第二十八話「伝承と考証」
展開を広げて回収できるかどうか…(エタリそうで怖い)
一区切りついたので他作品の作成に戻ります。
人にはそれぞれに「個性」があって、それを突き詰めていく「才能」があるものだ。
俺は子供の頃にそんな事を言われてきた記憶がある。
それで好きな事を自由に出来たかと言えばそうではなくて、現実はそこまで甘い果実の様には出来ていなかった。
俺はなんとなしに天邪鬼な一面があるから、何の「才能」もない人間だっているもんさと思ってはいたが、まさか俺自体だったってなんてことは、思わなかったなぁ。
万能感があった子供の頃にはその感覚は分からない代物だったんだ。
まー、何が言いたいかって言うと何かと向き合い続けるってのは案外と大変な事なんだぜ?
それはそれで俺の話なんかしても面白くないだろうから今の話をしたいんだけどさ。
「それで?そこの木の扉を開けて頂きたいのですが?返事は如何なものなのです?」
あー、はいはい分かりました。 開ければよろしいのですね。
高圧的な人間は嫌いだから高圧的な鳩はもっと嫌いだ。
なんだって伝書鳩に引き下がらないといけないだよ。
この世界のものは皆んなが皆、あちこちで人格を持ち好き勝手に喋りまくるのを想像する。それは嫌だなぁ…
それでは、お鳩様のご意向に沿わせて頂きまして、今しがた出てきた木製の扉をわざとらしく開ける。
お鳩様のーおなーりー、そこまで敬意を持って接するものでも無いと思うけどなぁ、所詮鳩だし? そこら辺にいっぱいいるでしょ?
言いたい事はままあるものの、面倒ごとを起こされる方が嫌なのでね。
女帝サマはか俺たちが入ってきたのも意に介さず本の虫と化している。
するのは頁を捲る微かな音と時々首を捻って小さく唸る声位のものだ。
邪魔をするのも悪い気がして部屋を出たのに読書を中断してしまう用事を連れてくるとはなんとも良い気がしないが仕方ないじゃない? お鳩様が来てしまわれたのだから。
あー、あのー女帝サマ? 悪いんですけれど少しお時間の方よろしい?
声をかけたところで反応が返ってこないほど本読むのにに熱中してるよなぁ、やっぱり。
うわっこの女帝サマ睫毛長っ、少女漫画じゃないんだぞ。
「あー、はいはい、ちょっと待って頂戴」
いや、ちょっと手を止める位してくれもいいじゃないか、羽ペンの速記速度増しているんじゃないかい?
「んー?今いいところなのよ。この記述の正体が次の章で語られるみたいだから少しだけ待って」
話を聞いてほしいのに相手がそれを汲んでくれないっていうのはあれだな、ゲームやら新聞やらに熱中してる子供やら旦那の生返事に苛立つ母親みたいな気分になるな…あのー女帝サマ?
「分かってる、分かってるわよ? 本同士が殴り合いでも始めたのかしら?」
溜息を一度ついてから女帝サマはこちらに目を向けた。
大した用事でもないんですけどね…何方かは存じませんが亡命しているにもかかわらず文通のお相手がいらっしゃるとは随分と余裕じゃぁございませんかね…
「そーゆーのじゃあないわよ、っとこれはこれは…お綺麗に繕われてますね」
確かに真っ白な鳩も珍しいし、小綺麗にしてるけどさ。
鳩は女帝サマの机の上に飛び乗ると恭しくお辞儀をする。
「ワタクシ、誇り高きアンジュー家に出仕しております、伝書鳩が一羽に御座いまして、この度は主人よりの頼み事がございましてその旨を届けに参りました次第でございます」
伝書鳩か…会話の出来る動物がいる世界なのか、それとも人が魔法で動物を動かしていたりするのだろうか。
「あら、これはこれはご丁寧にどうも。
受け取らせて頂くわ、お返事は後日取りに来るのかしら?
それとも今すぐ返事を返す必要があります?」
鳩の足に括り付けられた手紙を解きながら女帝サマは鳩へ問いかける。
「是非是非、文の返答を末尾に添えていただければ直ぐにでもお返事をお届けいたしますわ!」
そんなに急ぎの用事を伝えてくるなんて…うん?アンジュー家?
「そうよ竜也、この子は糸目の貴族分家当主のところの伝書鳩なの。
文を寄越す程度には紛いなりに信用したいみたいね」
死んでいるはずの帝位継承者だもんな、下手を打てない厄介者な訳だ。
「それでも囲っておきたい程のカードになり得るから置いているんでしょうね」
どれどれ…?と 女帝サマが羊皮紙を広げてさらさらと目をやって俺が飽きない程の時間で、女帝サマの黙読の時間はとっとと終わった様だ。
「はぁ、あの糸目…本当に良い性格してるわ…」
そう言った女帝サマの羽ペンがサラサラと羊皮紙の端に走ったと思うとスクロールにしてしまった。
なんて書いてあったんだと聞く前にこ慣れた手つきで白い鳩へ紙を括り付けていく…
「一つ教えてくださらない? 成功報酬は書いてあるけど失敗した時のこちらの払う代償はなんなのかしら?」
鳩に女帝サマの質問に答えられるのかは知らないが、報酬やら代償の話をしていると言う事はあの糸目のお貴族様は女帝サマに何かを依頼したい様だった。
そんなことまで使い走りの伝書鳩に言い含められているとは俺は思わないけどな…
あら、簡単な事ですわと鳩はひょこひょこと机の上を跳ねて動く。
「有効活用出来ない負債の回収ですとおっしゃていましたわ。 我が主人のその真意までは全て計りかねますが…路頭に迷うのは仕方ないですわよね?」
おいおいおい、さらりと退路断たつ発言は流石に笑えなくないかこれ。
「あら?そうなの? それだけで済ませるのは随分とまた寛大なのね」
じ、女帝サマ? あんまり強気に出過ぎるのも良くないと思うんですけど…誤解を招く様な言い方は避けような?
「おほほっ、あくまで伝書鳩の戯言ですので〜ゆめゆめお信じになりませんようにお願い致しますわ。ほらそこの窓開けてくださらない? 飛びたてませんわ」
そうか、何で扉の前に居たかと思ったらこの部屋のガラス窓は日光が入り込まない様にカーテンあるだったあったな、今気がついたわ。
廊下側にこの鳩がいたのはレースカーテンでこっちが分からなかったからか…なるほどな。
「それではアンジュー家にお使えしております、ワタクシ「エメシェ」が確かに返答をお届けさせて頂きますわ。
主人へ何かお伝えする事が有りましたら言伝致しますが、如何でしょうか?」
窓から飛び立とうと窓枠に足を掛けて鳩は女帝サマへ尋ねる。
「そうね…私達に面倒ごとを押し付けられる様な立場ではないのだから、即急に対応しないとこれまずいんじゃないかしら? この事態は今後の周囲との貴族間の関係性に響く事態ね」
手紙に書かれている内容を俺は分からないが女帝サマの顔色を窺えばが起きている状況が分かるはず…
女帝サマは溜息を混ぜながら首を横に振っていた。
あー、なんかまずい事態が発生しちゃった感じ?
「そうね、隣のお貴族様お抱えの傭兵団が素晴らしき栄えある先代皇帝陛下の制定した法律によって集団解雇されて流浪した末にこの近隣の町を占拠して軍政を敷いたってところかしら?」
^_^お、おう…それはそれは…随分とまたさ、たいへんな事が起きてんじゃねぇか.
「それをさくっとよ、それこそkürtősキュルテーシュでも焼く様に「本件に対する対処をして頂きます」って文末にあるだけなのよ? 本当に嫌になっちゃうわ…」
なるほど? え、女帝サマがその傭兵団どうにかすんの? 無理じゃね?
「何言ってんの、アンタもやるのよ」
サラッととんでもない事を言うんじゃねぇ、俺はただのしがない農家でしか無いんだぞ。
特殊な技能やら能力だって無いアラサーのしがないノウミンだからな? いいか?
「ふふっ良いのよ、貴方にはこれから役立てる事がきっとあるから」
おいおいー女帝サマや、その俺に対する謎の信頼は何処から出ているだって話なんですがね?
そーんなに距離感の近づく様なイベントややり取りは首を捻っても思い当たる節はがあったとは思えないのだが…
「とーにーかーくっ、詳細は追って色々と下さるのであれば私としても行動を起こすのは吝かではないわ。
後はそうね…それに見合った対価を貴方の御主人様が用意できるかって問題ね」
うーわっ、女帝サマ二つ返事で承諾してるんじゃん、大丈夫?
自分に出来る事と出来ないことの区別は早いうちにつけておいた方が良いと思うぞ?
とまぁそんな助言を口に出す暇もなく、女帝サマは約束を取り付けてしまったんだけどな。
「それではこのエメシェが確かにお返事を伺いましたわ。
この次は事態の詳細と報酬の件をお話しさせて頂きますのでそのおつもりでいらっしゃってくださいまし!」
家臣1人ぽっちの皇帝様は如何にしてまた皇帝に返り咲くつもりなのだろう。
俺には今の所この少女の向かう先を知る由も無い…
次回へ続く。




