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浮城の黄昏  作者: ピーマンtタコ


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2/2

第一話─日米開戦─

大東亜共栄圏の存続、ソ連の早期崩壊、核兵器の不在…

我々が生きる世界とは異なるこの世界で、2014年のある日、事件は起こる。

これは後世にも語り継がれる、大きな出来事の幕開けとなるのであった──

詳しい歴史などは第零話を参照されたし。

「おぉ!あれ、長門じゃないですか!」

全権大使である新渡戸修の秘書官"利根川和彦"は、まるで子供のように機体の窓に顔を貼り付け、興奮しながら艦隊を見下ろしている。

現在新渡戸修ら全権団は政府専用機"富士"にて、ニイハウ島上空を通過中。

「写真写真…あった!」

利根川が携帯電話をパカリと開き、パシャリと長門を撮影する。

「それにしても、軍縮条約か…こちら側の提案だとは言え、なんだかなぁ…」

彼らが向かう目的は、ひとえに軍縮条約の締結にあった。

「まぁ、仕方あるまい。両陣営の衝突と崩壊を防ぐにはこれしかないのだ。」

「そういうもんですかね…」

利根川は生来の兵器愛好家であり、軍縮条約については少々不服なようだ。

利根川が再び窓に目をやると、また子供のように言葉を発する。

「マレー沖海戦では、確かあの長門が英戦艦を撃破したんですよね!」

「馬鹿者。マレー沖海戦で英戦艦を撃破したのは陸奥だ。長門の姉妹艦だ。」

「これはこれは…勉強になります!」

利根川は若さ故に素直な男である。だが、その素直さが新渡戸に気に入られる理由でもあった。

「ところで、マレー沖海戦では航空機も対潜哨戒や偵察に於いて多大な活躍をしたらしいじゃないですか。それに、パナマ運河も航空機で破壊したらしいですし。そしたら、航空機自体で軍艦を攻撃したらどうなるんですか?」

「そんなもの、艦隊による防空陣形で撃墜されるに決まっているだろう。軍部にはどうやら航空主兵論なるものを唱える者もいるらしいがな。彼らに聞けば或いは────」

そんな時、機内放送が流れる。

ザーザー…「本機は間もなく、ホノルル国際空港に着陸致します。」

「そういえば、以前、ホノルル国際空港がダニエル・K・イノウエ国際空港って名前に改称されると聞いたんですが、なぜですか?」

「それは確か、米国の上院議員だかに日系アメリカ人がいてだな。そして、そのイノウエ氏がハワイに多大な貢献をし、その功績を称えられ近々空港の名前になる…という感じの経緯だったはずだぞ。」

「へー!というか、前から思ってたんですけど新渡戸さんはやっぱあれなんですね。」

「ん?なんだ?返答によってはどちらの意味でも貴様の首が飛ぶが。」

「じ、冗談キツイですよ新渡戸さん、っぱなんでも無いです、」

「よろしい。」

無駄な豆知識ばかり蓄えているんですね。と言おうとしていた利根川は、首の皮1枚で繋がったのであった。


シュー…

富士や後続機が続々と着陸し、両名含む全権大使らはハワイに降り立つ。信任状奉呈式など、一連の通過儀礼もほどほどに、2人は雑談をしている。

「ついに、ですね。」

「あぁ。ここからは更に気合を入れていかねばな。」

スタスタスタ─── 

「やぁやぁ利根川クン。お久しゅうございます。」

突如どこからか小走りで現れたかと思えば、馴れ馴れしいのか敬っているのかわからない口調で話しかけてきたこの男は相澤山之助。新渡戸の同期であり、全権委員の一人である。

「これはこれは!相澤山─」

「反応せんで良い。こいつは反応すると口が加速するのだ。」

「久々に会った友人にその態度は酷いんじゃあ無いのかい?新渡戸議長?あぁ、そうそう。君の女房から伝言を預かっててね。『お土産はお洒落なハワイアンジュエリー?をよろしくね!』だそうだよ。ところで資金は持ってきたかい?無いなら私が貸してやっても─」

「ええい、やかましい。金くらい自分で持っているわ。"ほわいあんじゆえりい"がなんだかは知らんが、一万円も持っているんだ。なんでも買えるだろう。」

「「ハ」ワイアンジュエリー、ね。君も全権委員なんだから、外国についてもっと知ったほうが良いと思うよ。それにしても、お金持ちだね!そんな持ってて大丈夫かい?なんなら私めが預かっていても良いんですがいかがいたしましょう?」

「何を言うか。英語さえ話せればそれで良い。そして、なんだ。お前は金が欲しいのか。だが残念だったな。お前にくれてやるのはこれだけだ。」 

そういうと新渡戸は鞄からナニカを取り出し、相澤の手にポンと置いた。

「えぇっと、なんだい?これは。」

「昔、沼津だかどこだかの川で拾った石だ。凄いだろう?46cm砲弾のような形をしている。」

相澤は素直に要らないため、とりあえずポカンとしている利根川の手にそれを乗せた。

「それはそうと、早く行くぞ。土産も何もその後だ。」

合間の時間は思ったよりも短く、軍縮条約締結のため国連本部へと足早向かったのであった。


「おぉ!あれはコロラドですか!?」

利根川が再び声を上げる。

「ん?あぁ、おそらくはそうだな。米戦艦には詳しくないが…」

「いやぁ、米戦艦は日本のものとは随分と形が違いますが、これはこれで良いですね!」

日米の旧主力戦艦であり、軍拡の象徴であり、今は予備役である長門、コロラドは軍縮条約締結の願掛けとしてハワイに訪れている。

「この軍縮条約が無事に締結できることを祈るばかりだな。」

「あんまそういうこと言うと逆に締結できないフラグみたいじゃないですか。」

「フラグ…?旗のことか?すまない、最近の言葉はよく知らなくてな。」

「あぁ、フラグっていうのは映画とかの技法ですね。お決まりって感じです。まぁ、映画見ればなんとなくわかると思いますよ。」

「それは普段激務で中々外出できない私への当てつけか?」

「や、やだなぁ違いますよぉ」

「わかってるさ。」

新渡戸の口元が少しだけ緩んだ。


「So,we should……」

時間にして1時59分。互いに激しい攻防を繰り広げている妥結の真っ最中である。

──まずいな。このままでは纏まらんぞ…

新渡戸は内心焦っていた。

米国と英国が予想以上に引かず、かつこちらも引くわけにいかないため、泥沼に陥っていたためである。

──仕方あるまい。これからあと1時間。1時間米国が折れなければ、私が折れよう。屈辱的ではあるが、それが平和を作るのだ。

新渡戸は既に折れかけていた。長引く会議と折れない相手を見て、長年の経験がここは自らが折れるべきだと言っている…

ゴォォォォォォォォォォオオオン!!!!

突如として眠気を覚ますほどの轟音が建物内に響き渡り、その直後、蛍光灯が突如赤色に染まった。

何が起きているか理解するよりも前、続くように二回目の轟音が鳴り響いた。

どよめく群衆の中、新渡戸はふと上を見上げた。

───あれは…!

咄嗟に身を縮めた刹那、今度は頭上で轟音が鳴り響いた。その後、新渡戸は意識を失った…


目を覚ますとそこは長門艦内であった。軍医が言うには、相澤と利根川が自らが重傷を負いながらも、新渡戸を背負い車まで運んだらしい。

どうやら、初めから米国にハメられていたようだ。

国連本部が爆破され、両陣営ともに死傷者が多数出た。当然、新渡戸の知る者も多くが…

「………それで、利根川や相澤はどうなった。」

「……」

軍医は無言で俯き、首を横に振った。

「…そうか。」

新渡戸はただひと言そう言った。

しかし妙だ。米国側の奇襲なら、なぜこの長門を沈めない?なぜ自陣営にまで多数の犠牲者を出す…?

そんなことを新渡戸は考えていたが、とにかく今は安静にすべきだと軍医に言われ、新渡戸は哀しみと共に意識を夢へと落とした。


一方長門艦長である佐藤一は、選択をしなければならなかった。

───これは米国のテロなのか?いやしかし、それにしては妙だ。いや、だが現状そうとしか考えられない。一体どうすれば…

思考は巡るが結論は出てこず、頭を悩ませていた。

しかし、突如として観測員が声を上げる

「おい!あれ!コロラドがこっちに砲を向けようとしているぞ!」

見るとコロラドがこちらに主砲を旋回している。

「艦長!ご決断を!」

副長である田口正雄が決断を迫る。

そして遂に結論を出す。

「………これより、本艦は戦闘行動に移る。総員戦闘配置。目標、米戦艦コロラド。」

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