5話 空の騎士(7)
◇◇◇
「属性魔法『絶対零度』――!!!」
冷気がデカブツに向かって集まる。――それは一瞬の出来事。習得するのが高難易度の氷の魔を受けた対象、デカブツは巨大な飾りモノになる。
「トドメだな――!!」
(空間魔法『対象分離』――!)
オレは魔具を取り出すために空間魔法をかけた。
最上位の難易度である二大巨頭の魔法が『空間魔法』と『時魔法』とか呼ばれる魔導だ。オレの手にかかれば最上位の難易度だろうが御茶の子さいさいってヤツだな!
(実際は時魔法を習得するまで、人生1回終わってなかった――)
(うるせぇ!! 黙ってろー!!)
この身体の本来の持ち主がツッコんでくるなり、オレは大声でそう叫ぶ。心の中でってヤツだ。
「――で、触っていいのかアレ」
オレは近づいてきたレンに確認する。魔物が取り込んだ魔具を素手でふつうに触っていいのか、疑問を投げた。
「……キミが分離して――ボクが弱体化したから……」
「問題ないってコトか」
レンが小さく頷く。
オレはそれを確認してから、魔具を空間魔法で手元に移動させた。
「……」
それは、ただの破片だった。オレにはそう見えた。
「コレで魔具とか、ホントかよっ」
側にいるレンも、視線をオレの手のひらのソレに向けている。
「おい。オレにはただの破片に見えるけどな。じっさい、あのデカブツの素だ。魔具で間違いないとしても、なんだ? コレ」
オレはそう口にしながら、レンの顔にソレを近づける。しばらく、レンは無表情のままソレを見つめる――が、何も言わない。
「おい。答えろよ! オマエはなんに見えるか聞いてんだよ!」
「……」
答えないレンにイラつくオレは、さらに続ける。
「だから! 魔物が魔具取り込むとかどうなってんだよ! オマケに! このただの破片が魔具とかふざけてんのか!」
「――……紫桔舞に……連絡してもらうのが、いいと思う」
「連絡? オレ様にしろってのか」
やっと口を開いたレンの言葉に、オレは顔を顰める。
「彼女に頼むべき……だと思う……」
「彼女? 誰だよ」
「……連絡役の、子……」
「……」
オレはそこで、ようやく連絡役の女の存在を思い出した。
◇◇◇
(――!)
それを――表現するのであれば、煌びやかで清らかな魔力と形容する他にない。懐かしい、父さんが慈しんだ人の魔力に寄りながらも、混在するのは、僕ら〈Believe in hope〉が対峙した魔族と似た闇の要素。
父さんの魔力を探り、父さんの居場所を見つけると、自然にその魔力を見つけることになった。
「団長」
僕が顔を向ければ、神田ルイという団員が続けた。
「ルーカスさまの部屋。佐倉さまがいるのはわかるんすけど」
「言いたいことなら解る」
「オレ、信じられないっす。こんなキレイな魔力と、こんなに強い魔力が混ざってるとか。……それも、この混ざってる魔力、どう感じても魔族の……」
「…………」
神田の言葉と同じことを、僕自身も思っていた。
突如として現れた少人数の魔族によって、甚大な被害を出したのは、隣国の麗樹。僕ら〈Believe in hope〉は、僕の父さん、ルーカスに従い麗樹の応援に派遣された。
そして僕らは生まれて初めて、伝説上の存在であった魔族という種族の強さを痛感した。
神田も、その時感じた魔力と似ていると思ったということが、神田の言葉から読み取れた。
「団長……」
「私が確認する。神田はゆっくり休め」
「あ、団長……!」
僕は、そのまま父さんの部屋に向かって歩き始めた。
父さんの部屋に近づいて行くと、徐々に強く感じるようになるのは、あの人に似た煌びやかな魔力。闇の魔力が混在するのは変わらない。神田の言葉が理解できる。
これでは、聖族と魔族の魔力を両方持っている。そうとしか思えないと。
あの人と交わした言葉を思い出す。父さんの家を訪れた香花様は、珍しく佐倉様を連れていなかった。それが、僕と父さんが別れを告げられた日だ。




