十九話 誰も死なせない
冒険者は街のの西方向の門に集まり魔物の大群を見ていた。
「ついに戦闘だ!俺から言えることはただ一つ、全員生きて帰ってこい。報酬が払えないくなっちまわないようにな」
という言葉と同時に冒険者達も魔物との戦いを始めた。
「俺達も行くぞ!」
とノア達も草原に駆けていった。
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魔物達との戦いは劣勢の状況になっていた。
ノアのポーションのお陰で死人もけが人もいないが魔物共の動きがまるで統率されているかのように編成を組まれていた。
例えば、魔法使い達を裏から奇襲したりなどだ。
「何が起きてるんだ」
「ノアよ。もしかしたら、ゴブリン共の中にゴブリンキングやゴブリンクイーンが混ざっているかもしれん」
「なんだそれ?」
「キングとクイーンがいるとゴブリン共が統率を取り出すのじゃよ。他にはゴブリンの上位種が多く混ざっておるくらいかのぉ」
「大変だ。一回全員に下がってもらわないと!」
と駆け出した時レファが戦っている方で大きな音が聞こえた。
(急がなくちゃ)
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「何こいつ。強い」
レファは一人大きなゴブリンと戦い続けていた。
(みんな逃れたかな?)
そんな思考をしている暇もなく次の攻撃が来る。
『ウィンドスラッシュ』
と風の魔法を撃っても
(やっぱり効かないどうして)
そして、この隙を突かれついに攻撃をくらってしまった。
そのまま吹き飛ばされてレファは意識が朦朧とした。
奴が近づいてくる。
(私死んじゃうのかな?こんなことならノアともっと話しとくべきだったな⋯)
レファが諦めかけた時レファの一番信用できて今一番好きな人の声が聞こえた。
「レファー!」
(ノ、ア来ちゃ駄目。声がでない⋯)
ノアはレファに駆け寄りポーションをかけた。
だが、信じたくない現実がノアに突きつけられた。
(ポーションが効かない。嘘だ。)
ノアはとっさに鑑定を使った。
そこには不治の呪い(解呪不可)と書かれていた。
この時、ノアの中から暗くて黒い何かがこみ上げてきた。
「守るって言ったのに守れなかった⋯だけど死なせない!そして、お前も倒す」
と大きなゴブリンの方を見ていった。
その目はいつもの優しさはなく殺意で溢れかえっていた。
ノアがそう決意した時、脳内に機械音声のような声が響いた。
『条件を満たしました。魔法が一部が一時的に解放されます。同時に神々の叡智が一時的に一部解放されます』
そうして、ノアはコンマ0.1 の間に途方もない量の情報が脳に叩き込まれた。
(頭が痛いでも戦わなきゃ。でも、先に治療を)
と今一番効果が高い回復魔法を唱えた。
『リバイバル』
すると呪いを突き破りボロボロだった体が再生していく。
「次はお前だ」
とノアは敵を捕らえた。
そうして、再生と反対の魔法を放った。
『デストロイ』
死者をも再生する『リバイバル』
何もかもを破壊する『デストロイ』
相反する力を操れているのはノアだから、どんな魔法でも適性を持つ。
これらの力もノアの力の一端に過ぎない。
そんな、魔法を喰らったゴブリン。いや、ゴブリンエンペラーだったか。鑑定すぐ名前は出てきた。
そこに残ったのはゴブリンエンペラーの体の一部だけだった。
「これでしばらくは⋯」
ノアは力の強制解放に耐えかねて倒れた。
(代償かな⋯きっと頭を失ったゴブリンなんてすぐ討伐されるはずだ。これでよかったのかな)
ここで完全にノアの意識は途切れた。




