彼女は名探偵の映画も大好きで
1学期が修了し、俺達は夏休みへと突入する。
受験生である三年生は部活も終了し、ここからが受験本番になるのだが、俺が行く高校は国公立への大学進学は殆ど無い。
本当に数名が、特に理系のクラスの奴しか行かない。
あとは基本専門学校か、私大である。
賢くないことも相まって、進路先が殆ど決まっているのだ。
俺は勿論のこと、国公立に行ける頭は無い。
が、私大のランクの高い所を狙うつもりである。
姉にもらった教材をこなす夏休みを過ごした。
デートの日まで葉月に会えず、気が狂いそうになりながら。
それでも、夜には電話をしたりして過ごし、当日まで乗り切った。
「おはよー!」
「おはよう。それ、刺激的すぎる」
俺は待ち合わせ場所にやって来た葉月を見て、目を逸らした。
キャミソールのインナーの上から透け透けの薄い長袖シャツを着て、下は短パン。
足元はきちんとスニーカーを穿いている。
髪型は首元で左右対称に団子をしている。
「え、ダメだった?」
「ダメじゃないけど、刺激的すぎる。可愛いのは可愛い」
俺は述べる。
「ありがと」
葉月は、はにかみながら礼を言う。
「よし、行くか。電車乗ってたら丁度いいくらいに昼飯の時間になると思う」
「りょうかーい!電車久々だなー。いくらだっけ」
葉月はリュックから財布を取り出そうとする。
「切符は買ってる。往復券だから無くすなよ」
そう言って、俺は切符を渡す。
「え。だめだめ。何でもかんでも払っちゃだめ」
「切符だけだから、大丈夫」
俺は答える。
「……ほんとに?」
疑り深い目で見てくる葉月。
「何でもいいだろ。ほら、電車来るから行くぞ」
俺は葉月を促す。
時間通りの電車に乗り込むと、案外人が多いことに驚く。
クロスシートに腰を下ろし、葉月は窓側に座る。
「隆臣はロナンの中で誰が好き?」
葉月は早速話を振ってくる。
「んー。あの、黒の組織のベルモット好きかも」
「うわー。それ分かる!」
葉月は嬉しそうな声を上げる。
「あー、あと灰原好きだな」
「哀ちゃんいいよねー!」
「新一とかは好きじゃないのか?カッコいいだろ?」
「んー。まあ、普通?」
葉月は笑う。
「やっぱり赤井さんじゃない?ダンガム見てるからさ、作者のダンガム愛がロナンには詰まってるよね」
「なるほど。そういう見方か」
「でも、私もロナンからのダンガムだからさ、全然知らなかったんだけど、ダンガム見てからロナン見ると作者のダンガム好きがよく分かるよね」
本当にヲタクである。
「因みに、何の映画が好きなんだ?」
「当ててみてー」
「カウントダウンは人気だけど、違う気がするしなー」
俺は考える。
あの映画は最後にマスタングコンバーチブルでビルからビルに飛び移る。
「去年のチェイサーもよくなかったか?」
俺は尋ねる。
「あー、良かったね!」
「今年のロストシップも面白かったけどなー」
「あー。分かる。良かったね」
うんうん、と頷く葉月。
「あ、待てよ」
俺は思い出したことがあり、声を上げる。
「ホームズ好きって言ってたよな?」
「うん」
「じゃあ、ベイカー街か!」
「当たり〜!」
葉月はニコッとする。
そんなヲタクな会話をしながら、俺達は電車に揺られた。
電車を降りて、まずは腹ごしらえのオムライス屋に向かう。
「うわー!美味しそー!どれにしよっかなー」
葉月はメニューを見ながらウキウキしている。
「サイズも選べるよ。隆臣はどうする?」
「んー。俺、Mにするから葉月も食べるか?」
「嘘!ほんと!?じゃあ私、Sにして期間限定の和風オムライス食べる!」
「OK。食べたい味あるか?」
「普通のケチャップのやつ!」
「OK。じゃあ、そうしよう」
俺は決定すると、注文する。
「……何で、そんなに優しいの?」
注文を聞いた店員が去ってから、葉月は俺に尋ねてきた。
「そりゃ、葉月が好きだからだろ」
俺は答える。
「っ!急にそんなこと言うのやめてくれる?」
葉月は赤面する。
「で、でも我慢しすぎは良くないからね」
葉月は言う。
「分かってる分かってる。ケチャップのやつ、俺も好きだから問題ない」
俺は微笑んで答えた。
オムライスが運ばれてくると、「いただきます!」と言って2人で食べ始める。
「美味し〜!」
「確かに美味いな」
2人で互いのを食べ比べたりもする。
正直、葉月の方がたくさん食べた気がする。
「そんな細い体にそれだけよく入るな」
俺は感心した。
「よく言われるー!」
葉月はからっと笑う。
「よし、じゃあロナン展行くか」
「うんー!」
葉月は嬉しそうに答え、俺の手を握る。
「……」
俺は葉月を見る。
「え?だめ?いいでしょ?」
葉月は俺を見つめ返して言う。
「いや、ちょっと、照れくさいなと思っただけだ」
「可愛い」
葉月は俺にそう言う。
「うるさいわい」
俺の反応に、葉月はからからと笑いながら指を絡めてきた。
「いーい?」
葉月は尋ねる。
俺はぐいっと彼女の手を引っ張り、恋人繋ぎをした。
葉月は嬉しそうな顔をし、歩き始めた。
♢
「え、嘘。これも?」
葉月は驚いた顔で俺を見た後、少し不満げな顔をした。
俺がロナン展の入場料を事前に払っていたことに関して、葉月は驚いていた。
だが、すぐに怒った顔をする。
「折角来たんだから、怒らない。ほら行くぞ。写真撮るぞ」
キャラクターのパネルと共に写真撮影が出来る場所があるため、俺はそれに誘う。
「うー!お金は対等にしないと」
葉月は頬を少し膨らます。
「分かってる分かってる」
俺は葉月の頭を撫でて、促す。
彼女は仕方ないなーというような顔でパネルと並んだ。
「わー!こっち見て!隆臣、こっち!!」
葉月は指を差し、先に先にと進む。
「ほら。見て」
原画や名シーン、各映画の紹介、キャラ紹介など、たくさん面白いのが並んでいて、2人で興奮した。
そして、最後のグッズ売り場で2人で悶々とする。
「うわー、これも捨てがたいな。でも破産する…」
俺は呟く。
「このキーホルダーお揃いで買わない?」
葉月が提案する。
「そうだな。これは買うか。あとは…」
俺は文房具系を見る。
「シャーペンとクリアファイル欲しいよねー!」
「分かる。あぁぁ、選べねぇ」
俺は苦い顔をする。
欲しいやつがありすぎる。
「葉月、選んでくれ」
「えぇ!私が選んでいいの!?」
「頼む。予算5000円以内で!」
俺は欲しいキャラを告げ、後は葉月に任せる。
「じゃあ、私の選んで」
葉月はお返しとばかりに俺に頼む。
「えっ!まじか。分かった。予算は?」
「一緒で!じゃあ、出口で集合ね!!」
葉月は笑顔で言うと、さっさと1人で向かって行く。
「難しいこと言うなぁ…」
俺は苦笑いで呟きながら、息を吐く。
俺に女の子が喜ぶものなんて分かるだろうか。
「それは違うな」
女の子じゃなくて、葉月が喜ぶものを渡せばいいのだ。
それなら、何となく分かるかもしれない。
「よし」
俺はグッズを1つ手に取った。
皆さんはコナンの映画なら何がお好きですか⁇
私はベイカー街の亡霊です。
あと、漆黒の追跡者と天空の難破船、ゼロの執行人や黒鉄の魚影、隻眼の残像も好きです(*´-`)
ちょっと推理がある方が好きかも。
黒ずくめとの絡みがあるともっと好きかも。




