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告解者  作者: カナタ


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3/12

第1話:遭遇






――バタンッ。




錆びついた蝶番が悲鳴を上げ、


ドアが吹き飛ぶ。




蹴り飛ばしたのは『先生』と呼ばれる男だった。




室内に充満していたのは、湿った埃と、隠しきれない鉄錆の臭い


そう、――死臭だ。




「……ハズレ、ね」




猟銃の銃口を下げ、少女・ルージュが吐き捨てる。




その体躯には不釣り合いな重火器が、彼女の腕の中で命の代償のように震えている。




「ルージュ、先を急ごう。ここに、既に『彼』の気配はない」




背後から声をかけたのは、


かつて彼女に狩猟術と「生き残るための冷徹さ」を叩き込んだ狩人の先生だ。




「そうね、先生。


……今度こそ。あの『狼』の首を引っこ抜いて、その汚れた喉に鉛弾をねじ込んでやる」




ルージュは振り返らない。




紅の頭巾が、彼女の表情を完璧に隠している。だが、その頭巾から覗く瞳の奥には、凍りついた地獄が渦巻いていた。




私たちは、その廃屋を後にした。




かつて、人々が普通に暮らし、笑い、祈っていた、この街。




グリムランド。


その日常の奥底に、今もなお、『狼』が潜んでいる。








あの日、森の道はひどく昏かった。




大好きだったおばあちゃんの元へ向かう、いつもの帰り道。




私は、あの男と出会ってしまった。




その男――「シエル」は、


聖者のような面影をしていた。




優しく微笑み、血の気のない私を案じて、手招きをした。




『おばあちゃん、帰ってくるまで俺が一緒に待ってあげるね?』




幼かった私は、その言葉を信じた。




森の冷気に震える私に、彼は温かいスープを差し出した。




『お腹、空いたでしょう?


コレ、作ったんだ。どうぞ、食べて』




鉄の味がするような、濃厚な肉のスープ。




「変わったお肉ね」




と無邪気に問う私に、彼は甘く囁いたのだ。




『ウフフ。でも美味しいでしょう?




君のおばあちゃん』







――その先の記憶は、ない。







覚えているのは、断片だけだ。


 柔らかな、声。


 温かい、湯気。


 優しい声で、囁かれた、何か。




 思い出そうとするたび、頭の奥が、鋭く痛む。




まるで、これ以上は、思い出すなと、


誰かに止められているかのように。






気がついた時、私は森の端に、ぼろきれのように投げ捨てられていた。




おばあちゃんは、もう、どこにもいなかった。




 全身を襲う痛みよりも、私の目を釘付けにしたのは――




家の壁に刻まれた、赤い文字だった。






『君は「気に入った」から生かしてあげるね?また遊ぼう』




 紅い頭巾の下で、私は唇を噛み締める。




 狼は今も、普通の人間の顔をしてどこかで腹を空かせている。





 けれど、もういい。




 いつか、必ず。




 あの喉笛に、この手で、狙いを定めてやるんだから。













お読みいただきありがとうございます!

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