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第24話「半分が死んだ日」

「_____ぶですか___こえますか____」



誰かに、呼ばれている、気がする。



「____ますか!聞こえま_____てますか!」



ぼーっとする。何が起きてるのか分からない。

今どこにいるんだ。ここはどこだ。



「____すか!___の名前は言えま____」



うるさいなぁ。今すごく眠いから、マジで放っておいて欲しい。凄い眠いんです。



「___えますか?__びますから____」



あれ、俺何でこんな事になってんだっけ。


あー、そうだ。さっきまで夢を見てたんだ。


カッコよく青の騎士として、委員長を助けて敵を倒そうとしたけど、思ったより手強くて。



「___えますか?聞こえ____か?」



強化魔法めっちゃ使って必殺技当てたけど、それでも無理で。


それで自爆魔法を使ったんだ。



「___名前____ますか?___えますか?」



『魂裂穿斬』に両断されたら、回復する間もなく断面から存在ごと崩壊していく。


それを一体どうやって防いだのか。


あの女の能力が『奪う』だとして、どう扱えば防ぎ切れるのか。


回らない頭をフル回転させて考えた。


戦っていた時は恐らく、傷を負わせた箇所を『奪う』事で回復機能を[失わせる]、『青の纏炎』に対してはアイスピックで切りつけた炎を『奪う』事で効果の一部を[失わせる]などの運用をしていたはずだ。



『奪う』事で[失わせる]のが能力の本質なら。



最初の『青の速撃』がアイスピックで受け止められたのも、攻撃速度に対して『奪う』を行い、威力を[失わせる] ことで静止させたと考える事もできるか。


そこで気がついた。


強化魔法発動後の『青の速撃』は静止せずに受け流されたことを。


無条件で何でも『奪う』事が出来る能力なら、動きを完全に静止させた方が反撃しやすいだろうに、それをしなかった。


やらない理由が無いなら、出来なかったと考えるのが妥当だ。


シンプルに考えるなら『奪う』ものの質や威力などが容量を超える場合は奪えない、とか。


『魂裂穿斬』だってエネルギー波そのものに『奪う』を行って威力を[失わせる]事が出来れば確実に防げただろう。


それをしなかった。恐らく出来なかったんだ。

だから『奪う』対象を変えて、対応した。



相手自身が受けた損傷に対して『奪う』を行い、両断された結果そのものを[失わせる]。



これなら、真っ二つになった体が何事も無かったかのように元に戻っていたのも説明がつく。


『魂裂穿斬』による崩壊を上回れるほどの再生能力があるなら、いちいち攻撃を避けたり止めたりする意味もないだろう。


まぁただの予想に過ぎない。再生能力があることを悟らせないように振る舞っていた可能性も普通にあるし。それならお手上げだ。勝ち筋は無い。


『簒奪』に関してはよく分からない。急に使ってきた所を見るに、ダメージを負わされた攻撃を奪うとか、相手が弱りきっていれば使えるとか、舐められていた訳でないのなら、何かしら条件はあるんだろう。


よって、こちらが取るべき手段はもう限られている。



相手が攻撃自体に『奪う』を発動出来ないほどの高火力かつ、受けた損傷に『奪う』を使う余裕を持たせない為に一撃で消し飛ばす、この2つを相手に『簒奪』された青の騎士の剣で防がれないように行うしかない。



自爆を選んだのは自棄になった訳じゃない。


ロクに体も動かせない状態で相手に攻撃を命中させるには、結界内を破壊し尽くす特大の一撃が最適。


そんな高火力攻撃を行えば結局自分も巻き込まれる。なら命ある限り不発になるリスクも無い自爆がベスト。


『簒奪』は能力の制御権を奪うのだと言っていた。わざわざ瀕死の状態で放置している辺り、この発言も正しいと考えて良い。


つまりこちらが絶命した瞬間、相手は『魂裂穿斬』の使用が出来なくなる。


発動と同時に絶命する自爆であれば、結界の破壊手段を失った相手が攻撃から逃れる術はなくなり、確実に仕留められる。


まぁ他の高火力魔法でもほぼ問題は無かっただろうが、仮に発動にラグが生じれば、結界内を破壊し尽くす前に『魂裂穿斬』を使われて脱出される可能性も、僅かにあっただろう。


青の騎士の姿で自爆なんて、俺だって絶対やりたく無かったけど。

使える手段を放棄して敗北し、何も救えないなど、それこそランドに顔向け出来ない。


そもそも主人公ムーブをしたいという俺のしょうもないプライドのせいでこんな事態になったのだ。


最初から自分に防護魔法でも使って結界内を爆撃しまくれば勝てる戦いだった。


舐めプしてた訳じゃない。正々堂々戦いたかっただけだ。

こんな自分でも真っ向勝負が出来るんだって、夢の中くらい悪を正面から打ち倒せるんだって、証明したかった。


その結果が自爆だ。

弱いくせに、何の努力もしてきてないくせに、身の丈に合わない戦闘スタイルを取ったツケを支払わされた。


「だっせぇなぁ……」


「大丈夫ですか!?聞こえますか!?」


「でも、まだ…これから…」


「自分の名前は分かりますか!?」


「努力するのに…遅いとか…ないらしいし…」


「意識レベル低下。血圧もやや低いです」



視界がぼんやりと、開けていく。

音が聞こえてくるな。サイレンみたいな音。


目覚まし時計?いやでもこんな音じゃ無かったような。


「聞こえますか?お名前分かりますか?」


あれ、何で寝てるんだっけ。

今日は普通に学校に登校して…


「……あぁ!倒れたんだ、え、何これ…」


「あ!起き上がらないでください!横になったままで!じっとしていてください!」


知らない天井。

いや本当に見た事ないタイプの天井。

強いて言うなら、コックピットとかに近い。


「聞こえますか?お名前と生年月日、答えられますか?」


「はい…天童達志…2008年…6月13日…です」



どうやら俺は学校で倒れた後、救急搬送されたらしい。


救急車を呼ぶほどか?とは思ったが、最近学生が授業中に意識を失ってそのまま死亡、みたいな事案が発生したとニュースでやっていた。

だから学校も敏感だったのだろう。


その後、病院に運ばれ診察を受けたものの、特に異常はなし。

倒れた時に打ったのか、頭部に軽い打撲が見られる程度だった。


そうこうしている内に母が病院へ到着。どうしたの!と聞かれたが、何と答えて良いか分からず、急に倒れたらしい、としか言えなかった。


失神してた時間が貧血とかにしては長いとか何とかで、後日また病院で診察を受けなければならないらしい。


頭を打っているから一応今日は安静にしておいた方が良いとの事で、そのまま学校を早退した。



「まさか、2日連続で人生初の遅刻と早退を経験する事になるとは。いやぁ何とも言えませんなぁ」


布団で仰向けになりながら、そうぼやく。


平日の真昼間に自室の天井を見るのは何だか懐かしい気分になる。


昼飯は家でうどんを食べた。病気の時の定番飯だ。まぁ今回は別に病気では無いんだけど。


折角だしゲームでもやってやろうと思ったが、帰宅してから徐々に頭が痛くなってきて断念。大人しく寝転んでいる、という訳だ。


「あ、あぁそうだ。一応今回のも夢日記に書いておこうかな」


何故だか今回の、委員長を助けろ!がテーマの明晰夢は、目覚めてからかなり時間が経ってもまだしっかり覚えている。


というか失神や気絶中に夢って見るもんなのか?


付き添ってくれた保健の先生によると、声をかけても不明瞭な応答しか返って来なかったらしい。

完全に意識を失ってたのは一瞬で、その後は寝ぼけてたのか?だから夢を見た?


気絶してから寝ると夢の記憶をしっかり覚えてられる、とか?


「流石に気絶してから寝るとか試せないし、やれたとしても体に負担かかりそうで気乗りしないから、検証は無理だな」


夢日記を書き始める。

頭が痛い。

横になってる間は少し痛みがマシになるが、やはり立ち上がると痛みが戻ってくる。


夢の中で結局、あの女は倒せたのだろうか。


発動者の半径500メートル以内を更地にする『極大自爆(デッドエンド・デイ)』。


それをあの密閉空間で直撃すれば流石に消し飛ぶだろう。詠唱完了前に自爆したから『魂裂穿斬』も発動できなかったはずだ。


何も見落としはないはず。相討ちには持ち込めただろう。


たかが夢の中とは言え勝ち負けは重要だ。異世界生活の参考にしなくてはならないから。


あと今回の戦いで分かった事がある。


「……アニメとかで見ただけの異能を、俺は扱いきれてない」


ゲームなどで体験した異能は、その仕様を理解し、紛いなりにも、ゲーム内のキャラクターを通して自分が習得したと言って良い。


しかしアニメの異能は違う。見ていただけ。努力して習得したのは登場人物たちだ。


まだ彼らが初心者だった時に習得したものは完全に再現出来ていると言えるだろうが、そうで無いものは、質は再現出来ても運用レベルに歴然とした差が生まれているように感じる。


要するに解像度の違いによるものだろう。


「ゲーム化した作品とかあったらやってみるか。そうすれば多少はマシになるかも…」


思えばアニメや漫画が原作のゲームは今まであまりやってきていなかった。別に避けていた訳では無いが、何となく触ってこなかったのだ。


「まだまだ成長の余地はあるか。試しに土日にゲーム屋にでも…」


行ってみようと思ったが、この頭痛が引かないと流石に無理か。ズキズキとガンガンの中間のような痛みが、頭を駆け回っている。


何とか夢日記を書き終えて、急いで布団に寝転がる。なかなか頭痛が消えていかない。くそ無理するんじゃなかった。あーしんどいくそくそ。


これ本当に大丈夫か?脳みそちょっと潰れたりしてないだろうな。


目を瞑るが今は昼だ。

視界が暗くなったと言っても、カーテン越しの陽光によってほんのりと明るさが残る。


何とか寝れるように、現在の教室の様子を思い浮かべる。

授業中に寝てるテラ。こっそり内職してるアキラ。空席の委員長。退屈な教科。


そして、教室内で布団を敷いて横になって寝ている自分を想像する。何ということだ。こんな事が許されて良いのか?


テラが先生に起きろ寝るなと怒られているのに、俺は何も注意されない。こんな事があって良いのか?



そんなくだらない事を考えていると、段々と夢の中に引き込まれていく。

寝付けない時は、ありえない情景を思い浮かべて、それにのめり込むと良い。


鼻が詰まって寝れない時とか、暑くて寝れない時とか、何となく寝付けない時はいつもそうしている。


そうすれば脳がそれを夢だと勘違いするのか、気がついたら寝ている事が多い。


今回もそれで行こう。この方法を使えば、頭痛くてもなんとか、寝れる、はず…





俺は今、教室の後ろで横になって寝ている。

気がついたら布団が消えてたのか、床が冷たい。


少し目を開ける。教室には誰もいない。体育とかやってるのか?


というか教室綺麗すぎないか?小学校の卒業式前の教室がこんな感じだったような。


「よかった。また会えて」


上から声が聞こえる。女子の声だ。

自分を覗き込む顔が1つ。見覚えは、ある。


「………え、レーザー??」


二度と再会出来ないと思っていた人物が、そこにはいた。

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