくこれで折れないわね。下手したらポキポキ骨折しそうなのに、案外丈夫……


「そうですね、それは明日以降シッカリ鍛えましょう。お嬢様、普通に考えて、お嬢様のその華奢な骨格では、お嬢様の体重は支えきれません」


「…………ちょっと待ってクララ、ワタクシはちゃんと支えてますよ? それは確かにお兄様達みたいに丈夫ではないかもしれないけど、ちゃんと日常生活を送れてますわ……ってもしかして骨格が魔力で強化されている?」


 そうこれも話の流れ的にそうよね、魔力も人を強化してるってこの事? 私の骨格も魔力で強化されてるの?


「お嬢様の体重を、その華奢な骨格の物理的な強度だけで支え切れると考えていたのですか? 全体的に細いから可能だと? お嬢様は小顔ですけど頭の重量はやはりそれなりに有ります。また、その豊かなお胸も中々の重量になります。物理的な骨格の強度では支えきれません」


 予め勘違いが無いように言っておくけど、おデブちゃんじゃありませんからね? この極端な体形の所為でそれなりだけど、ベニカの記憶だと体重は30キロ台後半って所よ。詳しく? 乙女のトップシークレットよ。


 よく考えて欲しいのだけどこの背丈で、このお胸があって40キロを切ってるなんて普通あり得ませんからね? 細身だった紅華でさえ40キロ台中盤よ? 運動していた学生時代は50キロ付近よ。ベニカのこの背丈なら、普通は50キロほどでも頑張ってる方だと思うわ。ベニカは年の割に背が高いから……何だろうガリガリに見えないのが不思議なくらいの体重よ。


「だから魔力で強化しているってことなのね」


「その通りです。エルフが華奢でも運動能力が高い理由もそれです。彼等は、その華奢な骨格に無駄のない筋肉を、魔力で強化し支えることによって、高い運動能力を得ています。お嬢様も同じです。その華奢なお身体を、魔力で強化しているからこそ支えられているのです」


 魔法が得意なエルフは最初から魔力なんかで強化しているから華奢って訳ね。まあ無駄にごつくなっても重くなって機敏に動けないものね。エルフは見た目的にスピード重視っぽいし、強化して無駄を削り込んだ結果、種族的に華奢に成っていったって所なのかしら?


「そうだったのね……」


「そしてエーテルです、エーテルは魔力そのものよりも更に肉体を強化することができます。そして魔結晶はエーテルよりも更にと言ったところです。しかし、現在魔結晶による強化は出来ません、魔結晶が造り出せませんからね。しかし、エーテルは先程チェーンが造ったように造り出すことが可能です。ですので現在は、エーテルによる強化を我がアシュリー侯爵家では行っております」


「エーテルによる強化……あの液体みたいなのを体の中に入れるの?」


 私がイメージしたのは薬物注射によるドーピングなんだけど……体に悪そうなイメージしかないわ……


「はい、お嬢様は既に魔力を宿していますよね? 何か問題ありましたか?」


「でも今度は液体でしょ?」


「エーテルを液体、魔力を気体のようなものだとお考えでしたら、気体の魔力の方がより体内に入れては不味いモノではありませんか?」


 あれ? そう言えばそうね……


「……そう考えるとそうね……」


「お嬢様、魔力は空間を貫きます。お嬢様は子宮から手の先まで体内を通して魔力を移動させましたが、そこに穴など開いておりません。身体の中を移動させましたが、その間の細胞などは素通りしております。良いですかお嬢様、魔力に物理的な空間は意味を成しません。魔力は肉体を素通りします。これはエーテルも一緒です」


 ああ、最初にそう説明されたわね……そうか体内で魔力を移動させたけど何ともない。これはそういう事なのね!


「肉体を素通りするのにどうやって体内に留まってるの? そもそも体外にそのまま出すと拡散しちゃうのよね? 肉体を素通りするのなら、体内にあっても拡散しちゃうんじゃないかしら?」


「生物は、体内に魔力を留めるために、体表面に膜を張っています。これが体内と体外を隔てています」


「膜? でも物質も素通りするんでしょ?」


「この膜は物理的な膜では有りません。魔力の膜です。生物は生まれながらに微量の魔力を制御して無意識にこの魔力の膜を形成し、魔力を体内に留めているんです」


「何故……ってそうか自分を強化する為ね」


 あれ? じゃあこのイメージで魔力を包んでいる膜も、もしかして魔力? 魔力の玉を包んだのも魔力? 完全にコントロールされた魔力で、その他の魔力を包み込んだってことなの? 魔力制御ってもしかしてイメージで魔力をコントロールする方法って事?


 そうか……イメージ、人の脳がイメージを制御する事によって魔力が制御されて、それで魔力全体をコントロールする。これが魔力制御って事なのね!


「正解です。そして体内の魔力をエーテルに変換することによって、より肉体は強化されます。ですから、これからお嬢様には、体内で魔力を循環して頂き、エーテル化して頂きます。そのエーテルを体内に蓄積していくことにより肉体を強化して頂きます。これは何時でもできる魔力制御の訓練です。そして続けることによって、エーテルが蓄積されどんどん肉体も強化されていきます。筋力トレーニングと共に、この訓練を続ける事により、人は、魔物に対抗しうる力を手に入れることができます。お嬢様、お外に出るためにも頑張って訓練致しましょうね」


 なんだろう最初にドーピングをイメージしたから、何だかズルい気もするけど、エーテルを蓄積すると肉体が強化されるのは素的ね。ベニカは華奢だから、筋力トレーニングをしても嵩が知れてる気がするわ。けど魔法、そう魔力制御は大得意。ならそっちで肉体のマイナス分をカバーできそう。


 けど他の人も同様に強化してるなら意味がない? ……いえ……そうかアシュリー侯爵家ではってクララが言ってたわ。これは我が家独自のやり方なのかもしれないわね。ならこれで強化すれば暴漢なんて返り討ち? お外に出られるって訳ね! 俄然やる気が出てきたわ!


「お外……はい、ワタクシ頑張りますわ!」


 ええもう、鼻息も荒く成ろうってものです!!

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