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不法侵入そして監視

太陽が地平線に沈み空は紫黒色に染まる。

街灯はポツポツと優しい橙色に灯り町を照らしている。


ここは町の大通り。

【満腹亭】を出て何件か店を回って町の情報をそれとなく聴き込む。

マスターの情報と聞き込みした話しに差異が無いことを確認するためだ。

彼のことを信用してないわけではないが万が一にも失敗しないために必要な一手間だ。

そんな手間をかけたことでさらに時間は過ぎた。


「ぐう〜〜〜〜」と盛大に腹が鳴る。


空腹を鎮めるため露店でホットドックを買って食べながら港を目指す。


『これも美味いな〜。ここの食文化はレベルが高い』


しかしこの異世界は中世ファンタジー風なのに街路灯があったりガスコンロのような調理器具があったりと、チグハグな世界観だ。どれもこれも動力は魔力だからファンタジーぽいのだが。


そんなこと考えている間に港に着く。


港には何隻も船が停泊している。

海は空の闇を映し黒く波も穏やかでとても静かだ。大通りと違って人影もない。

3m程の白色の塔に寄りかかり道具箱を漁る。


『ジッボォ』

ライターを灯し、口に咥えたタバコに火を点ける。

タバコを思いっきり吸う。メンソールよりさらに爽快感のある風味が肺に広がる。


「ふぅ〜〜〜」


気持ちよく白煙を吐く。


『あぁぁ、心落ち着くわ〜。こんな堂々と吸えるなんて異世界ライフも良いもんだ』


現世では分煙だ禁煙だと肩身の狭い思いをしてきたからな。


【満腹亭】にタバコが売ってて良かった。

ライターも魔力を使って火を点ける物で、タバコを含めあの大錬金術師の製作らしい。


ちなみにライターは異世界では不人気で「魔力使うなら魔法で火を出すわ!」ってクレームがついたらしい。

だが、こういうギミック(ライター)で火を点けるのがカッコいいと思うだが、異世界の人には理解出来ないらしい。


満腹亭に在庫が有り余ってるので誰でもいいから買ってやってください。

と、さりげなく宣伝してみる。



『港でタバコを吸って佇む俺ってイケてるじゃないか⁉︎』

ふと自分に酔った俺は、自身の姿がどれだけ格好良いのか確認したくなった。



「ゴォォーーン、ゴォォーーン」


不意に寄りかかっていた塔の上から鐘の音が響く。

俺の思いを全否定する様に鐘が煩いくらい鳴る。


「ペッ」とタバコを捨て、足で火を消す。


「うっさいな。コイツ!」


苛立つ気持ちを込め塔を蹴り上げる。


「バキッ」


塔に軽くヒビが入り、驚いたことで冷静になる俺。


そうだ……、俺は格好をつけるために港に来たわけじゃあないんだ。

情報によると港の近くにターゲットのヘグニム邸があるから来たんだ。


『さて、仕事に戻るか……』


俺は東に見える大きな建物に向かって歩きだした。




ヘグニムの豪邸は黒く高い塀で囲まれ、閉門している門前には全身甲冑姿の兵士が二人立って警備している。


「こりゃあ、正面突破は無理だな。まあ、最初からそのつもりはなかったけどな」

と最近多い独り言を呟く。


塀をぐるりと周り、入り口は一つしかないこともわかった。

敷地への侵入は塀を飛び越えて行くしかない。

塀の高さは3mだし本気をだせば飛び越えれるだろう。


『どこかにヘグニム邸を一望できる場所はないかな……』


「おぉぉ、なんて都合が良いんだ!」


右にちょうどいい物件を発見。

ヘグニム邸の隣地にあるデカい屋敷だ。

その屋敷は夜だというのに照明が点いていない、これはラッキーだ。


このパゴスの町は避暑地で貴族や豪商の別荘が多い。

別荘はシーズンオフになると管理人に任せ住人の出入りがなくなるらしい。

そして今は運良くシーズンオフだ。


俺は盗賊スキルを生かして解錠し、ヘグニム邸の見える二階の角部屋に陣取った。

ここはソファーとテーブルなどの調度品が並び応接間なのだろう。


不法侵入がバレないように部屋は照明も点けず真っ暗だ。

しかし、俺は驚いたことに暗いはずの室内が鮮明に見える。

夜目も効くしズームもする瞳だなんて、どんだけ素晴らしんだ。


『なんてことだ!これだと覗き放題じゃないか!』


イヤラしくないですよ、あくまで仕事のためですから‼︎


『よし、ヘグニム邸を覗く……、いや監視するか!』


ヘグニム邸の二階は窓から灯りが漏れているが、一階は真っ暗だ。

一階の部屋を重点的に観察していると勝手口を発見した。

運のいいことに、勝手口には今のところ守衛はいない。

これで屋敷の中への侵入については目処がついた。

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