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第三十八話 『女の子たちとメッセージ(中)』

「よ、よしよしよしよしよし! めちゃくちゃ嬉しい! ぜひとも一緒に行かせてくれ!」


 自分でも気持ち悪がられるかもしれないとは思ったが、俺は構わず、一緒に泳ぎに行きたいという意思を全力で伝えた。


 メッセージは既読になった。

 数分間の沈黙のあと、ようやく彼女から返信が届いた。


「もう、知らないったら……。お風呂入って寝る! じゃあね!」


 あっ! こいつ、恥ずかしくなって逃げやがった! こういうところも可愛いんだよな。

 ……まあ、俺がキモすぎて逃げただけって可能性もあるけど。

 どっちなのか、めちゃくちゃ聞きたい。けど、ここでさらにメッセージを送っても、既読スルーされるだけだろう。

 そう思った俺は、このまましばらく会話を放置することにした。


 スマホを置こうとした、そのときだった。再びLINEの通知が表示された。

 しかし、メッセージを送ってきたのは瑤曦ではなく、見覚えのないアカウントだった。

 アイコンの写真とユーザー名を確認すると、俺にメッセージを送ってきたのは林主任だった。


「林主任? どうして俺のLINEを知ってるんですか? それはともかく、今回は俺たちのことで大変なご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」


 彼女がどうやって俺の連絡先を知ったのかは疑問だったが、ひとまず彼女をLINEの友だちに追加することにした。

 そのうえで、妹が起こしてしまった騒ぎについて、俺から彼女に謝罪した。


「ふふ……知ってるでしょ? お姉さんの立場って、まあ一応この国の裏の大統領みたいなものだからね。国民一人の連絡先を手に入れるくらい、私にとってはなんてことないのよ」


「……どうか、そんな些細なことに公権力を使わないでください。普通に俺に聞いてくれればよかったのに」


 俺はそんなツッコミをメッセージ欄に打ち込み、そのまま送信した。

 林主任なら、本当にそれくらいのことをやってのける力があるのは分かっている。だからこそ、頼むから公権力をくだらないことに濫用するのだけは勘弁してほしい。


「冗談よ、冗談。普通にあなたの妹さんに聞いて、教えてもらっただけだから。それにしても、今日あなたたち二人が起こした騒ぎのせいで、お姉さんはあちこち駆け回ったうえに、ずいぶん長いこと残業する羽目になっちゃったんだからね」


 彼女の愚痴から察するに、俺たち二人が引き起こした騒ぎのせいで、党本部の対外広報を担当している彼女はあちこち駆け回ることになり、仕事が一気に増えてしまったらしい。


「うわぁ……それは本当に申し訳ないです。俺には謝ることくらいしかできません」


 また話題が俺たちの引き起こした騒ぎに戻ってしまったので、俺はただ、心からもう一度謝るしかなかった。


「ふふ。じゃあ、ちゃんとお姉さんに埋め合わせしてもらわないとね。あなたたちの失敗のせいで、あちこちに連絡して回って、関係各所に頭を下げて火消しまでしたんだから」


 補償か……まあ、確かにそれくらいはあってもいいのかもしれない。

 ……いや、待て。どうして玲が起こした騒ぎの責任を、いつも俺が取らなきゃならないんだ?

 兄貴って、あまりにも割に合わなくないか?


「分かりました。では、一応聞いておきます。林主任、俺はどうやってお詫びすればいいんですか?」


 諦めた。これが兄貴というものの宿命なのだ。妹が残していった後始末は、兄である俺が引き受けるしかない。

 そんなことを考えながら、俺は画面に返信を打ち込んだ。

 せめて林主任が手加減してくれることを祈るばかりだ。今回の騒ぎで党のイメージに与えた損失を埋め合わせるために、高額な金銭的補償なんて要求されたら、俺にはとても払える余裕なんてない。


「そうねえ、お兄ちゃんさんにはどうやって償ってもらおうかしら」


 彼女はなんだか楽しそうに、どうやって俺をからかって遊ぼうかと考えているようだった。


「じゃあ……今度、お姉さんと一緒にデートするっていうのはどう?」

「デ、デート? それだけでいいんですか?」

「どう? もしかして、嫌なの?」

「いや、全然嫌じゃないです。でも、これで本当に補償になるんですか?」


 林主任みたいな美人とデートできるなんて、むしろ俺のほうがご褒美をもらっているような気分だった。


「私はこれでいいと思うけど。それとも、私たち革新党のイメージに与えた損失を埋め合わせるために、高額な金銭を支払ってもらったほうがいいかしら?」


「デート! 俺はデートを選びます! ぜひ俺とデートしてください!」


 金ならない。払えるものなんて一円たりともない。

 ならば選択肢は一つだ。

 俺は厚顔無恥にも、この美人とのデートを選んだ。

 どうして彼女がこんな補償方法で納得してくれたのかは分からない。

 だが、俺にとっては……どう考えても、得をしすぎている。


「……ならよかったわ。お姉さん、もしかして君にはあまり魅力的じゃないのかなって思っちゃった。ところで、今回こんな騒ぎになっちゃったわけだけど、これからどうするの? 何か考えてる?」


 いつ実現するかも分からないデートの約束を交わしたあと、彼女は今回の件について、俺たち二人がどんな反省をして、これからどうしていくつもりなのかを尋ねてきた。


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