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世界のほころび、その中心で
中心部は、これまでのどの場所とも違っていた。
地形は歪み、空間は捻れ、上下の感覚すら曖昧になる。視界の端で現実が揺らぎ、足元の感触が一歩ごとに変わる。
「……これはまずいな」
クレアの声は低い。軽口は消え、純粋な警戒だけが残っていた。
ダルムも笑みを引っ込める。
「今までのとは格が違うのう」
その中央に、“それ”はあった。
形を持たない存在。
ただ歪みそのものが意志を持ったかのように、脈打っている。
ハルキはじっと見ていた。
(これ、今までの全部の元か)
理解は一瞬だった。
だが同時に分かる。
(壊し方、雑にやると巻き込まれるな)
珍しく慎重である。
クレアが問う。
「どうする」
「……少し考える」
「お前が“考える”って言ったの初めて聞いたぞ」
それほど異常な状況だった。
歪みが動く。
空間が裂ける。
一歩遅れれば、存在ごと消し飛ぶ。
ダルムが踏み出す。
「時間はくれんぞ!」
「分かってる」
ハルキは目を閉じた。
情報が流れ込む。
構造、流れ、歪みの中心。
(ここだ)
目を開く。
「一点だけ、弱い」
「どこだ!」
「説明できない」
「今それ言うな!!」
だが時間はない。
ハルキは歩き出す。
歪みの中へ。
普通なら踏み込めない領域。
だが彼は迷わない。
理由は一つ。
(ここで終わらせる)
その瞬間——
空間が、彼を拒絶した。




