誰こいつ……
「ここはどこだ……」
「確かベッドで寝てたはずだが……」
あたりは真っ暗で何も見えない。
背中には硬く冷たい感触。
暗闇の中を手足を動かし五感を動員して、この場所の手掛かりを探す。
いきなり、パッパッと照明が灯る。
「ーーっ!」
不意についた照明の光で目が痛い。
何度か瞬きし周囲を見回すと、そこは学校の体育館程の広さがある場所で窓は一つもなかった。
そして人影もない。
よく見ると奥に大きなガラスケースが何十個も並んでいる。
「あれはなんだ……。中に何か浮いているような……」
不安と恐怖、そして何故ここにいるのかという思いが頭を占める。
しかし好奇心旺盛な性格がガラスケースの中を確認しろと囁いてくる。
恐る恐る周りを警戒しながらガラスケースの方に向かって一歩一歩踏み出す。
ガラスケースは円筒形で高さ3m直径2m程の大きさでかなりでかい。
でかさにも驚いたがさらに驚いたのが、ケースの中は水で満たされ、
その中には裸の人間が浮いている。
「なんだこれ……、人身売買するために保管しているのか……」
静寂した空間にゴクリと喉が鳴らす音が響いた。
ーーコツコツコツコツ
ふと背後から床を小気味好く叩く音が聞こえる。
咄嗟にガラスケースの陰に隠れ、周囲を見回す。
『これはやばい!』
絶対黒服の厳つい兄ちゃんとかが現れるパターンだ!
見つかったら消されてしまうかもしれない。
息を殺して、音のする方向を凝視。
極度の緊張感で瞳は乾燥し喉はカラカラだ。
急に小気味よい音が止み静寂が包む。
「‼︎」
見つかったのだろうか、それとも単なる見廻りで戻ったのだろうか……。
瞼を全開にし、あらん限りの眼力で睨む。
ーートントン
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!殺さないでくださいぃぃぃ‼︎」
不意に背後から肩を叩かれ四つん這いになって逃げる。
「どうしたんですか?士郎さん」
鈴の音のような爽やかな声で俺の名前を呼ぶ女性。
女は俺のことを知っているようだ。
俺は聞き覚えの無い声で呼ばれ戸惑うばかり。
「大丈夫ですよ。アタシは士郎さんの味方ですよ」
女の声は仲のいい姉のようにまたは恋人のように優しい。
落ち着け俺!
冷静になるんだ!
確かマフィアがターゲットをヤル前は優しくするとか。
この女もそうなんじゃないのか⁉︎
『あぁぁ〜、何で今マフィアのことなんて思い出してんだぁぁ』
「どうしちゃったんですか?士郎さん安心してください」
しかし、このままでいても埒があかないのは確かだ。
思い切って振り向く!
するとそこには……、綺麗な女性が立っている。
『誰なんだこの女……』と俺は心の中で呟いた。




