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秘密組織の序列十位は自称器用貧乏  作者: 使い捨て系鉛玉
一部 厄介事
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第十話 ミスターマイスター

本日2つ目の投稿です。

これの前にもう一つ、第九話が投稿されていますのでご注意下さい。

……早く一段落つけたかったんです。

 

 ・ハルカ視点


 義姉貴やノイから引き止められるのを全力で振り切り、寮に着いた頃には夜もかなり遅くなっていた。


「勇者召喚が発動されるまで後一時間か」


 時間を意識するとなんとなくそんな事を思った。

 召喚される勇者はリマやネム、テオとその他ごく一部で対応するらしい。

 国王やその他の重鎮には知らせていないのだとか。

 義姉貴曰くお堅い騎士であるエルさんまでそれを了承したのだから驚きだ。ネムを生贄にしようとした上層部にあの人もよっぽど腹が立ったらしい。

 上手くいくことを祈りながらも、もう関係ない事だと肩に力を抜く。


 寮に着くと、裏手から自分の部屋の窓までこっそりと登る。泥棒のようだと自分でも思ったが仕方ない。

 この時間に外を出ていた事がバレたら、流石に怒られるだろう。それだけならばまだ良いが、何をしていたのか質問されては困る。

 ヒュノから許可を得ていたとしても校則違反は校則違反だ。消灯点呼で居ない事がバレないようわざわざ部屋の前に魔術で罠を張ったりまでしておいた。

 序列十一位(シキ)に教えてもらった認識を阻害する忍術の応用版だ。

 流石あいつの術というべきか、寮内の音を探る限りでは誰も俺が居ない事に気付いた様子は無かった。


 そんなこんなで無事部屋に帰る事が出来た。

 ……の、だが。


「ちょっと失礼するよー?」


 一息つく間もなく窓から何者かが侵入してきた。

 月明かりが逆光になって一瞬誰かわからなかったが、よく見るとその人物はーーーー


「何しに来た、リマ」


 ーーこれから勇者の対応をする筈の聖女様だった。



「勇者のお出迎え一緒にやろっ」

「断る。今すぐ帰れ」


 即断即決。

 これが平穏を守るための秘訣だとシャアラとの事で学んだ。


「またエルさん呼ぶぞ?」


 そう脅すと、リマは勝ち誇ったような笑みを浮かべる。


「ふふん。残念でしたー。

 こんな時に抜け出せる訳ないじゃん。ちゃんとエルからは許可もらってるよ。

 むしろエルの方から『勇者と意思の疎通が取れなかった時の為に【聖衛部隊】の隊長を揃えた方が良い』って言われたんだよ」

「え"……」


 エルさん……勘弁してください。


 聖衛部隊というのは、リマの護衛任務の際に共に護衛をしていた聖教の騎士隊の事だ。

 とある事件において死闘を繰り広げながらもリマを無傷で目的地まで送り届けた事から巷で一時期話題になり、勝手にそう呼ばれる事になった。

 そこまでならただの伝説だ。俺も別に構わない。

 問題は騎士隊の方々が満更でもない事だ。

 その後、騎士隊の中でもどんどん話が広がっていって、エルさんと、テレイルって言う本来その騎士隊の隊長のイケメンと、何故か俺が部隊を纏めているなんて尾ひれまでついてしまったのだ。

 テレイルの奴は良い。

 エルさんは元々王国の騎士だ。国の命で聖女の護衛と監視を務めている。

 だが、まだ騎士である分良い。

 俺の場合、あの時仮面つけて変装していた所謂怪しい奴だったはずなんだ。

 現れた邪竜相手にしても騎士の人達が追い詰めたところを良いとこ取りしただけ。

 治療の神聖術を掛けて助からなかった騎士も居る。

 だと言うのに何時の間にかその伝説では黒マントの仮面男が一対一で邪竜を倒してしまったみたいに噂が一人歩きしていて、話を聞くたびに悶死しそうになる。


 そして今回、その三人をエルさん自ら集まるべきだなんて言ったらしい。

 いや、リマの安全を考えるなら確かに正しい。どうせテオの奴が居るとしても居ないより良い。

 だが、そこじゃないんだ。

 そんな勝手に呼ばれてるモン公認しないで欲しい。


「いやあもしもの時は期待してるよ?

『ミスターマイスター』さん?」

「やめろ」


 厨二病全盛期の時にセンス全開で作った名前を今呼ばないでくれ。


 ◇


 結局なんだかんだで行く事になってしまった。

 まだ日が変わってないから本日三度目の召喚の間。

 一回目は宮廷魔導師として。二回目は普通に俺として。

 そして今回は『ミスターマイスター』として目元に星のマークが描かれた白い仮面を着け、全身を黒マントで覆いながらリマの護衛に訪れている。

 この場にはリマ、テオ、ネム、エルさんと、もう一人金髪の騎士が居た。この最後の奴がテレイル。

 相変わらずエルさんにも劣らないイケメンだ。


 ……この中で俺一人だけ浮いてない?顔面偏差値的な意味で。

 いや、仮面着けてるんだけどさ。


 そんなくだらない事を考えている俺に近づく者が一人。


「やあ、君も来たんだね」


 テオだった。

 こいつは、というかこの場ではテレイル以外全員俺の正体を知っている。


「こんばんは。剣聖様。

 エルさんにお呼びがかかったもので、聖女様をお守りする為に馳せ参じました」


 あ、笑うな。

 成り切らないと任務の時ボロが出るんだよ。

 リマの奴も『聖女様』で変な反応しなくて良い。


「ところで剣聖様。

 アリス様とはどのようになりましたか?」


 その言葉に意表を突かれたように目を見開くテオ。

 さっきの仕返しだ。


「……うん。ちゃんと、騎士になる事が出来たよ」


 恥ずかしそうに途切れ途切れに話すテオ。

 どうやら上手く行ったらしい。


「それはそれは、おめでとうございます。

 私の方からもお祝い申し上げます」


 このままくっついてくれるとおもしろ……もとい、友人としては喜ばしい。末永く爆発しろ。


「やっぱりあなたからの差し金でしたか」


 突然、背後からそんな声が掛かった。

 振り返ると、そこには上質なドレスを身に纏った金髪の美少女。


「これはこれはアリス様。

 ご機嫌麗しゅうございます」


 こいつがネムだ。

 アリスとは王女である事を示す名の一つで、親から付けられた名前はネムリアだ。

 だから親しい者はネムと呼んでいる。

 そんな第三王女様は何やら不満気な表情でこちらを見ていた。


「麗しいように見えますか?ちゃんと先程の質問に答えてください。

 テオが私に主従の誓いを申し出るなんて、あなたが何か言ったからなのでしょう?」


 うっわなんでバレた。

 このツンデレはこういう時まで勘が良いから困る。

 恋愛に関しては馬鹿みたいにポンコツなのに。


「いえいえまさか。私からは決して何も」


 嘘じゃない。()()()()何も言っていない。


「……チッ。じゃあハルカに会ったら伝えておいてください」

「内容をお伺いしましょう」

「……その、ありがとう」

「……! ……承りました」


 驚いた。まさかこいつからこんな言葉を貰うとは。お陰で反応が遅れてしまったじゃないか。

 まあ、お幸せに?



「ふははは。久しいなマイスター」


 げっ、こいつのこと忘れてた。

 声の方を向くと、そこには背中まで髪を伸ばした金髪の騎士。

 軽鎧を纏い、腰元に片刃の騎士剣を提げていて戦闘準備万端なこの男は、テレイル。

 聖教と呼ばれるかなり大規模な教えに従い悪を裁く聖騎士達の隊長格だ。


「ご無沙汰しておりますテレイル殿」

「それは重畳。ならば決闘を申し込みたい所だが、生憎今日は聖女様の護衛だ。

 それはまたの機会にして、今回は共に協力し、聖女様を無傷でお守りしよう」

「聖騎士隊の隊長たる貴方と決闘など、お戯れを。

 護衛の方はこちらからもよろしくお願いします」

「……フン。相変わらず自己評価の低い。

 邪竜を倒した貴殿ならば良い勝負になるだろうに」

「いえいえまさか」


 本当に面倒くさい。

 こいつは会うごとに決闘を申し込んでくる。俺がリマの護衛を務めて以来何が琴線に触れたのか気に入られてしまったのだ。今まではのらりくらりと躱して来たが、面倒くさいことに変わりない。

 あの時帝国兵五千相手に無双してたお前に、あの時邪竜にトドメを刺すくらいのことしか出来なかった俺が敵うわけないだろうに。


「それに、何度も申し上げるようで恐縮ですが、邪竜を倒したのは追い詰めた聖騎士達の手柄であって、私ではございません。

 私に出来たのは聖女様を聖堂まで無傷でお連れする事と、その後戦闘に加わった時には最早動く事も出来なかった邪竜の介錯だけ」

「……まあ良い。ともあれ今回はよろしく頼む」

「ええ。よろしく」


 握手を交わすと、テレイルはエルさんと並んでリマの側、護衛の配置に付いた。



 ◇


 そんなこんなで待つ事かれこれ数十分。

 日が変わるおよそ五分前になると、リマが皆に呼びかける。


「神託によりますと直に勇者様が現れます。

 皆様、お出迎えの準備を」


 式典のような口上だった。

 この場でリマが敬語で話す奴などテレイルくらいなのだが、恐らく儀式に近づける為だろう。

 良かったな義姉貴。あんたの言葉、神託だってさ。

 聖女様から神様認定されやがった。


 その場の全員がそれに従い、陣の方を向いて黙り込む。

 ちゃんと意図が伝わったのだろう。


 しばらくすると陣が淡く光り出した。

 先程国王達が試みた時よりも大きな光だった。


 光はどんどん強くなっていき、やがて目が開けられなくなる。

 パァッと、一瞬だけ、特に強く発光すると、その後次第に光は止んで行った。


 光が止んだのを確認し、ゆっくり目を開ける。

 すると陣の上には、人影が複数あった。


「ここ、どこだよ」

「何……ここ」


 人影の正体は三十人ほどの少年少女。

 全員が全員年若く、同じ服を身に纏い、そして何より、俺と同じ黒髪黒目をしていた。

 彼らは皆、呆然とした様子で突っ立っている。

 こちらも、リマでさえ勇者が複数居る事に驚いていたが、しかしその中で一番驚いていたのは俺だった。


「ま、さか……()()()……なのか?」


 なにせ、そいつらは、いつか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を身に纏っていたのだから。




メインは勇者召喚なのにタイトル……。

一応申し訳程度の伏線は張ってましたが、ハルカは日本人です。


中途半端ですが次回から数話程度閑話を挟みます。

他人視点のあの時とか、過去編ですね。


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