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太陽の国  作者: ラジオ
第二章 魔法学校編
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~アリサ、地下を訪れる~

 ここ太陽の国に夜は訪れない。天には常に偽太陽が浮いているからだ。太陽の民は誰も夜を知らず、夜を経験したこともない。一日中この王国には光が届いている――まるで太陽の国が世界の中心であることを示唆しているように。

 アリサは三か月という時間の中でようやくそんな生活に慣れ始めることができていた。人々が寝る時間になっても外は暗くならない。最初は木窓を閉じても微かに漏れ入る光が眩しく、なかなか眠ることができず頻繁に寝不足状態に陥った。

 しかし太陽の国とまで呼称されている割に、リーンの家にはきっちりとランプがいくつか常備されていた。一般家庭規模でまれに開くという宴会用のものだと思われた。七賢人の館を始め、貴族の家や高級店にも装飾として利用されているという。現在急ピッチで再建が進められている王宮にもあったらしい。

 アリサは午後の遅い時間、テラたちが眠って家が静寂に包まれる頃合を待ち、向かいのリーンの部屋に侵入して火の点いていないランプを拝借した。ふと、リーンの部屋の窓を押し開いて外を窺う。右方に路地、左方には広場が窺える。普段よりもやや日光が抑えられている感じだが、それ以上に人っ子一人いない不自然に閑静な風情が奇怪な光景に思えてならなかった。

 アリサは足音を忍ばせて階段を一階まで下りた。やはり窓や玄関のブラインドを下ろしていても、本来夜の時間であるとは思えないくらい光が勢いしたたかに漏れ入っている。まだ奇妙に感じてしまうほどにはこの国に順応できていなかった。

 今までアリサは地下室へ続く扉の存在を気にしなかったわけではなかった。テラやカイルに尋ねたことはあったが、テラにはカイルの部屋とだけ言われ、カイルにも自分の部屋とだけ言われてかわされていた。

 胸を躍らせながら、自然に顔に笑みを浮かべながらアリサは地下室へ続く扉の鍵穴に鍵を差し込む。ゆっくりと回したつもりだったが、予想外に大きな解錠音を立てた。扉も軋むような音を鳴らし、これではすっかり長年主の住んでいない幽霊屋敷のようだった。

 ランプに火を灯し、中央の机と左右の壁に備え付けられた書棚が闇の中から浮かび上がる。天井が低く、書物を保管するためのちょっとした小部屋といった趣がある。久しく使用されていないらしく、床は埃が薄く積もって灰白色にランプの火を照り返す。

 アリサは机の一つにランプを置き、空き巣よろしく書棚を物色し始めた。本はどれもカイルの旅先で記した手記を製本したもののようで、カイルが言ったような彼自身の秘密が書かれていそうなものは発見できない。次の左の真ん中の書棚に移ると、しばらくして一番下の段の書物の間からそれっぽい一枚きりの手記をついに見つけ出した。

 机に手記を置き、椅子に座ってランプを引き寄せて文面を読み始める。一枚の大きめの紙に細かい黒い文字がたくさん連なっている。明かりも心もとない中で苦心して一通り読み切ると、文面の後半に再び視線を落とした。

『以前調査対象の旅先の村で聞いた噂では、平均寿命が二十歳前後の一族があるという』

 何かが脳裏をよぎった気がした。

 ――懐かしくて大切な何かが……

 しかし思い出そうと懸命になった途端、タイミングを図ったように「異変」が起きた。あまりの激痛に身を悶え、髪を掻きむしり、獰猛な獣の威嚇のような低い呻き声を発する。

 数分後、ようやく落ち着いた時には身体中が熱くなり、汗までかいていた。本能的に、この手記はもう読んではいけないと感じた。

 ――どんどん酷くなってるような気がする……でも、きっとそれも今だけ。すぐに治るはず。カイルもそう言ったんだから。

 アリサは異変による全身の疲労感が、書物の内容を知りたがる自分の好奇心をすっかり圧倒していることを察した。書物を読み耽りたいと思う渇望は諦念をもって振り払い、火を消して大人しく地下室を後にした。


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