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旅立ち

 ナダ兄弟がどこかへ飛ばされたら、落雷は止んだ。きっと逆上していた ' 時を司る者 ' が我に返ったのだろう。


「ふぅ~~~、やっと雷がおさまったにゃ」


「ネコル、泣き止んだのか」

さっきまで号泣していた ' ネコ ' を見て、〈幼女〉朝顔が ' ネコ ' に話しかけた......のだが......


「吾輩の名前はネコルではない!」

「じゃあ、何なのだ?」

「教えないのにゃ!」

「教えない? めんどくさいヤツだな!」


 ' ネコ ' と朝顔がそんな会話をしているところ、ナダ兄弟と一緒にいた ' 人間では無い何か ' が所在無げにしていたのだが、朝顔が首から下げている赤い宝石に気がつくと ' 人間では無い何か ' は、赤い宝石の中へスっと入って行った。


「あ、' 滅びの石 ' に入ったにゃ!」

「これは ' 滅びの石 ' というのか?」

「そうにゃ。そんなことも知らにゃいのか?」

「あたいは、何も知らない」


 あたいは、何も知らない......〈幼女〉朝顔はそう思った。あたいは、本当に何も知らないんだ......


「ネコル、世界は広いな、あたいは知らないことだらけだ......」

「吾輩の名前はネコルではない!」


 すっころんでいたカモノハシは立ち上がると、大切にしているオレンジ色の石とスケートボードを拾いながら、朝顔達の方へ行き彼女の赤い宝石を羨ましそうに見た。


 ' ネコ ' はカモノハシのオレンジ色の石を見て「おお、それは ' 太陽の石 ' にゃ。懐かしいにゃあ」と言った。


「懐かしいってどういう意味だ? これは俺の石だからな!」

「まあ、いいにゃ。お前が持っているといいにゃ」


「それより、吾輩は荒地になってしまったこの地を再生することにするにゃ。カモノハシ、お前も手伝え!」

「な、何で俺が手伝わなきゃいけないんだよ!」

「いいから手伝うにゃ! カモノハシは土木作業のスキルがあるはずにゃ」

「お、俺......俺、土木作業......苦手なんだ......」


 野良のカモノハシは土木作業を得意とするのが普通なのである。そもそも生命型兵器としての量産型カモノハシは、塹壕を掘るなどの作業のために開発されたという経緯もある。


「まあ、いいにゃ。' ネコ界 ' には珍しい宝石もあるから、手伝えばあげるにゃ」

「宝石⁉」


 カモノハシは宝石と聞いて目を輝かせた。がぜんやる気が出たようであった。


「あの洋館に住むにゃ」


 そして、' ネコ ' はドメスティック・フラワーズと何か会話を交わし、洋館へと入って行った。


 洋館の窓からは紅スライムが不安そうに外を眺めていた。彼女はずっと家の中で怯えて身を隠していたのである。

 カモノハシは ' ネコ ' の後を追って洋館へと向かった。


「あいつらは、ここに住むのか......さて、あたいはどうするかな......」


 〈幼女〉朝顔はしばらく思案し、「そうだ、オートバイを探しに行こう」と思ったのであった。朝顔はひとり旅立つことにした。

 ひとり......いや正確には、石の中に入って行った ' 人間では無い何か ' と共にであるが......



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