その十七 思い、思われ、相慕う ★結
(ユキが、もし……男だったら……なんて)
(ランさまが、もし……女なら……などと)
「「まさか、そんな……はぁ~~~……」」
溜め息が重なったことで、互いの漏らした声に、奇跡的に気付かなかったようだ。
初めて会った時は別室で、今は同じ居間で、全く違うようで似た考えをしている。
〝契約結婚〟によって成る不可思議な反転夫婦の内、先に動いたのは乱だった。
「……ゆ、ユキ、そろそろいいぞ、ありがとうっ」
「あっ、は、はい、ランさま。ええと、その……どうでしたか?」
「ん……ああっ、これは、すごいな! 冗談みたいに痛みも無い、お世辞抜きに、見事なものだ……いや、ユキの癒しの力は、大したものだ!」
「ほ、本当ですかっ? え、えへへ……少しでもランさまの役に立てたなら、拙は嬉しいですっ♡」
「少しでも、なんて。…………」
微笑む雪に、乱は軽く頭を掻いて、真剣な表情で向き合った。
「ユキ、己たちの出会いは突然で、〝契約結婚〟も唐突に過ぎただろうが……今となって、己はこれを運命だと思っている。己とユキは、出会うべくして出会い……今、こうして共に過ごしているんだ」
「! 運命……」
「あの三馬鹿兄弟には、ユキは福の神じゃないか、なんて言ったが……あながち、間違いじゃないかもな。ユキ、おまえと出会って、一緒に生きるようになって……己はさ、本当に今、幸せなんだ」
「っ、そんな、もったいないお言葉……せ、拙のほうこそ、幸せですっ。ランさまと、出会って……こうして、一緒にいられて……」
「はは、そうか。そっか……ユキも、そう思ってくれているなら、それ以上のことはない。……うん、本当に、さ」
今は楽な格好をしている乱が、清流の如き艶やかな黒髪を軽くかき分け、左眼で見つめる。
髪と肌に、着物まで含め、新雪の如くに純白の雪が、答えるように見つめ返した。
(ユキが男だったら、なんて……ばかなことを、思ったものだ)
(ランさまが女だったら、などと……関係ないではないですか)
立てば同じほどの背丈で、真っ直ぐに見つめ合う。
黒と白、自身の抱える秘密、あらゆるものが対照的な二人。
(性別の秘密なんて、どうでもいい。己は、ユキと)
(離れたくない、それだけです。拙は、ランさまと)
けれど、いや、だからこそ――まるで凹凸が噛み合うように――
((――ずっと、一緒にいたい――))
黒と白、相慕う二人の微笑みが、不思議なほど同時に重なった。
― 了 ―
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