晩餐
「フレン様、ファリアス公爵夫妻がお越しになりました。」
今日の晩餐には、ファリアス公爵家を招待している。
ファリアス公爵夫妻は両親の友人で、ファリアス公爵夫妻の嫡男のクロムは友人だ。
そして、娘のリュエナには秘かに俺が想いを寄せている。
リュエナはクロム達の母上のルーナ様と同じ美しい銀髪で、小柄で守ってやりたくなるような可愛らしさが昔からあった。
今年で17歳のリュエナは学院を卒業する。
卒業後は社交界にもデビューする。
リュエナをエスコートしたいが断られないか不安だ。
すでに、リュエナは色んな貴族令息から声がかかっているが、どれも断っているとクロムが言っていたから。
自分もそうならないか不安だ。
どれも断っているとクロムが言っていたが。
晩餐の席につき、隣はリュエナで、もう隣はクロムだった。
「今夜は陛下もいないし、私達だけだから気楽にしましょう。」
母上がそう言うが、母上はいつも気楽でしょう。
ルーナ様はいつも物静かですよ。
「リュエナは、デビュダントはどなたと行くの?」
母上がいきなりズバリとリュエナに聞いた。
おい!空気を読め!
と言いたい。
俺が悩んでいることを、いきなり聞かないで欲しい。
「まだ決めていません。」
「お誘いは沢山あるのでしょう?」
「はい、ですが、その、お断りを致しまして。」
リュエナが困ったように言った。
「だったら、フレンと行ったらどう?」
ワインを吹き出しそうになった。
母上、あなたはデリカシーというものを知っていますか?
母上が言ったら、リュエナは嫌とは言えないでしょう。
リュエナを見ると、リュエナもこっちを見た。
頬を赤らめて可愛いが、断りにくいだろうな。
「あの、フレン様がお嫌でなければ…」
「では、私がエスコートを。」
いいのか!?
断れないだけじゃないのか!?
母上はまあ!良かったわ!とか言っているし!
父上もルーナ様もははっ、や、ふふっと笑っているし!
カイル様は無表情でわからん!
後で殺されないだろうか。
晩餐の後、父上達はカイル様と飲むと言って居なくなったので、リュエナに本当に良かったのか聞きに行くと、リュエナは嫌ではなかったらしい。
もし、嫌なら俺から母上に言おうと思っていたが。
「フレン様がご迷惑でなければ、すみませんがお願いします。」
「私は嫌ではないよ。」
「…あの、フレン様。デビュダントの前には卒業パーティーがあるのですが、」
「では、卒業パーティーも私がエスコートしても?」
「はい!」
この嬉しそうな笑顔は本当に嫌ではないのか!?
俺がエスコートするということは、周りはリュエナが結婚相手と思われるのだぞ。
いいのか!?
リュエナはファリアス公爵の娘だから、異を唱える者はいないが。
もしかして、他の令息を断っていたのは、俺を待っていたのかと期待しそうなんだが。
「必ず、迎えに行くよ。」
「はい、待ってます。」
リュエナは本当に可愛い。
カイル様がルーナ様を溺愛する気持ちがなんとなくわかる気がしていた。




