第十四話 神様の思うまま
この古城の地下にある牢獄が嫌に湿り気を帯びているのはこの近くに川や沼地が点在しているからだとレイラは言っていた。
一段、一段階段を降りるごとに湿度は上がっている気がする。
俺なんかしたっけかなー、何でこんな面倒な事になっているんだろうなぁ…
葛藤と言うよりただの愚痴、どんな偶然が重なったら異世界に連れてこられてそこでも労働させられているんだよ…
単純に一日の体感時間が倍とかすっごいしんどいだからな。
不平はあるし何よりあまりに情報が少なすぎるんだよ…
こんなのは面倒だから俺は異世界転移を終わらせる方法を考えついている。
簡単な話だ、レイラが掛けたその転移魔法の契約を解いて貰えばいい。
その為には…手段は選ばない。 だって、こんなことを進めていた所で俺の手一つで世界が変わるわけがないのだから。
せめて、この場所から自由にしてやること位は出来るだろうか…なんて事は考える必要は無い。 只々無関係で無価値な話だ。
俺は暗殺者だか、不審者だか知らない奴を上手く利用し、レイラにけしかけてやればいい。
俺からの行動は制限がかかっている事は分かっている。
試しにうとうとしているレイラを本で叩こうとしたら腕がそれ以上動かなかった事を考えて危害は加えられない…てこでも動かなかったよ。
さて…階段下までたどり着いたぞ…にしてもこう非衛生的な場所だなぁ。
あー、聞こえてますかね? わたし、タツヤって言うんですけどー?
俺が縄で縛って放り込んだ牢の奥、手にしてきたランタンの光が届くギリギリの距離に横たわる人影があった。
ここにずっと入れられたままだと多分、あんた放って置かれてさ…この中にいた連中のお仲間になっちまうぜ?
少し皮肉を言ったつもりだが反応は返ってくる事はない、何回か話しかけてはいるんだがな
いつまでもだんまりを決め込んでもいられないだろう?
そもそもの話として言葉が通じるかっていうのもあるけどレイラと通じているし、その点は考慮から外れる。
そうすると完全に無視されているということか…
この前お尋ねしたことの答えを知りたくて来たんですけど、雇い主の方とかいるんでしたら教えていただきたいなーなんて?
下手に出てもダメか…どうしたものかな
目的はそうだな…再契約先を探しているんですよ、護衛とか執事していた人間に死なれるとこちらも商売上がったりでね。
アンタは仕事を完遂して報酬が欲しい、私はあの暴君からやっとこさ逃げられる…といいことずくめではございませぬか
お相手としては、女を一人殺す計算が狂ってしまったはずだ。 護衛のの男にぶん投げられたあげくに潜んでいた牢にぶち込まれてしまったのだから洒落にならない。
そこで護衛役の男が裏切りを提案してくる…とあれば無視はしてこないと思うんだがな。
「お前は…なんだ? ここには誰もいない、そう言う触れ込みだった」
牢の奥から低い男の声がした。声からすると俺よりも歳上な気がする…
あぁ、私はなんというかその…従者とかそんな感じの役回りですねー
警戒などされない様にあくまで馬鹿なキャラクターを演じて警戒心を解くんだ…とか何時もそんな事を意識している訳ではないけどな。
「従者…か、情報の誤りは珍しい事ではないが困ったモノだな」
その時はすみませんでした、私も仕事のうちなのでとは言うけどな? そりゃお前、刃物構えてこっち走ってきたら普通逃げるだろ…
スッゲェ怖かったからな、アレ…よく俺冷静に対処できたって思うわ。
「さて、それで? 俺が雇い主の名前を吐いて標的の息の根を止める…あんたは一先ず俺のお目こぼしをもらって事で合ってるのかい?」
こちらを向かないまま男は寝そべって話をする。
そう、俺の要求の理解としてはそれが正解だ。
ちょっとつけ加えるなら俺とあいつとの契約を破棄させる為に少し脅して欲しいって感じかな?
「アンタ、それでいいのか? 」
別に構うものか、誇大妄想には付き合ってられない。
俺は俺の好きに、自由になりたいだけなんでさぁ。
とか適当な事を言って男を騙そうと考えている。
スッゲェ小物っぽいなー俺…ま、いいけど。
それで構わないですよ、こんなんになってまで主人に忠誠を誓える程出来た人間じゃねぇのは自分が一番よく分かってます。
俺にはあの娘が言う通りの地位にいたのか確かめようもないからな、実際に皇帝とかなんとかだったとしても俺は従うつもりないが…
誇大妄想癖とかなら是非とも勘弁して欲しい。
「そうか…お前さんは俺に仕事を完遂して欲しい訳だ」
その代わりアンタの雇った主を教えてくれ、そうしたら今晩彼女が寝た段階でこの牢を開ける。
「うーむ、そうなると俺の情報が先に渡さなきゃいけないって訳か」
そう、ある意味互いに賭けではある事に変わりは無いんだよ…吐くなら吐くで良し。
俺はこの牢の鍵を開けたままにして、アンタが来たタイミングでレイラに迫り契約を破棄を迫る…
「俺の契約破棄までの命の保証」それで乗ってくれるなら俺は満足なんだ、判断はアンタ次第。
我ながら酷いことになるだろうと予想しながら俺はそれでも…国をひっくり返すとかそんな大それた事をしれかすつもりは全く無いし、それに巻き込まれるのはもっと我慢なのだ。
少し間があって男は話を概ね承諾すると言ったが、雇われた相手を話した後はまた黙り込んでしまった…
さて、目的は果たした、俺の仕事はその雇い主をレイラのに伝える事だが…どうすっかな
引き返してレイラの希望通り伝えるかどうか俺は地下牢の螺旋階段を登りながら少し考えていた。
俺はこれからどう立ち回れば一番良いのかな…っと
ちょっとだけ考えてみたけどこれからの事なんてそれこそ神のみぞ知るのかもしれない…
ま、俺カミサマなんて信じていないんだけどね…
次回へ続く。




