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頭蓋骨の山

 ネコトラは森の中を走った。行けども行けども世界は灰色である。おかしい、ネコトラは思った。もう何度も同じ場所を通った気がする。色の無い世界で方向感覚を失ったか?


 助手席でスライムの少年、アウグスは父親の形見の ' 賢者の石 ' を握りしめていた。長老から大切にせよと言われている。

 アウグスはまたネコトラのふさふさの毛を触ってみた。するとなんとネコトラの思念が伝わってきた。


「"少年よ、おかしい。行けども同じ場所へと戻ってしまうようだ"」

「さっきの女の子が魔法をかけたのかな? 森の向こうの小屋にいる少女ってあの子じゃないよね?」

「"違う。あれは......"」


 ネコトラは言葉をにごした。違う。あれは......しかし、イタズラにも程がある。この灰色の世界はなんだ?

 運転席の子猫が"ニャ~"と鳴いて起きると、アウグスに顔をすりすりした。お腹が空いたのかな? と少年は思った。


「ねぇ、ニャオさん、子猫が起きてきたよ。お腹が空いたのかな?」

「"おお、おお可愛い我が子よ、お腹が空いたか......"」


 ネコトラは走るのをいったんやめ、何か食べるものを探した。さっきまで浮遊していた"魚の骨"は灰色になり、地面に散らばっていた。

 あちこちに散らばるその魍魎は腐臭を発していた。まさに魚の腐ったような匂いだ。何でも食べるネコトラであったが、さすがにこれを子猫に食べさせる気はしなかった。


 子猫は運転席から飛び降りると、また"ニャ~"と鳴いて北東を指さした。ネコトラは子猫が指さした方角を見ると納得したように頷いた。

 子猫はまた運転席に飛び乗り、ネコトラは北東へと走り出した。


 子猫が指さした方へ向かうと、森の木々が少しひらけた場所に出た。そこには人間のものと思われる頭蓋骨が山積みにされていた。



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