プロローグ
ゴミ捨て場の中に紛れ込んでいたのは、人だった。
ざあざあと振り続ける雨の夜道で視界が悪い中、街灯の光のお蔭でゴミ袋に凭れかかるように倒れている人影を発見できた。
「ちょっとあんた。こんなとこで寝とると風邪ひくよ?」
声をかけながら黒髪の女、望月優輝は人影に近づいてみる。
一応声をかけてみた優輝だが別に助けようとは思っていなかった。
見て見ぬふりは気が引けるが、だからと言って面倒事には巻き込まれたくない。
もしも相手がヤクザ系で変に絡まられるのは嫌だな、と思いながら優輝は腰をかがめて相手の様子を観察する。
無造作におろされた青髪。セーラー服を着ていると言うことは恐らく中、高校生辺りだろう。
ならヤクザではなく、不良娘と言ったところだろうか、とどうでも良いことを訂正しながら優輝は内ポケットからスマホを取り出す。
せめてもの情けで救急車を呼んで、さっさと帰ろうと思った優輝は、ふと弱々しくこちらを見上げた少女と目が合う。
前髪から覗くセピア色の目に、優輝は何故か感傷的な気分になってしまった。
優輝はそのまま、そのセピア色の瞳に魅了されてしまったかのように、少女の瞼が閉じるまでその場で立ち尽くしてしまった。
気を失ってしまった少女を見つめていた暫く優輝は取り出したスマホを内ポケットにしまいなおす。
「しょうがないな」
はあ、とため息混じりに呟いた優輝は自分より背が高い少女を軽々と片手で脇に抱えた後、遊園地内にある職場兼自宅のホテル『柳楽』へと帰宅するのであった。




