第十二話「誉め殺し」
この世界に夜は来るのかと時間を測るものが無いのには困った。
レイラのちょっと長いし…てかスッゲー長い論説と演説を聴いて俺の思考回路は許容範囲を超えている。
「タツヤ? ちゃんと話を聞いているかしら? まだまだ得て欲しい知識は沢山あるのよ?」
いやいや女帝サマ冗談キツいっす、自分頭フラフラっす…
本当勘弁してください、知らない単語とか沢山出てきてその解説を入れてくれるのはありがたいのですけどもう少しこう…ペースをですね…
「….確かに少しばかり話すのに夢中になっていた気はしてますけど…」
けど?
「教えておきたい事はこの倍はありますから」
え…そんなにあんの? 何、レイラさん百科事典でも頭の中に入ってるんですか、てかサラッと倍って言ったな。
見た目17,8の子供にしか見えないんだが…なんで俺より少し若い位なのにこんなに知識があるんだ。
「ふぅ…根を詰めても仕方ないですし今日はこれ位にしておきましょう、一旦イデアに戻りますかタツヤ?」
戻る…そっか、時間は遡れるんだったよな。
そうだな、俺もいきなり呼び出された上に自分の仕事ほっぽり出して来たから
「…分かった、貴方もやらなくちゃいけない事があるものね」
酸欠になるんじゃ無いかとわーわーと捲し立てていたレイラが初めてその表情を寂しそうに変える。
途端ずっしりと胸に何かがのしかかってきた。
そんな顔をしたってなぁ…時間もいい加減遡りきれなくなりそうだから仕方ないんだよ。
「ま、まぁ異なる世界を跨ぐのだって奇跡に近い所業なのに自由に行き来できるようにまだしてしまった。私はこう見えて天才なんですからね!」
まー、確かに俺より少なくとも頭良さそうだもんな。
凄いわ、あんなに物事が分かっているのならさぞかし見る世界も違うんだろう。
天は二物を与えずってこっちの言葉であるんだが二物与えてるもんな、狡いわーカッコいいわ。
「はっ…えっ? 今なんて言ったのかしら? ごめんなさいもう一度言ってくださる?」
レイラの曇った表情がガラリと変わる、これは…言っては不味い事を俺は言ってしまったのか?
少しばかり褒めたつもりだったんだけど…
俺はそれとなく素直にレイラを再度感心の言葉をかけてみた。
「い、いえあの…何でもない、何でないわ!
契約上、主人に使えるのが使い魔としての務めだもの。 ご機嫌を取る為に賛辞の2、3個は常に用意しておいた方が身の為よ!」
えぇ、そんな風な事を言われてもレイラさん、声色と表情から察するに照れ隠しなんじゃないですか…
口には出せないけど誉め殺しはレイラに有効だと判明したのは収穫かもしれない。
「イデアへの転移と座標の固定とかもう、禁書中の禁書をかき集めてやっと出来た代物なの。
だから、ちゃーんと働いて貰わないと割りに合わないんだからね、分かっていますかタツヤ?」
それがどの位の大業なのかを知るのは少し先になる。
しかしまぁ、世界を跨ぐ時に毎回襲われるこの内臓がぐるぐると回ったかの様な気持ち悪さは何とかならないものかね…
次回へ続く!




