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三つ子と戻る日

お昼に帰ろうと思ったんだけど……うーん、困った。


「姉ちゃん、もう少しだけでも泊まっていけない?」


「あと1日だけ!お願いお姉ちゃん!」


桜輝と美春が離してくれない……。去年もこんな感じで、離してくれるまでかなりの時間がかかったのよね。どうしよう……電車の時間がなぁ……。去年もなんだかんだで乗るつもりの電車を逃して、結局その3本後の電車に乗ったのよね。


「私ももう少しいてあげたいんだけど……」


まだ少しと言えど宿題も残ってるし、五月雨三つ子と同じ日に帰ろうと、約束してしまったんだよなぁ。

こればっかりはこの2人のお願いでも……。お父さんとお母さんも、必死に2人をなだめようとしてくれてる。去年は結局8月の始めに帰ってくるって話で手打ちにしたけど。


「うーん……どうしよう……」


早くしないと電車の時間が本当に間に合わなくなってしまう。乗り遅れてしまうかもなぁ……。本当、どうしたもんか……。なんかこの2人が納得できるような……。8月の始めなんて今年と同じになってしまうし。そもそも来年は帰ってこれるかどうかも分からない。受験勉強で忙しいかもしれないし……。


「でも2人とも、お姉ちゃん困らせちゃダメでしょ?」


「でも……」


「1週間はあっという間だったんだもん……」


桜輝と美春は私の可愛い弟と妹だけど、私にも都合というものがあるっていうか、事情があるっていうか……。20日には登校日で提出物もあるし、それを仕上げなきゃいけないし。そりゃ帰っても10日以上あるけどなぁ。そう考えて玄関前で外の日差しに照らされ浮かんだ汗を拭くと、突然強い風が吹き、私のカンカン帽が飛ばされた。


「あっ!帽子がっ……!」


すると誰かが、地面に落ちた私の帽子を拾う。


「お嬢さん、帽子落としましたよ!」


「あ、秋くんっ!?て、紅葉くんと楓くん!」


秋くんが帽子を拾ってくれたみたいだ。すると紅葉くんと楓くんが私の腕を引く。


「悪いな2人とも」


「お姉さんは今日帰らないと色々大変なんだ」


そう言った後、秋くんが私にカンカン帽を乗せた。


「あら、紬のお友達?」


「えぇ、一応そんな感じです」


にっこりと楓くんが受け答えする。確かに距離は縮まったけど、友達って思っていいのかな……?


「じゃあ夏休み、お兄さん達家に遊びに来てくれる?」


美春がそう言う。喫茶店でかなり3人のことを気に入ったみたいだ。帰ってきたときも「店員のお兄さん3人がすごくかっこいい」って言ってたし。


「じゃあ、俺たちが次顔出してあげるから……ってことで良いですかね?紬ちゃんのお父さん、お母さん」


秋くんがそう尋ねると、2人は頷く。お父さんは少し複雑そうな顔をしてるけど、丸く収めるにはこうするしかないと判断したんだろうか……。それで丸く収まり前よりはよっぽど早く、あの2人から解放された。


「毎回あんな目に遭ってるのか」


「紬ちゃんが好きで仕方ないんだねぇ」


「素直で可愛いよね」


紅葉くん、楓くん、秋くんの順番で話す3人。でもなんで来てくれたんだろう?


「3人ともなんで来てくれたの?」


「一緒の日に帰るなら一緒に帰った方が楽しいでしょ」


私のことを気遣ってくれたってことかな?3人とも本当に優しいなぁ。友達って思ってくれたのも素直に嬉しいって思うし……。この3人には救われてばかりだ。

あ、もちろん未亜と文月にも感謝してもしきれないくらい感謝してる。


「それに俺たち、紬ちゃんといるの好きだしね」


秋くんは、何気なく発したつもりかもしれないけど、さすがにその言葉にはドキッとしてしまった。


「秋くん、私だから勘違いしないけど……他の子だったら勘違いしちゃうよ」


「……勘違い……してくれてもいいんだけどな」


何かボソッと言ったけど、その言葉は私に届かなかった。紅葉くんは秋くんに何とも言えない視線を向けてる。何を言ったのか聴こえなかったけど。


「ま、他の女と一緒にいるよりは楽しい…って俺も思う」


「あの紅兄が素直だ……」


「楓ぶっ飛ばすぞ」


やっぱり仲いいなぁ。そう思ってついクスッと、笑ってしまった。


「とにかく早く駅に行かないと間に合わないよ!」


楓くんの言葉に時計を確認すると、電車が着く8分ほど前。


「ヤバい!ゆっくり歩いてちゃ間に合わない!」


それに気づいた私達は走って駅に向かう。去年は夏休みはこんなにバタバタすることはなかったけど、なんでかな。今は、余裕を持ってないのに。


「急げー!」


「これ間に合うか!?」


「紬ちゃん!大丈夫?」


この3人といると、大変ではあるけど、こんな風に振り回されるのが煩わしいとか、嫌だとか……そんなこと思わない。


「うん!」


このときから気づくべきだったのかもしれない。私は3人に対して、家庭教師として教え子や友達以上の特別な感情を持ち始めていることに。



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