レイのほうの事件
申し訳ありません。『バーノルドの森事件』は、『魔女は森では 』でおこった事件となっております。
班室のひどいありさまに額をこすったジャンがルイをゆびさす。
「 ・・・とにかく、あとでいっしょにケンをむかえにいくぞ。しっかり謝れよ」
「ああ、いいさ。 謝ってケンが納得してくれるならいくらでも謝るさ。でももうきっとおれはケンには許してもらえないだろ。 ―― さっき、殴られたほうがまだ見込みあったかもな」
ジャンの指示に、やけになったように半笑いのルイがみんなをみまわす。
「おまえを殴ってもケンの評判がさがって、テロへの仕返しだってうわさがひろがるだけだよ」
ウィルが冷たくいいはなつ。
「そうだな。おれとかかわるとろくなことがないだろうな」
ルイのその言葉にみんな顔をしかめた。
おまえなあ、とジャンが前に出る。
「どっかできいた脅しみたいな言葉つかうなよ。 《白いカラス》のことだってじゅうぶんバーノルド事件をおもいおこさせるってのに、『光』がみえるとなったら、あのマデリン・モンデルとおなじじゃねえか」
あの、バーノルド事件の発端となった・・・。
「 ・・・なあジャン、はっきり言えばいいだろ? おれのはなしをきいて思い出したのはバーノルド事件じゃなくって、 ―― 《 レイのほうの事件 》だって」
「やめろルイ、ジャンはそんなふうに思ってないだろ」
とめたニコルに、ふ、といやな笑いをみせて続ける。
「思ってない? おれのはなしを家できいたとき、おまえだってレイのこと思い出したからおれをたたいたんだろう? おれだって、―― おれだってそう思ったから、言えなかったんだよ。 おれの主張はレイをさらった《あの男》とまったく一緒だろ?『彼には光がみちあふれている』。 まさにそのとおりだとおれも思ってるし、じっさい、みえるんだよ・・・しかたないだろ?」
「ニコルにあたるな。 あのな、おれがいつおまえを《あの男》となぞった? おれはさっきのおまえの態度が、《自分にかかわるといやなことがある》って言い切ったジェニファーみたいでいやだったんだ。 ―― バーノルドのときにさんざん見ただろう?信じられないようなことだって起こる。否定はできない。 だけどな、それを、自分のつごうにあわせて解釈したら、危険なことになる」
いいきったジャンはルイの肩をつかんで目をのぞきこむ。




