エピローグ:それでも世界は、なんとなく回っていく
世界は、静かに日常へと戻っていた。
あれほど歪んでいた空間は嘘のように消え、王都には再び人の流れと喧騒が戻っている。市場には活気があり、子どもたちの笑い声が通りに響く。
クレアはその様子を見渡し、ようやく肩の力を抜いた。
「……本当に終わったんだな」
隣でダルムが豪快に笑う。
「終わったのう!いやはや、今回も派手じゃった!」
「“今回も”で済ませるな……」
だが否定はしない。実際、いつも通りだったのだから。
少し離れた場所で、ハルキは屋台を見ていた。
「この焼き物、なんか良さそうだな」
「今それか」
クレアのツッコミも、もはや弱い。
ハルキは一口食べる。
「うまい」
「それは良かったな」
「で、次どうする?」
あまりにも自然な問いだった。
クレアが顔をしかめる。
「次ってなんだ」
「いや、なんかまだありそうじゃん」
「終わったばかりだぞ!!」
だがダルムは笑う。
「ありそうじゃな!」
味方がひどい。
ハルキは空を見上げた。
どこまでも青く、何の歪みもない。
——はずだった。
(……いや)
ほんの一瞬。
風の流れが、わずかにズレた。
誰も気づかないレベルの違和感。
だがハルキだけは、それを拾う。
「……あ」
「どうした」
「なんでもない」
笑う。
ハルキは串をもう一本手に取った。
「まあいいか」
それで済ませる。
深く考えない。
だが確かに、また何かは起きる。
理由は簡単だ。
この世界は——
こいつがいる限り、
絶対に“普通”には終わらないから。
クレアがため息をつく。
ダルムが笑う。
ハルキが食べる。
それだけで、
世界は回っていく。
計画も、理屈もない。
ただ——
“なんとなく”で。
それでも不思議と、
全部うまくいく。
そんな世界が、
今日も続いていくのだった。




