4話 王族(8)
「どこ行ってたわけ? 何してきたんだよ」
レイちゃんがすかさず訊ねると、聖くんは靴を脱ぎながら答える。
「別に。光輝に会って来ただけ」
「陛下に? 帰還のあいさつか?」
レイちゃんがそう訊き返せば、聖くんはダイニングに上がりながら答える。
「それと、アメリアの住む許可もらって来ただけ」
「とうぜんか。で? 礼離には何も言われなかったのか?」
レイちゃんがそう言えば、聖くんは眉を寄せる。
幼いあたしは知らなかったけど、礼離というのは王さまの側近のことだった。
聖くんがレイちゃんの言葉に答える。
「そんなわけないじゃん。相変わらずの盗み聞きだし」
「まあ、あいつならやるな」
レイちゃんはそう言うとあたしの方に顔を向ける。そして聖くんに顔を戻すと、レイちゃんはキッチンで手を洗う聖くんに言ったんだ。
「アメリアがおまえを心配してたことに対して何もないのか? 不安そうだったけど」
聖くんはその言葉に目を見開いてあたしをふり返った。開いた聖くんの瞼はすぐに通常の大きさに戻る。
そして聖くんはタオルで手を拭き、あたしの方に来るとしゃがんだ。聖くんはそのまま幼いあたしの右頬に大きな左手を添える。
「心配したんだ。不安だった?」
聖くんの言葉にあたしは頷く。
「ありがと。でも大丈夫。俺は誰にも負けないし……あんたの傍からもいなくならない。――だから安心して」
聖くんはそう言ってあたしの頬に添えた手を頭の上へと移動する。そしてよしよしと聖くんはあたしの頭を撫でて。
「ホントに、大丈夫だから」
そう、囁く。そして聖くんはあたしを引き寄せて抱き締める。
「心配させてごめん。でも大丈夫。安心して。俺はここにいるから」
あたしはぎゅっ、と聖くんの身体に小さな腕を回す。そして少し身体を離すと、聖くんの目を見ながら自分の気持ちを口にしたんだ。
「おねがいです……どこかにいくなら、私もいっしょにいきたいです。だから、いっしょにつれていってください……」
そう言えば、聖くんは目を一瞬見開いて。そのままあたしを見て口にするんだ。
「――解った。もう置いてどっかに行かない。……だから大丈夫」
「……ホントですか――?」
あたしが聖くんにそう言って訊き返せば、聖くんは頷く。そして聖くんはあたしを抱き上げて立つと、ダイニングにある階段を上って2階に行った。レイちゃんも2階にやって来る。
そこは廊下があって、部屋が分かれていた。聖くんは階段をさらに上って3階に行く。そこに広がるのは広い一室。高く、そして横に長い本棚。部屋の中心に置かれたダブルベッドと敷布団。
聖くんがあたしを下す。レイちゃんが階段を上ってくる。あたしが聖くんを見上げると、聖くんが口を開く。
「俺と寝るのとレイと寝るのどっちがいい? 1人で寝るでもいいけど、1人は不安でしょ?」
その言葉に、あたしはダブルベッドを見る。あたしは俯きながら聖くんのマントを握った。そして躊躇いながら零す。
「……きよくんじゃ、ダメですか……?」
あたしがそう口にすれば、聖くんは目を一瞬だけ見開く。そしてあたしの頭をポンポンと撫でた。
「決まりだな。じゃ、おれはまだ寝ないしゆっくりしてるわ」
そう言って、じゃーな。とレイちゃんは踵を返し階段を下りて行く。あたしが聖くんを見上げれば、聖くんは口を開いた。
「もう9時前だし寝るよ」
そう言って、聖くんはダブルベッドの側に行くとダブルベッドに腰を下ろす。
「おいで。寝るよ」
聖くんの言葉に、あたしもダブルベッドの元へ行く。すると、聖くんがあたしの幼い身体を持ち上げてダブルベッドに座らせてくれた。
あたしが横になると、聖くんがあたしに薄い掛け布団をかける。そして聖くんは立ち上がると、近くの本棚から本を何冊か取り出す。
「『孤独の巫女さま』、『空の騎士』、『異能の申し子』。どれを読んでほしい?」
聖くんがそう言って差し出したそれは子供向けの本、つまり絵本だった。




