第九話「偽臣暗奇」
「人を見つけたら嘘つきか泥棒と思いなさい」
レイラの話を聞いて彼女が皇帝時代に得た教訓なのだと言う…
それは余りに捻くれているんじゃないか?
「そりゃ、捻くれたくもなるわよ? 私の治世の政策はほぼ真逆の事を実行されて酷い目にあったんだから…とにかく疑うことを覚えたわ」
本人はこんな調子なので俺から言える事はない。
それはなんて言うかご愁傷様としか言いようがない。
夢を語ったが半ばでその座を奪われた。
でも実現できたことも一つくらいはあるんだろ?
レイラは少し考えて「学校を建てたわ、帝都だけだけど」答えて地下牢へまた俺を連れてきた。
彼女の命を狙う奴をふんじばって放り込んである。襲いかかってきてから一言も発さず黙秘を続けているがいや、俺に尋問とか無理だからな?
「何言ってんの、口を割らないならサクッと水に沈めて処理完了よ」
だから発想が物騒だって言ってんだろ…
ランタンで照らされた牢の奥に両手を塞いだ状態でフードを被ったまま男が横たわっている。
「言葉は通じる様にしてあるから問題ないわ、でも地下牢の何処から入ってきたのかしら…」
これで外から堂々と入ってきましたとかなら洒落にならないな、レイラの身を預かってる貴族様の私兵がスルーさせてるって事だろ?
「あー、それは想定していなかったわ。 なるほどね…私の存在は邪魔で仕方ないもの」
国民の反感を買っているため、居る事が露見させる訳にはいかない。
しかも下手に手をかければ皇帝を殺めたとして討伐される事は必然…
そう考えると俺はすっげーお尋ね者と話してんだなー、自称元皇帝だけど。
てかさ、皇帝ってなんじゃいそんな偉い奴には見えないぞ?
「タツヤ、何か私に失礼な事を考えていないかしら?」
気のせい気のせい、ほら女帝様は高貴な御方なのですから後ろでどしっと構えていれば良いんですって。
「ふーん、それならそーゆー事にしておいて上げましょうか」
牢から一歩下がって中を窺うと、縛った手足を俺達の方に向けて横たわる男のボヤけた輪郭があった。
尋問とか俺に出来る訳無いだろと思いつつ、低い声で相手を威圧する態度を見せる。
「おいお前だよお前、自分が何やったか分かってんのかオラ」
うわぁなんか小物臭さ満載の台詞だ、向いてないわ。
当然の如くシカトされる…そうだな、ここは一つ…
俺は牢で横たわる男に格子の側まで近づく。
「俺さ、あんな国を貶めた奴の側にいるのうんざりなんだよね。ちょっとあの女遠ざけとくからさ…」
あのアマ殺しちゃってくんねーかな?
めんどくさいんだわアイツ