3話 神に愛された男(1)
作者です。3話まで来て頂きありがとうございます。
2話を越えて来て頂ける読者様は限りなく少ない事を実感しているので、とても嬉しいです。
さて、3話ではようやく起承転結の転の部分が入ってきます。多少は楽しめるはずです。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします。
ここは光陽王国、王都。おれは城の中を歩いていた。
横には一卵性双生児の弟、レンの姿もある。弟と言っても、姉のおれとは違い、物静かな性格な上に中性的な美人顔なだけあって、見た目からは胸の膨らみがないだけの高身長の女にしか見えないけど。
レンと2人で廊下を歩いていれば、同じ魔導騎士団所属の、桜咲柚葉の姿が前方に見えた。
アイボリーホワイトの色素がスゴく薄い髪色。ボブカットの髪型。176㎝あるレンより少し低いだけの高身長。そんな見慣れた姿をした柚葉は、廊下からバルコニーを見ている。
柚葉に、耳にした情報を持って話しかけた。
「しってるか? 聖が戻ってくるんだとさ」
「……なんで」
こちらに目を向けて静かにそう訊ねる柚葉に答える。
「聖自ら戻ることにしたんだってさ。どういう風の吹き回しかしらねぇけど」
「――香花でも見つけたとかだったらどうする?」
なぁ? 柚葉。そう口にして、柚葉より先の前方から現れる黒髪の男、通称黒咲悠。
その口調といい、笑みの含んだ表情といい、悠とは似ても似つかないその雰囲気に、判断するまでもなくおれは理解する。そいつが悠ではないことを。
「おまえの言葉には興味無いわ」
お嬢様言葉のなんとかですわ。ではない、なんとかだわ。と同じ響きで零す柚葉。
「つれねぇなぁ。まあ、そんなトコが好みなんだけどよ」
ククク、と笑う悠次。そんなそいつにおれは言う。
「あいかわらずなわけ? はやく悠に身体を返せ」
「オレも悠だぜ?」
「おまえは何度もいうけど悠次な。悠の次の人格なんだ。悠次がピッタリだろ?」
そう言えば、……殺ンのか? と殺気を放つ悠次。悠は多重人格ってわけ。
「また柚葉接近禁止が出んじゃない?」
そう言えば、チッと舌打ちをして悠次は殺気を消す。
あいかわらず柚葉好き過ぎで苦笑いしかないわ。ちなみに、これもお嬢様言葉ではなく、なんとかだわの方。
「てかおまえ、これからレンと任務じゃないわけ?」
おれは悠次にそう訊ねる。
「オレは男に興味はねぇ」
「見た目は胸のないだけの女だろ?」
「見た目だけはな」
嫌味ったらしくいう悠次に、性格も女でいけるぞ? とおれは返す。
「オレは柚葉一筋だっつの」
「どんだけ柚葉好きなわけ」
おれは呆れた様子でそう反応した。当の柚葉は知らぬ間に瞬間移動でどっかに行ってるけど。
「!! オレから逃げられると思うなよ!!」
それに気づいたそいつはそう言い残して、慌てた様子で来た道を走って戻り始めた。
「解ってると思うけど、悠に戻ってから行った方がいいぞ。任務」
その言葉にレンは小さく頷いた。
◇◇◇
「! ここが王都……」
あたしは聖くんの瞬間移動で聖くんと共に王都の内部にやってきた。正確には聖くんの王都での家の敷地内に。
そして、聖くんは首元に頭巾のついた白いマントを羽織っている。それは、あたしを助けてくれた時にも羽織っていたマントで。そのマントが微かな風によって揺れた。
敷地内を囲む柵より遠くを見上げれば、高い高い城壁が、街を、王都を囲んでいて。
そしてあたしは王都の中心部に顔を向ける。大きな城壁。その内側に高く広大な城が見える。その光景に、自国の王都を思い出す。
涙がまた滲みそうになって、ふるふると首を振った。
「……自分の国の城でも思い出した?」
聖くんの言葉に身長がとても高い聖くんを見上げた。すぐに顔を逸らして地面に視線を落とす。そして声を通した。
「……なんでわかったんですか……?」
「あんたと初めて会った王都とここは多少景色が似てるから」
その言葉に、私と会った王都……? とその言葉を繰り返して呟いた。あたしは聖くんを振り返る。そうすれば聖くんは頷いた。
「あんたはまだ小さくて赤子だったけど」
その言葉に、本当に聖くんはあたしを知っているから助けてくれたのだと理解する。
そうですか……と反応を示せば、聖くんは続けた。
「思い出して辛いならやっぱり家に戻る?」
あたしは首を振る。
「お願いしたのは私です……だから、大丈夫です」
「……無理しなくていいから。無理だったらすぐに言って。……わかった?」
あたしはその言葉に頷いて、ありがとうございます……と零した。
「荷物、置くよ」
その言葉に聖くんを振り返る。その後をついて行く。あたしは王都での聖くんの家の中に入った。
「行くよ」
「はい」
聖くんの言葉に返事をすれば、聖くんの家の中の景観から変化する。視界に両開きのドアが現れて映った。
「お。聖じゃん。はやいな。もう戻ってきたのか」
聞こえた声に、聖くんがノックしようとしていた手を止めて横を向く。通訳の魔法無しで聞こえた言葉だったから、なんて言われたのかは幼いあたしには分からない。とりあえず、あたしも声がした左横に顔を向けた。
見知った文字が目に入る。『I am boy !』の白い文字が黒いTシャツに書かれていた。その文字と、その人の髪の色が印象に残る。
明るい茶色、あたしはその色の名前を知らなかったけど、ラセットブラウンのその髪があたしの中で印象に残った。長さは肩より上、首元までのショート。前髪を七三で分けていて、右が3、左が7。左には1本の太いヘアピンをつけている女の人。
若い見た目から青年と定義される年齢だろうことは、幼いあたしには分からない。
とても背の高い聖くんより30㎝ほど低いことも、当時のあたしには予想すらできなかった。
ここまでお読み頂きありがとうございます。とても嬉しいです。
さて。今回はここに来て初めて視点を変えてみました。
この物語は『これは、愛と光を誓った混沌な者達の物語――』を念頭に置いているので、主人公のアメリアを中心に、混沌な者達も深く関わって来ます。そのため、ちょくちょくこれから視点も変わっていくと思います。
混沌な者達。何故そう呼ばれるのか。また、そこに含まれるのは誰なのか。それも物語が進む上で、分かっていくはずです。
それでは、今後とも、よろしくお願いいたします。




