4話 王族(7)
「それもそうだけど、本題は違う」
佐倉聖はそう口にする。それを聞いて私の名を呼び指示を出す王。
「礼離。人払いを」
「は。続きは30分後とする。速やかに去れ」
私の言葉を合図に臣下達が退散して行く。人が居なくなれば佐倉聖は私を見てから王に言うのだ。
「……悪いけど、光輝と2人で話したい」
「……礼離」
その王の言葉に、私は王を見て圧を送り、王……。と呟く。そして溜め息を零して私は玉座の間から出て行った。
外で待機する私は、部屋の中の声を拾う魔法を使用して話の内容を聞く。その内容に、私は眉を顰める事になるのだ。
◇◇◇
「あの……レイ、ちゃん……」
「ん。どうかしたわけ?」
湯船に浸かりながらあたしはレイちゃんに声をかける。2人きりの風呂の中であたしは質問を零す。
「きよくんとレイちゃんは、……友だちなんですか?」
そう零せば、目を丸くしてからフッと笑うとレイちゃんは答える。
「おれと聖は家族みたいなモンだな」
「かぞく……」
「聖は手のかかる兄貴みたいなモンだ」
「兄上……ですか」
家族みたいなモノだと言われたあたしは、母さんと父さんのことをまた思い出してしまって泣きそうになってしまう。
「悪い。……きっと辛い目にあったんだよな」
レイちゃんはそう口にすると、あたしの方に来てあたしを抱き締める。
「泣かせようと思って言ったんじゃないんだ。ごめんな」
その言葉にあたしはこくこくと頷いて。あたしを抱き締めてくれた優しいレイちゃんを困らせないために、涙を流さないように我慢する。
「だいじょうぶ。聖も言ってたけど、ここで暮らすならアメリアのことはおれも護るからな」
(──それがきっと、あの人への恩返しにもなるはずだ)
レイちゃんの思っていたことは、当然あたしには分からない。
「ありがとうございます……。レイちゃんもやさしいんですね?」
そうレイちゃんをふり返って言えば、レイちゃんはそうか? と口にする。
「当然のことをしてるだけだけどな」
「そうなんですか?」
「だれかが困ってたら助けるのは当然だろ? それが小さな子どもなら、なおさらな」
(──おれらはそうやって助けられて、ここにいるんだからな)
レイちゃんはそうやって自身の過去を回顧する。レイちゃんの過去についてあたしが知るのはまだまだ先の話だった。
「……だれかがこまってたら助けるのはとうぜん……」
あたしはレイちゃんの言葉を呟いて反芻する。
幼いあたしはその言葉に母さんのことを思い出してしまって、我慢していた涙が零れた。
『アメリア。──困っている人がいたら、花や鳥さんを助けるみたいに助けてあげようね。母様との約束』
『はい! 母上!』
返事をして、そして母さんに抱きつくあたし。
「母上……、……ッ」
ぽろぽろと涙が零れる。何を考えても、母さんと父さんに繋がってしまって。幼いあたしにはとても耐えられる現実じゃなかったんだ。
レイちゃんはその様子にあたしを強く抱き締める。
「すみません……レイちゃん、ごめんなさい……」
あたしは涙を我慢できなかったことを謝る。その間も涙は止まることを知らない。
「だいじょうぶ。おれは傍にいるからな。泣きたいだけ泣けばいい」
あたしはレイちゃんの言葉に、レイちゃんに抱きついて泣いたんだ。
風呂から上がって、髪を魔法で乾かして。そうしてあたしは洗面所から出てダイニングに行く。
(……え?)
あたしは心の中で声を漏らした。
「あがったぞー」
とレイちゃんが洗面所から出てくる。ん? とレイちゃんは口から零して。
「聖いねぇじゃん」
レイちゃんがダイニングと隣のリビングを目にして口にした。レイちゃんの言葉の通り、聖くんの姿がなかったんだ。
「気配もないしな。城にでも行ったか?」
レイちゃんがそう零す。
「おしろですか?」
そうレイちゃんに訊ねる幼いあたしは、聖くんの姿がないと分かった瞬間から胸が不安でいっぱいになる。
「たぶんな。……まあ、すぐ戻ってくるだろ」
レイちゃんはそう言うと隣のリビングに移動してソファに座る。
「聖が心配か?」
レイちゃんの言葉にあたしは小さく頷く。
「……だれにも。……だれにも、いなくなってほしくないんです」
あたしがそう零せば、アメリア……とレイちゃんはあたしの名前を口にする。
「よし、なら今から城でも行くか?」
レイちゃんはそう言ってソファから立ち上がった。
「待てるならいいけど、心配なんだろ?」
レイちゃんは立ち尽くすあたしの方に歩きながらそう言う。すると、玄関から鍵を開ける音がして。
あたしとレイちゃんは玄関の方を見る。
「帰ってきたみたいだな」
レイちゃんがそう言うと、玄関の扉が開いて。そこには聖くんがいた。