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秘密組織の序列十位は自称器用貧乏  作者: 使い捨て系鉛玉
二章 勇者
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十一話 クラス転移しちゃいました

本編再開。

一人称視点ですが、初登場の人物からの視点ですのでそのつもりで。

 

 視点・とある女子高生


 これは、どうした事だろう。

 石造りの広い空間に、足元の幾何学模様。

 そして、眼前にはコスプレをした六人の人間。


 そんな異常な空間に私たちは立っていた。

 先生含む、先程教室に居た全員が私と同じ幾何学模様の上に立っている。


「ようこそおいで下さいました。勇者様」


 一人、途轍もなく美しい少女が前に出て私達にそう告げるのを聞きながら、思わずどうしてこうなったのだろうかと直前の出来事を思い返していた。


 ◇


 その日は、決して特別でもなんでもなかった。

 いつも通りの、特筆すべき事もない日常。


 ーーその筈だった。



 私、十六夜(いざよい) 来ノ見(このみ)は普通の、というには少々諸事情を抱えた女子高生だ。

 父親が世界でも有数の大企業の会長を務めており、母方の実家が槍道の道場を営んでいる。


 そんな特殊な環境で育った為か現在槍道四段だったり、誘拐に巻き込まれる事が多かったりとそれなりに普通から離れた人生を送ってきた。

 最も槍道を身につけたのはここ四年だが。


 そんな私は、学校でもそれなりに面倒な生活を送っている。

 例えば休み時間の光景はーーー


「十六夜さん、お昼ご一緒しても良いかな?」

「放課後予定空いてる?ちょっと話があるんだけど」

「今度の休日遊びに行きませんか?

 その、ふ、二人っきりで!」


 ーーーいつも大体こんな感じ。

 私の外見は男子に受けが良いらしく、何というかこう、とにかくモテる。

 友人からは羨まれるが、興味もない人間に好意を持たれるなどそこまで利点でもない。

 むしろ、こんな風に休み時間が潰れたり友人と落ち着いて会話できなかったりと面倒事が付き纏ってくるので損でしかないのだ。

 友人に聞いたところ、ファンクラブなる物まであるらしいが、そんなもの許可した覚えがないし、はっきり言って迷惑だ。ストーカーなんて死ねば良いのに。


 もっと落ち着いた日々を送れないものかと頭を悩ます今日この頃だ。


「やあ十六夜さん?」


 ほらまた来た。しかも一番厄介なのが。


「……何?」

「今度の日曜買い物に付き合ってくれない?」


 先程別の男子を断ったばかりだと言うのにしれっと声をかけてくるこの男は、照倉(てらくら) (みち)という……らしい。


 らしい、というのは友達から聞いた話だからだ。

 この男はどうやら女子の間で人気が高いらしく、かなり有名なのだとか。

 なんでも困っている女子が居ればすぐに駆けつけ、自分を顧みずに助けてくれる正義感が強い人物で、この間も不良のグループを追い払ってしまった……らしい。

 どれもこれも聞いた話なので真実はわからない。

 一番しつこい上に嫌悪感が強いために覚えた。

 仕方がないだろう。下心が透けて見えるのだから。

 むしろ自信過剰な分他の男子より不快指数が高い。

 もちろん買い物に付き合うなど冗談ではないのでやんわりと断る。


「ごめんなさい。その日は空いてないの。

 他の人を誘って上げて。瀬奈ちゃんとか喜ぶかも」


 さり気なく瀬奈、こいつの話をよくする友達を生贄に捧げるのがポイントだ。

 しかし別に後半が嘘という訳ではない。

 彼女ならばきっと喜ぶ事だろう。


「そっか。じゃあいつ予定空いてる?」


 思わず頰が引きつりそうになるのを必死に堪える。


「……さあ?また確認しておくね」


 なんでそんな個人情報を公開しなければならないんだ。

 例え予定が空いててもお前になど会いたくない。

 女子高生らしくはないが、槍を振っている方が断然良い。

 遊びに行くならお一人でどうぞ。



 やっと会話が終了し、追い払う事が叶う。

 心に余裕が生まれると、ふと視線が窓際の最後列を向いた。

 そこには暗い表情をした少女。

 顔立ちはかなり可愛いが、暗い空気を漂わせていて誰も寄り付かない。

 そんな彼女を見た私は、来てたんだ。と、そんなことを思ってしまった。

 というのも、彼女、未記(みしるし)風雨花(ふうか)は先日まで不登校だった。

 四年前、姉と兄が行方不明になって以来ずっと引きこもっていたのだ。

 実は昔、私は彼女やその兄姉とも仲が良く、私を交えてよく四人で遊んだ。

 その為彼女が少しでも立ち直れたというのならば未だ友人のつもりでいる私としてもかなり嬉しい。

 見ている限りまだ辛そうではあるが、学校に来れたのならば一歩前進だろう。


「……ぁ」

「ーー!」


 まずい、目が合った。

 と思ったが、直ぐに逸らされ、少し気まずくなっただけだった。


 ◇


 その後気まずさから逃げるように教室を出た。

 現在、ファンクラブとかいうストーカー供を撒く為にあまり人気のない廊下を歩いている。

 すると、ふと前方の角から怒声が聞こえて来た。

 その廊下を曲がると、目に飛び込んで来たのはイジメの光景だった。


「ッに口答えしてんだよ!」


 イジメているのは、二つ上の上級生三人。

 被害者は、なんと同じクラスの男子だった。

 名前は……知らないが、いつも物静かな男子生徒。

 そんな彼が寄ってたかって暴力を振るわれていた。


「返すっつってんだろ!?」

「たかが五万だろうが!早く出しやがれ!」

「うぅ……」


 胸ぐらを掴まれ、壁に叩きつけられる男子生徒。

 その拍子に財布がポケットから落ちた。


「……わお」


 こんなテンプレートなカツアゲは初めて見た。

 最初は演劇か何かかと思ってしまったが、殴った時の音がヤバイから多分本物のカツアゲだと思う。

 見ていて笑いそうになったが、イジメられている方があまり冗談ではない状況になっている。

 迷わず私は前へと足を踏み出していた。

 流石に人が痙攣しているのを見れば割り込まない訳にも行かないだろう。

 それに、私はイジメが嫌いだ。嫌なことを思い出してしまう。


「そこまでにしておきなさい」


 ピタリ、と暴言や暴力が止み、全員の視線がこちらに集まる。

 上級生三人の視線は明らかな睥睨。

 しかし、その内一人、私の顔を見た途端表情が変わった。


「あ?」「あ、ヤベ」「なんだテメ……」

「待て待て。もう行こうぜ」「……ハア?」

「良いから」


 そんな会話を挟みつつ、一人が引っ張るようにして他ニ人も退散して行った。穏便に済んで良かった。


「……」

「……」


 騒音の原因が立ち去り、場に沈黙が降りる。

 そこでふと、立ち上がる事も出来ず倒れている男子生徒と目が合った。

 少し気まずさを覚えるが、彼が怪我人であったことを思い出す。

 歩けなさそうだったのでお姫様抱っこのように担ぎ上げながら、急いで保健室まで運んだ。

 先生が居なかったが、別に消毒液や包帯くらい勝手に使っても問題ないだろう。

 処置を済ませると、ベッドに寝かしておいた。


 ◇


 と、そんなこんなで授業も終え、ホームルーム。

 その頃には先程いじめられていた男子も教室に戻ってきていた。

 ホームルーム中かなり視線を感じたが、話を蒸し返されるのは面倒なので見つめ返したりはしなかった。


 担任が教室に入ってきて、連絡事項が告げられる。

 それを適当に聞き流しながら、今日を無事終えたことに安堵の息をこぼす。


 ここ最近どうもトラブル体質だ。

 教室では男子に囲まれ、廊下に出ればカツアゲの現場に遭遇。

 そういえば彼も、その姉もよくよく厄介に巻き込まれていたな。と、昔行方不明になった友人を思い出す。

 未記風雨花の兄と姉のことだ。

 彼ら姉弟はとにかく厄介ごとに巻き込まれていた。

 小学校では校内に侵入した不審者とばったり遭遇してナイフ持った大人と鬼ごっこしてたり、ヤクザの抗争に家族ぐるみで巻き込まれたり、私の誘拐計画に巻き込まれて一緒に布袋に詰め込まれたり……最後のやつ私の所為だった。

 と、数えればキリがない程の事件の渦中に居た。

 しかしそんな彼とその姉は数年前行方知れずになった。

 姉の方が五年前に、そしてその一年後に彼も消えた。

 それからかれこれおよそ四年。


「……もう、そんなに経つのかぁ」


 また、厄介ごとに巻き込まれているのだろうか。

 きっと彼らのことだから死んではいないのだろうが、だからこそ心配だ。


「ーーミ。コノミ!」


 隣からの声で現実に引き戻される。

 声の方を向くと、そこには心配そうに私の顔を覗き込む親友の姿。

 彼女は沙汰刃(さたのは) 瀬奈(せな)

 あの不快な男子の話をよくする友人だ。


「ごめんセナ。なんだっけ?」

「いや別に何も言ってないんだけど、それより大丈夫?

 最近ボーッとしてることが多いよ?」

「そう、かな……」

「そうだよ」


 どうやら最近悩み事が増えた所為か上の空である事が多いらしい。


「なにか悩み事?」

「ちょっと男子どもが、ね」

「おお? モテ自慢かこの〜!」

「じゃあセナがそのファンクラブとやらに追い回されてみる?」

「あ、それは良いや」


 チッ。というかセナにも充分魅力があると思うのだが。

 背は低く、顔立ちも美しいというよりは可愛らしさがあり、性格も明るい。これだけ条件が揃えばモテてもおかしくない。

 彼女にはファンクラブとやらも存在しないのだろうか?


「ねえコノミン?」

「なに? またあの……照倉くんの話?」

「違うよ〜。というかいい加減名前覚えなよ」


 担任の話も聞かずに他愛もない会話を広げる。

 ありふれた日常。

 面倒な事の方が多いけど、今みたいに楽しい時間もあって、なんだかんだ続いて欲しいと思える。


 けれど。


 そんな思いを嘲笑うように。


 突如、教室が白い光に包まれた。

勇者編始まります。

戦闘描写も一章よりは増える予定です。


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