第四十一話 『面接というのは、いわば双方向の選考である(中)』
俺たちは相変わらず、どうでもいい会話をあれこれと交わしながら、SNSで告知していた面接の開始時刻を待っていた。
やがて時間が近づき、窓の外を覗いてみると、建物の前にはかなりの数の人が集まっていた。
ざっと見たところ、百人近くはいるように見える。
服装については、特に指定していなかった。
そのため、人によって格好は実にさまざまだ。
きっちりとスーツを着込んだ者。
カジュアルなシャツ姿の者。
そして――なぜか、玲の写真がプリントされたTシャツを着ている者までいた。
……いや、ちょっと待て。
あれも面接を受けに来た応募者なのか?
「玲、お前は先に議員室へ戻って、少し準備しておいてくれ。俺は外に出て、面接を受ける人たちをこの会議室まで案内する。それから面接のルールと順番について説明しておく」
そうして俺たちは、それぞれ行動を開始した。
玲は立ち上がると、軽く身だしなみを整えてから議員室へ戻り、そこで待機することになった。
一方の俺は外へ向かい、大勢の応募者たちを会議室へと迎え入れるために動き出した。
「みなさん、席についてください。まず最初に、これからの面接のルールについて簡単に説明します……」
百人近い応募者たちを、俺にとってはそれなりに広い会議室へと案内した。
参加者には、机に貼った番号のシールに従って、それぞれ指定された席に座ってもらう。
そして俺は会議室の前方にある演台に立ち、全員に向けて面接のルールを説明した。
集まった人たちは、驚くほど静かに俺の話を聞いていた。
内容はそれほど複雑ではない。
基本的には、番号順に議員室へ入り、俺たちとの面接を受ける。
面接が終わった者はこの会議室へ戻り、次の番号の人を呼びに行く。自分の手続きが終われば、そのまま帰ってもらって構わない。
そして、すべての面接が終了した後、二次面接へ進む応募者にはメールで連絡する予定となっていた。
「……以上で説明を終わります。みなさんには、ぜひ自分自身の力を存分に示していただきたい。そして願わくば、この中の誰かと今後、仕事の仲間として共に歩んでいけることを期待しています。一番の方は、十分後に向かいの議員室へお越しください」
すべての説明をよく通る声で言い切ると、俺はネクタイを軽く直し、手書きのメモを手に会議室を後にした。
静まり返った室内に響くのは、革靴が床を打つコツ、コツという音だけだった。
……俺、今ちょっと格好よくなかったか?
なんだか、いかにも仕事のできる有能秘書みたいな空気をまとっていた気がする。
「兄貴、どうしたの? なんか気取ってて、すごく偉そうなんだけど?」
「なんだよ、その偉そうって。これはどう見ても、仕事のできるエリートの姿だろ?」
部屋に入った途端、玲は唇を尖らせ、鼻の下にボールペンを挟んだまま高級そうなオフィスチェアにふんぞり返っていた。そして、俺がまだ口を開く間もなく、容赦ない批判を浴びることになった。
「人のこと言えないだろ。お前だって、そんな間抜けな格好で座ってるじゃないか。もうすぐ面接の応募者たちが入ってくるんだから、早くそのペンを外して、少しは真面目にしろよ」
「これでも少しリラックスしようとしてるんだよ。私が応募者たちより緊張して、ガチガチになってたら、それこそ格好つかないでしょ?」
「リラックスしすぎだろ! またお前が変なことして党のイメージに傷でもつけたら、林主任がまたここぞとばかりに俺をからかってくるんだからな!」
「……からかう? あれ? なんか最近、お兄ちゃんって女の子たちと楽しそうにしてるよね? 私という天下無双の超絶かわいい妹が、議員の仕事で毎日忙しくしてるのに、兄貴はほかの女の人たちと仲良くしてるんだ?」
「なんだその、放っておかれた正妻みたいな発言は。お前、俺の彼女じゃないだろ! それに、そもそも俺の連絡先を林主任に教えたのって、お前じゃなかったか?」
「……だって、ニュースが出たばっかりのときに葛欣姉さんから連絡が来たんだよ。絶対怒られると思ったから、兄ちゃんのせいってことにして、適当な理由をつけて逃げようと思ってさ。それで兄ちゃんの連絡先を教えたの。でも、別に嘘はついてないからね? あのとき投稿するって決めたのも、十分に目立つものにしようって言ったのも兄ちゃんなんだから」
うん、だいたい分かった。
つまり、あの日、林主任が玲に連絡して状況を確認しようとしたところ、玲は責任を取りたくなくて、俺の連絡先をそのまま主任に押しつけたわけか。
「おい、いい加減にしろよ。毎回毎回、適当にお兄ちゃんに責任をなすりつけるのやめないか?」
「でもさ、お兄ちゃん、林主任と話してるとき、結構楽しそうだったよね?」
「……まあ、それは否定しないけど。だからって、それとこれとは別問題だ!」
まあ、実際に話していて楽しかったのは事実だけどな。
だからといって、何かあるたびに俺へ責任を押しつけていい理由にはならない。
玲はまだ中学生とはいえ、もう議員なんだ。自分が引き起こしたことくらい、自分で責任を負うことを少しずつ覚えていくべきだろう。




