1話 運命の邂逅(1)
あたしは、魔族の王族として生まれ落ちた。
優しい母さんと父さんに囲まれて、魔王の息子、従姉弟のベルゼと一緒に育つ。
あたしには秘密があった。母さんと父さんに決して人前で見せてはいけないと言われた、光の力。
魔族は闇の魔力を持つ。それに相反する力を持って、あたしは生まれたんだ。
誰にも見せはしなかった。けれど、その事が判明する。
忌み子として、あたしは処分される事になった。王族から光の魔力を持つ者が生まれた事が、表沙汰になる前に。
父さんと母さんは反発した。そして、自らを犠牲にしてあたしを逃がした。
それからは地獄だった。逃げて逃げて、魔族の追っ手に追われる日々を送った。
(母上――母上……!)
齢5歳のあたしは、母さんと別れた後、翼を纏って飛び続けた。母さんが追っ手を食い止めている間に遠くへ行かなければと、必死になって――
大気圧に当たりながら上空を幼いあたしは飛び続ける。
死なないで……! と、無事で、また会えますようにと必死に願いながら。
でも、願いも虚しく、母さんと再会することはなかった。
数日が経つ。森の茂みに隠れながら怯えて過ごす夜は、幼いあたしには恐怖でしかなかった。物音にもビクビクしながら過ごした。眠る事も、ままならない日々。
木の実を見つけて食べるだけで、まともな食事も出来ない。
癒しの魔法で体力などを回復させながら飛び続けても、睡眠も食事もまともに得られずにいたことで、小さな身体は限界だった。
膨大だった魔力すら、無くなりつつあったんだ。
(――!!)
「やっと見つけましたよ。――貴女に恨みはありませんが、王命を果たさせて頂きます」
魔力に気付いた時には、既に四方を囲まれていて。
すぐに光の魔法を使おうとした。しかし、魔力がほとんど残っていなかったあたしの魔法は不発に終わる。
(母上……父上……!)
恐怖が小さな身体を支配した。これから死ぬのだと理解して足の力が抜ける。座り込んで立てなかった。
闇の魔力が追っ手の剣に纏われて、黒い闇が具現化する。終わりが近付いて――
(なんで殺されなきゃいけないの……?)
そう思った。けど、恐怖で支配された身体は声すら出せない。
黒い闇を纏った剣を、追っ手は振り上げた。
(きられる……!)
反射的に目を瞑る。痛みが来るのだと身構えた。
――けれど、痛みは走らなかった。その代わり、身体を持ち上げられた感覚がして。
目を開ければ、視界が高くなっていて。誰かの片腕が、幼いあたしの身体を支えていた。
視界を上げれば、青年の顔がある。黒い癖毛。
――コレが、恩人となる人、佐倉聖との出逢いだった。




